ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

映画

I’m Just Wild About Harry

アナトール ・リトヴァク監督がわずか二日で降板してしまい、ラオール・ウォルシュ監督が後を引継いで完成させたジェームズ・キャグニー主演の映画『彼奴は顔役だ!』(The Roaring Twenties, 1939) で使われている曲として、プリシラ・レインが “My Melanchol…

Give Me a Band and My Baby

“Big Girls Don’t Cry” の記事で 1956 年度のジャン=リュック・ゴダールのベストテン (カイエ・デュ・シネマ) にある リチャード・クワイン監督の『マイ・シスター・アイリーン』(My Sister Eileen) は、米国では 1955 年度の公開である。日本では劇場公開さ…

I’ve Got My Love to Keep Me Warm

『陽気な街』(On the Avenue, 1937) を見て Alice Faye の魅力に惹かれたところなので、この映画の中で Dick Powell と歌うシーンがある Irving Berlin によるこのスタンダードを紹介する。実際、このスタンダードが初めて紹介されたのは 1937 年のこの映画…

Big Girls Don’t Cry

カイエ時代のジャン・リュック・ゴダールの1956 年度ベストテンは、 アーカディン氏 (オーソン・ウェルズ) 恋多き女 (ジャン・ルノワール) 知りすぎていた男 (アルフレッド・ヒッチコック) バス停留所 (ジョシュア・ローガン) 悪の対決 (アラン・ドワン) ア…

He Moved Through the Fair

大女優モーリン・オハラの歌は聞いたことがなかったんだけど、元歌手だったという母親譲りで歌も上手だなあ。アイルランド伝承の “She Moved Though the Fair” の she を he に変えて歌っている。許されなかった結婚であるにもかかわらず、恋人には結婚式は…

Hushabye

これも Doc Pomus と Mort Shuman による曲。1959 年に作られて The Mystics によってレコーディングされた。日本語の「ねんねんころりよ」に相当する語が Hushabye である。1964 年に The Beach Boys もカバーしているので、それも一緒に紹介する。ビーチ・…

This Year’s Kisses

1937 年、ロイ・デル・ルース監督の映画 “On the Avenue” の中の曲として、Irving Berlin が作った曲。日本では1937年12月に『抓って頂戴』という素晴らしい題名で封切られたものの、当局の注意を受けて『陽気な街』という残念な名称に改題されている。こん…

Johnny Angel

最初下のクリップ見ていても全然ピンとこなかったんだが、そうか、これが日本でも『うちのママは世界一』というタイトルでテレビ放映された “The Donna Reed Show” なんだとようやく得心した。Shelley Fabares は Donna Reed の娘役だったのである。 美しい…

You Were Meant for Me

昨日は時間がなかったので、シンプルな曲だから、よもや歌詞に間違いはないだろうとよく確認しないで、その辺にあるものを適当に貼り付けたら、これがおかしくて修正するのに却って手間取ってしまった。間違っていた部分に、 I love you and you alone were …

The Siamese Cat Song

ディズニー映画 『わんわん物語』(Lady and the Tramp, 1955) の中の「シャム猫の歌」である。Peggy Lee が歌っている。Siamese の発音は、/sàiəmíːz/。 We are Siamese if you pleaseWe are Siamese if you don't pleaseNow we lookin' over our new domcil…

Specialization (補足)

この曲は、見かけとは裏腹にかなり捻ってあって難しいので、歌詞と注をわかる範囲でつけておく。歌詞もこれが正しいのかわからない。 (Frankie Vaughn)If you peruse the people in the news,※ peruse: よく調べることthe people that the magazines refer t…

Aura Lee

“Love Me Tender” の元歌である “Aura Lee” は南北戦争の頃の歌らしいけど、これも良いなあ。 上の Eddie Albert の歌唱の歌詞を下に挙げておく。 As the blackbird in the spring,‘Neath the willow tree,Sat and piped, I heard him sing,Singing Aura Lee…

I’ll Take You Home Again, Kathleen

エルヴィス・プレスリーは、1958 年に 2 年間の徴兵通知を受けて西ドイツの米国陸軍基地で勤務しているが、その間の 1959 年にこの曲を私家録音したものが残っている。ピアノはプレスリー自身によるものであろう。 前の記事にあえてプレスリーの後年の録音を…

The Lady Is a Tramp

Rodgers & Hart の名曲である。最近だと、Lady Gaga と Tony Bennett が歌っていた。キリがないので一部だけを紹介する。 歌詞にでてくるNoel Caward は、エルンスト・ルビッチの傑作『生活の設計』(Design for Living, 1933) の脚本を提供しているので(もっ…

Diamonds Are a Girl’s Best Friend

ハワード・ホークス監督の『紳士は金髪がお好き』(Gentlemen Prefer Blondes, 1953) では、Marilyn Monroe によって “Diamonds Are a Girl's Best Friend” という非常に有名な曲が歌われる。 The French are glad to die for loveThey delight in fighting d…

しょんがいな

山中貞雄の『百萬両の壺』で喜代三が唄う『櫛巻お藤の唄』は YouTube にはないので、歌詞だけ載せておこう。作詞は山中貞雄監督と言われている。松阪市には「しょんがい音頭」というのが今でも保存されているようだけど「しょんがいな」というのも多分同じ語…

『唐人お吉』が見たい

「唐人お吉」(斎藤きち) をテーマにした映画は 1930 年代に溝口健二監督や衣笠貞之助監督などによって六作作られているんだが、溝口健二監督の作品の今に残っているフィルムの断片 4 分を見ただけである。新橋喜代三が歌っている『唐人お吉』は、1935 年の冬…

祇園小唄

何気なしに上のクリップを見ながら美空ひばりの歌の巧さと若尾文子の美しさと小暮實千代の大人の色気の三つに放心していると、美空ひばりが唄っている『祇園小唄』(1930) と映画『祇園囃子』(1953) の間には単に「祇園」というイメージで繋がっている以上の…

シネマ・アンシャンテ

遅ればせながら手に入れる。久しぶりに感じる「本」を所有するフェティシュな喜び! 撫でまわして手触りを感じるのはもちろん、匂いまでクンクンしてみる。数多く掲載されている写真も溜息の出るものばかりだし、レイアウトも良いし、写真のキャプションも必…

Legrand Jazz

ミシェル・ルグランがハネ・ムーンも兼ねてニューヨークに滞在したときの 1958 年のアルバム “Legrand Jazz” から。スタンダードをアレンジする力は Gil Evans に比肩する才能である。ところでさらに迂闊なことに山田宏一さんと濱田高志さんが共著で『シネマ…

映画の記憶

前の記事で、ヴァル・リュートン製作、ジャック・ターナー監督による『キャット・ピープル』(1942) が出てきたので、その作品の編集を担当し後に映画監督となるマーク・ロブソンを思い出した。それから、マーク・ロブソンがやはり編集しオーソン・ウェルズが…

Oh! You Beautiful Doll

ロバート・オルドリッチ監督の遺作であり、「古典ハリウッド映画」の「白鳥の歌」ともなった、とめどもなく涙が流れてしょうがない『カリフォルニア・ドールズ』(… All The Marbles, 1981) のクライマックスにおけるリノの MGM 撮影所の跡地に建てられたホテ…

The Scarecrow / Begin the Beguine

前の記事の補足だが、主題となるものが思いもかけない機能をいろいろと顕在化させていく作品って映画初期のサイレントではリュミエールの頃からたくさんある。たとえば、次のバスター・キートンの “The Scarecrow” (1920) なんて典型的な作品だろう。 “Begin…

裸の拍車

1953 年のアンソニー・マン監督作品で、原題は “The Naked Spur”。 うまくいくときもいかないときもあるが、映画を見るときは、アブダクションを試みていることが多い。アブダクションとは C. S. パースが「演繹」「帰納」とは違うタイプの推論として導入し…

Someday My Prince Will Come

初の長編アニメーション映画といわれるディズニー映画 『白雪姫』(Snow White and the Seven Dwarfs, 1937) でこの曲が使われており、いまでは YouTube でその曲が流れている映画の場面のひとつを簡単に確認できる。ノリが悪いのでもしかしたら違うと否定さ…

All the Cats Join In

『みんなでジャズを!』(All the Cats Join In) は、1946 年に公開された十の独立短編からなるオムニバス形式のディズニー映画 “Make Mine Music” の中の短編アニメーションである。映画のサウンド・トラックのインスツルメンタルの部分は、1944 年に Benny …

席を立ちたくなった映画

今月号の文芸誌 「新潮」にあった「映画から動画へ」という文章を読んでその「ポスト・ツゥルース」時代に相応しい文章に辟易する。「スター・ウォーズ」のシリーズ第一作を封切当時に見たときから、これといって心を動かされた体験をした記憶がない自分とし…

(You’d Be So) Easy to Love

このコール・ポーターの不朽のスタンダード曲は、 MGM 映画 『踊るアメリカ艦隊』(Born to Dance, 1937) で初めて使われた。 James Stewart と Eleanor Powell が歌っていて、Powell の方は Majorie Lane が吹替えているが、James Stewart の方は本人の声だ…

Route 66

ジョン・フォード監督とローリング・ストーンズは、ともに作品の中で Route 66 を取り上げたということで類似してしまう。フォードは『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath, 1940) で、ローリング・ストーンズは、デビュー・アルバムの最初の曲として取り上げ…

Anything Goes

1934 年に同名の著名なミュージカルで使われたこの曲 “Anything Goes” (「何でもあり」)は、コール・ポーター(Cole Porter) の作詞・作曲である。もっとも、歌詞の方は時代とともに別のものへ置き換えられている。最近では Lady Gaga と Tony Bennett が歌っ…