ジョン・フォード
蓮實重彥の『ジョン・フォード論』が上梓され手元に届いた。その書物の感触を確かめるためにパラパラと頁をめくっていると、ジョン・フォードの比類なく美しい映画について書かれた比類なく素晴らしい批評の言葉が波のうねりのように打ち寄せてくる。不図、…
ジョン・フォード監督『香も高きケンタッキー』(Kentucky Pride, 1925) が高画質で見られるなんて、これは夢だろうか。ちょうど蓮實重彥の『ショットとは何か』(2022) も出たところなので、この映画のたまに動くことはあっても基本はフィックスされたキャメ…
フィルムは現存しているものの、上映機会が限られ、未だに DVD にもなっていない、30 歳を超えたばかりの、しかしすでにベテランの域に達しているジョン・フォードが監督した『香も高きケンタッキー』(Kentucky Pride, 1925) が、たとえ劣化したコピーであろ…
ついに、ついに、このジョン・フォード映画が見られる日がきた。『香も高きケンタッキー』(Kentucky Pride, 1925)
自宅から一番近くにある湧水地——鵠沼海岸で相模湾に注ぐ引地川の源流にあたる——がある泉の森公園を散歩していると、スプリング・エフェメラル (Spring Ephemeral) 、カタクリの蕾が出ていた。以前の記事にも書いたことがあるが、自分は東京オリンピックが終…
いろいろと見ても、最近はそのすべての作品について書く気がない。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019) も見たけれどあまり書きたいと思わない。そもそも、タランティーノの映画とは昔からごく曖昧な付き合い方で、最初にタランティーノ…
『若き日のリンカーン』(Young Mr. Lincoln, 1939) は、ジョン・フォード監督が『駅馬車』(1939) に続いて撮った作品で、この年のフォードはさらに『モホークの太鼓』(1939) まで演出しているのだから、この 1939 年という年は、二度目の世界大戦が始まった…
作品の中でオープニング・タイトルを除けば、鮫は出てくるものの「虎鮫島 (Shark Island)」という単語が口にされることも、文字として表示されることも一切ない、ジョン・フォード監督の『虎鮫島脱獄』(The Prisoner of Shark Island, 1936) を見る。フロリ…
ジョン・フォード監督の『リバティ・バランスを射った男』(The Man Who Shot Liberty Valance, 1962)。蓮實重彥の初期評論で一番好きな箇所は、この映画で白いエプロンをつけてリバティ・バランス (リー・マーヴィン) と決闘するジェームズ・スチュワートに…
このジョン・フォードの美しい『リオ・グランデの砦』(Rio Grande, 1950) は、すでに簡単に取り上げているが、また性懲りもなく書いてしまうことにする。この作品は何十回見ても、見るたびに感動してしまう。メキシコと合衆国の国境となっているリオ・グラン…
1859 年というから南北戦争前であるが、ダニエル・エメットによって作曲された “Dixie” は、ジョン・フォードの作品でいったい何回使われているのだろうか?『リオ・グランデの砦』(1950) のフィナーレでは、ジョン・ウェインの傍でこの曲にあわせてモーリン…
アーゴシー・ピクチャーズで製作され、リパプリックから配給されたジョン・フォード監督の『静かなる男』(The Quiet Man, 1952) は映画化の構想が実現されるまで、十数年の時を要した作品である。前の記事にも書いたけれど、蓮實さんの批評が好きなところは…
ジョン・フォード監督『幌馬車』(Wagon Master, 1950)。この RKO 公開作品は、『黄色いリボン』(1949) が大ヒットしたいわばボーナスとして、低予算ながらフォードが好きなように撮影することができた作品である。フォード自身も、自分でストーリーを書いた…
フォックス社、1935 年公開のジョン・フォード監督作品。原題は、“Steamboat Round the Bend”。「ウィル・ロジャース三部作」と呼ばれる一連のフォードの人情喜劇のひとつで 『ドクター・ブル』(1933)、『プリースト判事』(1934) に引続く最終作にあたる。こ…
ジョン・フォード監督の 1928 年のメロドラマ (原題は “Four Sons”)。どうしたって、これは泣いてしまうなあ ← またしても。作品の最後のところで、ジョン・ウェイン (ラオール・ウォルシュの『ビッグ・トレイル』で主演に大抜擢されるのは 1930 年のこと) …
新聞が電子情報化されることの価値は過去の記事の検索が非常に容易になることだと思っている自分としては、それ以外の目的で課金される料金を支払う気にはとてもなれない。たとえば、The New York Times のサイトで、米国時間の 1928 年 6 月 10 日、日曜日…
このフォードの作品 『果てなき船路』(The Long Voyage Home, 1940) は、昔はあまり面白いとは思わなかったんだけれど、最近見直しているうちにだんだん面白いと思うようになってきた。まず、オープニングのクレジット・タイトルにジョン・フォードとグレッ…
この曲は、独立プロデューサー、ウォルター・ウェンジャーが『駅馬車』(1939) に引き続いて製作したジョン・フォード監督の『果てなき船路』 (The Long Voyage Home, 1940) で少なくとも三度はバックに流れる。まず、最初の字幕のところで流れ、次はイアン・…
YouTube にジョン・フォードの『香も高きケンタッキー』(1925) の断片が存在している (いた) ことに驚く。 1936 年 (11 年子) の曲を何曲か。東京ラプソディ: 椰子の実: おしゃれ娘: アイルランドの娘: 花言葉の歌: 下田夜曲 (服部良一編曲) 二人は若い 都々…
『寝ても覚めても』(2018) は映画館に行ったけれども、公開中だから何も書かない。代わりに昨日の記事を補足すると『めまい』(1958) ではキム・ノヴァクが前半ではマデリンを演じ、後半はジュディを演じてその二人が実は同一人物であったという、よくある話…
日本に帰ってくると暑いのなんのって。バングラデシュの方がましだった。まるで『寝ても覚めても』(2018) の公開日にあわせて帰ってきたようだけど、それは違うぞ。見る前に余計なものは読まないようにしているが、東出昌大が一人二役らしい。ヒッチコックの…
最初下のクリップ見ていても全然ピンとこなかったんだが、そうか、これが日本でも『うちのママは世界一』というタイトルでテレビ放映された “The Donna Reed Show” なんだとようやく得心した。Shelley Fabares は Donna Reed の娘役だったのである。 美しい…
エルヴィス・プレスリーは、1958 年に 2 年間の徴兵通知を受けて西ドイツの米国陸軍基地で勤務しているが、その間の 1959 年にこの曲を私家録音したものが残っている。ピアノはプレスリー自身によるものであろう。 前の記事にあえてプレスリーの後年の録音を…
ジョン・フォード監督とローリング・ストーンズは、ともに作品の中で Route 66 を取り上げたということで類似してしまう。フォードは『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath, 1940) で、ローリング・ストーンズは、デビュー・アルバムの最初の曲として取り上げ…
40 年代にはシナトラと同じぐらい、もしかするとそれ以上に人気のあった Dick Haymes だけれど、ロバート・ロッセン監督の『オール・ザ・キングスメン』( All the King’s Men, 1949) や、ジョン・フォード監督の『幌馬車』(The Wagon Master, 1950) などに出…
ジョン・フォード監督『リオ・グランデの砦 』(Rio Grande, 1950)。 原題の “Rio Grande” はテキサス州とメキシコの国境をなし「リオ・ブラボー」とも呼ばれる川のことだが、それにはジョン・ウェインとモーリン・オハラの夫婦の間にできてしまった隔たりま…
ドロレス・デル・リオが出演したハリウッド映画で、比較的簡単に見られる四作品をまとめて紹介しておきたい。 栄光 最初は純粋で高貴とさえいえる活劇を呈示し続けた「不断の運動の人」ラオール・ウォルシュ監督の『栄光』(What Price Glory, 1926)。 無声映…
ジョン・フォード監督の『逃亡者』(1947) の一場面には、警官に追われる神父 (ヘンリー・フォンダ) を逃がす時間を稼ぐため、ドロレス・デル・リオが警官の気をひこうと唇を許し、酒場のカウンターの上で素足のままダンスを踊るシーンがある。その試みが無駄…
ジョン・フォード監督の『逃亡者』 (The Fugitive, 1947) は、ロケーションとスタジオ撮影の双方がメキシコで行われている。 その作品に出演したドロレス・デル・リオは、MGM の美術セドリック・ギボンズと 1941 年に離婚し、オーソン・ウェルズとの恋愛も破…