ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

竹取物語 (9)

大納言南海のはまにふきよせられたる
にやあらんとおもひていきつきふし給へり
舟にあるをのことも國につけたれとも
國のつかさまうてとふらふにもえおきあか
り給へぬをみれは風いとおもき人にて
はらいとふくれこなたかなたの目にはすもゝ
を二つ付たるやうなりこれを見奉りて
そ國のつかさもほうゑみたる國に仰給
てたこしつくらせ給ひてにやう〳〵に
なはれて家に入給ひぬるをいかてきゝけん
つかはしゝをのこともまいりて申やうたつ
の首の玉をえとらさりしかは南殿へも
えまいらさりし玉の取かたかりし事を
しり給へれはなんかんたうあらしとて参り
つると申大納言おき居てのたまはくなん
ちらよくもてこす成ぬ龍はなる神のるいに
こそありけれそれか玉をとらんとてもそこら
の人々のかいせられんとしけりまして

たつをとらへきましかは又こともなく我
はかいせられなましよくとらへすなりにけり
かくやひめてふおほ盗人のやつか人をこ
ろさんとするなりけり家のあたりたに今
はとほらし男とももなありきそとて家
にすこしのこりたりける物ともはたつの
玉をとらぬものともにたひつ是を聞ては
なれ給ひしもとの上はかたはらいたく
わらひ給ふいとをふかせつくりしやは
とひからすのすにみなくひもていにけり
世界の人の云けるは大伴の大納言はたつ
のくひの玉とりておはしたるいなさも
あらす御まなこ二つにすもゝのやうなる
玉をそへていましたるいひけれはあな
たへかたといひけるよりも世にあはぬ事をは
あなたへかたとはいひはしめける中納言
いそのかみのまろたりの家につかはるゝをのこ
とものもとにつはくらめのすくひたらは
つけよとの給ふを承りてなにのやうにか
あらんと申こたへての給ふやうつはくらめ

のもたるこやすかいをとらんれうなりと
のたまふをのこともこたへて申つはくら
めをあまたころしてみるたにはらに
なきものなりたゝし子うむ時なんいか
てかいたすらんと申人たにみれはうせぬと
申又人の申やうおほいつかさのいひかし
くやのむねにつくのあなことにつはくら
めはすをくひ侍るそれにまめならん
をのこともをひてまかりてあくらをゆ
ひあけてうかゝはせんにそこらのつはくらめ
子うまさらんやはさてこそとらしめたま
はめと申中納言よろこひ給ひておかし
き事にもあるかなもつともえしらさり
けりけう有事申たりとの給ひてまめ
なるをのことも廿人はかりつかはしてあ
なゝひにあけすへられたり殿より使
ひまなく給はせてこやすのかひとりたる
かとむかはせ給ふつはくらめもひとのあ
またのほり居たるにおちてすにものほり
こすかゝるよしのかへしを申けれは聞給ひ
ていかゝすへきとおほしわつらふに彼つかさ
の官人くらつ丸と申おきな申やうこやす

貝とらんとおほしめさはたはかり申さん
とて御前にまいりたれは中納言ひたひ
をあはせてむかひ給へりくらつまろか申
やうこのつはくらめこやす貝はあしく
たはかりてとらせ給ふなりさてはえとらせ
給はしあななひにおとろ〳〵しく廿人
のほりて侍れはあれてよりまうてこす
なりせさせたまふへきやうは此あなゝひ
をこほちて人みなしりそきてまめなら
む人一人をあらたにのせすへてつなを
かまへて鳥の子うまん間につなをつり
あけさせてふとこやすかひをとらせ給ひ
なはよかるへきと申中納言のたまふやう
いとよき事なりとてあなくひをこほし
人みなかへりまうてきぬ中納言くらつ
丸にのたまはくつはくらめいかなる時に
か子をうむとしりて人をはあくへきと
のたまふくらつ丸申やうつはくらめ子
うまんとする時は尾をさゝけて七度めく
りてなんうみおとすめる扨七度めくらせ
給へとそ申ける