ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

野玫瑰之戀

物心ついて服部良一が作曲した曲に触れた最初が恐らくこれだというのが、やはり60 年代以降に生まれたものの限界なんだと思い少し哀しくなる。やはり、どんな時代に生まれるかも才能なんだ。 気を取り直して、香港映画『野玫瑰之戀』(1960) は、服部良一が音…

渡邊はま子

ハイキング・ソング: エミール・ワルトトイフェルの『スケーターズ・ワルツ』って、日本人が世界的に突出して好きな曲らしいが、仁木他喜雄のアレンジ能力もやっぱり当時突出している。このレコードが出た 1938 年頃は、戦前の名フィギュア・スケーターであ…

画角にまつわる話

アルフレッド・ヒッチコック監督は、 50 mm の焦点距離のレンズにこだわったと言う人がいるが、この場合気をつけてそれを受け取らないといけないのは、「画角」はもちろんレンズの焦点距離だけでは決まらないということである。ヒッチコックの場合は、撮影し…

さくらんぼの実る頃

『さくらんぼの実る頃』(le temps des cerises) を直前の記事に出てきたコラ・ヴォケールで聴く。 この有名な曲は、いろいろな映画で使われたが、ジャック・ベッケル監督の『肉体の冠』(Casque d'or, 1952) でルカが銃で撃たれるシーンでこの曲が流れていた…

モンマルトルの丘の哀歌

学生時代、映画を見に行った帰り、どこかしら『じゃりん子チエ』のヒラメちゃんの雰囲気を漂わせる気仙沼出身の子と池袋の喫茶店で話しをしていて、いままででどの映画が一番好き?と聞かれたことがある。ちょうど京橋のフィルム・センターで『フレンチ・カ…

補足

前回の記事を少し補足しておくと、初期のトーキーはサウンド・トラック(Sound on Film方式) ではなく、別にレコード・ディスクを用意して、フィルムの動きと同期を取るものだった(Sound on Disk 方式)。そう考えると、トーキーとは、映画とレコードという…

シンクロ

「Tea for Two (2)」の記事で Green Brothers Novelty Band が、映画『蒸気船ウィリー』(1928) の音楽を担当していることを紹介したが、この有名な鼠のキャラクターが最初に登場した短編アニメーションは、音と画像がシンクロするって素晴らしいでしょうとい…

1927-8 年のデューク・エリントン

1928 年のルイ・アームストロングは確かに凄いが、デューク・エリントンもハーレムのコットン・クラブに 1927 年 12 月から出演するようになる。同じ年の 10 月にはアデレード・ホールとあの “Creole Love Call” をレコーディングしている。ボリス・ヴィアン…

休憩 (2)

ちょっと癒やされる曲を聞くことに。 ビートルズは嫌いだけどプレスリーは好きなんだなあ。本当に普通の人では絶対に出せない声をしている。どうやって発声すればこんな声が出せるんだろう。 これなんかも、プレスリー以外がやったら絶対に許さないんだけど…

Mound City Blue Blowers

“Tea for Two” が1924年に作られたとわかって、同じ年に “Mound City Blue Blowers” の初めてのレコード・リリースとなった “Arkansas Blues” を思い出した。 Mound City という名称の市は実際にミズーリ州にあるが、ここで言う Mound City とは St. Louis …

Tea for Two (2)

この曲が最初に登場したミュージカル “No, No, Nanette” の初演を 1925 年と書き、この曲も1925 年に初めて登場したかのように記載する Wikipedia (英語版と日本語版双方) は、明らかに正確さを欠いている。ミュージカル “No, No, Nanette” はブロードウェイ…

Tea for Two

人は「真摯なメッセージ」など一切含まず「他愛ない」とすら思われているこの曲が、1924 年に登場して以来、現在に至るまであらゆるところに遍在し、重要なアーティストが繰り返し取り上げていることにひたすら驚く感性すら喪っている。 アート・テイタム(19…

英語の勘所 (3)

定冠詞について。まず大事なことは、不定冠詞は初出の場合しかつけられないが、定冠詞は初出でも、既出でもつけられるということ。 既出の名詞に定冠詞 the をつけるのは絶対である。これは不注意でさえなければ、それほど難しいことではない。 A man was we…

セプテンバー・ソング

写真は、ウィリアム・ディターレ監督『旅愁』(September Affair, 1950) のジョゼフ・コットンとジョーン・フォンテイン。ジョーン・フォンテインが 10 代から 30 代の女主人公を演じてみせた、マックス・オフュルス監督の『忘れじの面影』(Letter From an Un…

Keller Sisters and Lynch

1920 年代から 1930 年代にかけて “Keller Sisters and Lynch” という 3 人組のコーラス・グループがいた。3人は皆 ファミリー・ネームが Lynch の siblings (きょうだい) で、真ん中が男性で、上と末は女性のグループである。 しかし、残っているレコードを…