ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

大阪大学入試問題 (2024 年, 数学)

すでに話題になっているようだが, 大阪大学の 2024 年数学の文理共通問題に立体幾何の証明問題が出題されている. これは面白そうだと思ってやってみた. 制限時間もあるので, どこまで詳しく証明を書けばよいのかわからないが, 立体幾何のよく知られた基本命題は (すでに以前の記事で証明済みなので) ここでは証明なしに使った.

【問】

【解】
まず, 存在証明をする. 存在証明は実際に存在する具体例をひとつでもあげればよい. どうやって直線  l と直線  m の共通垂線を作図できるか考えるのが一番簡明だと思う.

直線 l を含み, 直線 m に平行な平面  P を作ることができる. (なぜかというと, 直線 l の任意の点から, 直線  m に平行な直線をただひとつ引くことができる. この平行線と l を含む平面 P がただひとつ存在する. 平面 P は,  l を含んでいるので, ねじれの位置にある  m を含まない. この平面  P が直線  m に平行であることはすぐに証明できる. 参考: 都立国立高校入試問題から - ノリの悪い日記)

次に直線  m の任意の点  K から平面  P に垂線を下ろし, 垂線の足を  L とする (三垂線の定理を活用して垂線を作図できる). そうすると  m と直線 KL を含む平面  Q が定まる.  Q KL を含むので, 平面  P と平面  Q は垂直である. 平面 P と平面  Q の交線はもちろん, 直線  m と平行である. 交線と直線  l の交点を  B とする (直線  l と直線  m は平行ではないので, 交線は直線  l と必ず一点で交わる). B を通り,  KL に平行な線を引いて, 直線  m との交点を  A とすれば,  AB は直線  l にも直線  m にも垂直な直線である.

次にただひとつしか存在しないことを証明する.

下図のように異なる二つの共通垂線  AB ,  CD が存在すると仮定する (直線外の同一点を通ってその直線に下ろす垂線は唯一存在するという平面幾何の定理から  A \neq C かつ  B \neq D としてよい). B を通り  m に平行な直線  m' と,  D を通り  m に平行な直線  m'' はともに平面  P に含まれている (もしそうでないとすると, 同一点を通って m に平行な線が二本あることになって平行線の公理に矛盾する). このことから容易にわかるように直線  AB と直線  CD はそれぞれ平面 P に垂直である. すなわち, 直線  AB と直線  CD は平行である. つまり直線  AB と 直線  CD をともに含む平面が存在し, このことから, 直線  l と直線  m もその平面上にあることが帰結される. しかし, 直線  l と直線  m はねじれの位置にあり, 言い換えればどんな平面も直線  l 全体と直線  m 全体を同時に含むことはできない. したがって矛盾する. このことから, 直線  AB と直線  CD は一致し, 唯一性が証明できた.


//

※ 直線 l を含み, 直線 m に平行な平面が  P 以外に存在すると仮定し, この平面を  P' とすると,  P P' の交線は  l である.  l 上の任意の点から  m に平行線をひくと. その平行線は  P にも  P' にも含まれるから,  l に一致する. すると  l m が平行になって, ねじれの位置にあることに矛盾する. したがって直線 l を含み, 直線 m に平行な平面は  P 以外に存在しない.

※ 論証的な立体幾何が大学入試問題から姿を消したのは, 昭和 36 年あたりではないかと推測している. 以下のような各種資料から明治時代にも論証的な立体幾何が教授されていたことがわかり, その教授内容には「ねじれ二直線の共通垂線」も含まれていた. ただし「ねじれ二直線」は「同一の平面中に在らざる二直線」と表現されている. 戦前に「捩れ」という用語がまったく使用されていなかったわけではなく, たとえば杉村欣次郎著の『立體幾何學』 (昭和 12 年) では「捩れの位置」 という用語がすでに定義されて使用されている.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasme/19/2/19_101/_pdf/-char/ja

※ 立体幾何は現在, 中学 1 年の後半に「直感立体幾何」というべきものを習うわけだが, これについて次のような感想を抱いたことがある.

空間認識のイマージュ - ノリの悪い日記