ドゥルーズの『差異と反復』の「思考のイマージュ」に倣って, 中学数学が真に開始することができないのは, その開始が「すべての人は空間というものを知っている」という暗黙の前提 (ドグマ) に立っているからだ. と, 思わず呟いてしまいたくなるのは, 以下にある 2021 年度の東京都立高校入試の空間図形の問題の正答率, 問1) 20.2%, 問2) 3.6% を見たときである. 数字をすぐには信用しないことにしているが, これには少々驚いた. 自分で解いていて, 「なんだこれは, サービス問題なのか」と思ったからだ. これが, 前回の大阪府の入試問題ならば, 試験時間も少ないし仕方がないかとまだ思わせるが, いくら受験生に空間図形の問題はスルーしろと「教育的指導」がされているとは言え, この問題でこの正答率はどうしたのかと思わせる. 東京都の教育委員会もさすがに「空間内にある直線と平面の位置関係や,立体の中にできる平面等を的確に捉える力が十分ではない」と報告書に書いている. というわけで, ここしばらく, 空間図形の問題は増えることがあっても減ることはないだろう.
【解】
問 1) 「ねじれ」の位置関係にある二つの直線が同一平面上に存在することは無いので,
, , , はもちろん違う. 残りの つの辺についてもし迷うのだったら, 例えば, 辺 の場合, 前回やったように と により決定される平面を考えてみればよい (同一直線にはない 点を含める平面はただ一つしかない). を通り, に平行な線はその面上にある. は明らかにその面上にないので と は「ねじれ」の位置である. 答えは 本.
問 2)
平面 と平面 は垂直である (なぜなら, 平面 は平面 に垂直な直線 を含んでいる). 面と面が垂直であると何がうれしいかというと, たとえば平面 に垂直な直線が平面 に含まれているということがわかることである. 具体的には, 平面と平面の交線 に垂直な平面 上の直線はすべてそうである. 他を探す必要はない, 垂線は青い鳥のようにそこにあるのである! したがって, から, に垂線を下ろし, とその垂線の足を結ぶ線分の長さが, 体積を求める錐の高さである.
直角三角形 の面積は で,
を底辺と考えれば, 高さは である. 平行四辺形 の面積は, だから, 求める体積は
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