ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

祇園小唄

何気なしに上のクリップを見ながら美空ひばりの歌の巧さと若尾文子の美しさと小暮實千代の大人の色気の三つに放心していると、美空ひばりが唄っている『祇園小唄』(1930) と映画『祇園囃子』(1953) の間には単に「祇園」というイメージで繋がっている以上のものがないんだろうかと不図思った。

結局、大した発見はなかったものの、ひとつわかったのは、溝口健二監督の傑作『祇園囃子』の原作者は川口松太郎であり、『祇園小唄』の作詞は作家でもあった長田幹彦であるが、長田も『祇園囃子』という作品を戦前 (1934) に書いているということだった。この長田の本の挿絵は 1934 年に 49 歳で亡くなった竹久夢二の最期の仕事として知られている。

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川口の『祇園囃子』も長田の『祇園囃子』も読んだことはないので分からないが、作品の内容としては別物らしい。長田の『祇園囃子』の方は清水宏監督が映画化しているそうだがこれも残念ながら未見である。

『祇園小唄』はマキノ・プロダクションによる金森万象監督の映画『祇園小唄繪日傘 第一話 舞の袖』(1930) の主題歌としてメディア・ミックスされて発売されたものであり、その手法は以前このブログで書いたように溝口健二監督の『東京行進曲』(1929) のときから始まったものである。もうひとつ注意しておかなければならないのは、東京には『東京行進曲』、大阪には『道頓堀行進曲』ができたように、レコード会社は各所の「ご当地ソング」の発売に地方だけでなく大都市圏においても力を入れていたということで、京都の場合は『祇園小唄』がそれに相当していることである。

『祇園小唄』を最初に歌ったのは二三吉である。オリジナルはビクターからなのだが、彼女は他のレコード会社からもレコードを出している。二村定一の『青空』もそうだったけれど当時はレコード会社専属という概念は適用されなかったようだ。

作曲は佐々紅華であり、もともとは二村定一が歌い、後にはフランク永井が歌った『君恋し』でもっとも良く知られていると思うが、ここでは次のものを挙げておく。

笑ひ薬 (歌、 二村定一):

黒ニャゴ (歌、平井英子):

茶目子の一日 (歌、平井英子):


※ 平井英子の歌は昭和八年のもので、この前に木村時子の大正八年の録音がある。
※ ライオン歯磨きで歯を磨くと言っている。

最後に井上宗孝とシャープ・ファイブの 1968 年のアルバム『春の海』に収録された『祇園小唄』。

 

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