ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

萬葉集

ク語法 (7)

ま金(かね)吹く丹生(にふ)のま朱(そほ)の色に出(で)て言はなくのみぞ我(あ)が戀ふらくは (3560)金を精錬する丹生の赤い辰砂のように、はっきり表に出して言わないだけだ、わたしの恋は。※ ま金ふく丹生のま朱: 丹生は地名。ま朱は辰砂 (もともとは「丹」とい…

ク語法 (6)

今は我(あ)は死なむよ我(わ)が背(せ)戀すれば一夜一日(ひとよひとひ)も安けくもなし (2936)もうこの身も儚くなるほどです、我が背。お慕いするあまり、一日一夜とて心安らかなことはありません。 我(わ)が命し長く欲しけく僞(いつは)りをよくする人を捕ふば…

ク語法 (5)

愛(うるは)しと思へりけらしな忘れと結びし紐の解くらく思へば (2558)あの方はわたくしのことをいとしく思っておいでになるらしい。「忘れないでください」と結んで下さったこの紐が自然に解けることを思うと。※ 下紐が解けるのは相手が思ってくれているしる…

ク語法 (4)

相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緖の長き春日を思ひ暮らさく (1936)少しも思ってくれそうにない女のために、(玉の緒の) 長い春の日を思い暮らすことである。 かくばかり雨の降らくにほととぎす卯(う)の花山になほか鳴くらむ (1963)こんなに雨が降っているのに、…

ク語法 (3)

潮滿てば入りぬる磯の草なれや見らくすくなく戀ふらくの多き (1394)潮が満ちてくると海の中に没してしまうあの磯の海藻のようなものであろうか、自分の思う人は目に見ることは少くて恋い焦がれてばかりいる。 我(わ)が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに…

ク語法 (2)

栲縄(たくなは)の長き命を欲りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ (704)(栲縄の) 長く生きられる命をわたくしが望んでまいりましたのは絶えずあのお方とお逢いしたい一心からなのです。 むらきもの心碎(くだ)けてかくばかり我(あ)が戀ふらくを知らずかあるら…

ク語法 (1)

「ク語法」が気に入っていて萬葉集の中でその語法が使われている短歌だけを適当にあげてみる気になった。み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜(こよひ)も我(あ)がひとり寢む (74)み吉野の山颪が寒いのにひょっとして今夜もわたしはひとりで寝るのだろうか…