自分だけそう思っているにすぎないかも知れないけれど, 便利だと思っている論理演算について書いてみる. なお, ここでは恒真命題は , 恒偽命題は で表わすことにする.
まず, 単項命題 , の書き換えとして,
これは, が前提を必要とせず, 成り立つことを示している.
これは, A が正しいと仮定すると矛盾することを示している.
便利だと思っているのは, 含意命題の前件で連言になっている命題を否定して, 後件に移動して選言として加えても, また, その逆の操作を行なっても同値だというものである. つまり,
以上二つをまとめて, 公式化しておくと,
となる. 一応, 証明しておくと,
これを使うと, たとえば, の間接証明には次のやり方があることがわかる.
これは対偶による証明である. 他にも,
が考えられる. 背理法とは, 上の つ全部を指すのか, 最後のものだけを指すのかわからないが, つとも背理法とまとめる方が普通のような気がする. 実際,
は自明なので, 番目の形に帰着できる. 同様なので, 最初のものだけ示せば,
である.
単項命題の背理法は,
である.
他にも次のような公式は, ほぼ自明である.
また,
※ 含意の括弧は省略できない.
//
このような論理演算を知っておくと, 直接証明とは違う別証明を考えるときに役立つことがある. たとえば, 中学生のとき, 「中点連結定理」というのを習ったが, その逆である,
が真であることを証明するのに,
を証明してもよい. 仮定によって は中点ではないのだから, 中点 を別に取ることができる. そうすると「中点連結定理」により, である. を通って に平行な線は平行線の公理によりただひとつであるから, である.
※ 背理法を使う簡単な受験問題をひとつだけやっておく.
【問】
は有理数のとき,
ならば
であることを証明せよ. ただし, は無理数である.
【解】
この問題を取り上げたのは, 証明すべき含意命題が,
となっていて, 結論が で結ばれているからである. 一般に推論 (sequent) で,
とカンマ ‘,’ で区切ってあったら, 前件 (仮定) の方は , 後件 (結論) は として解釈するのが古典的である.
つまり, もし前件に , 後件に が含まれていたら,
または,
を使って命題を分解して複数命題として考えるということである.
※ 他には, 次のようなものが考えられる.
//
したがって, この場合も,
として考えればよい. ところが, この場合, 下の命題と を仮定すると, が出て, そこから が出てくるので, である. したがって, (下の命題 ) (上の命題) である. このことから,
となり, 結局最後の命題だけを証明すればよい ( が真のとき, というのは, この場合だけでなくよく使う).
更に,
なので,
かつ を仮定すると,
となって, が有理数で表わせない実数 (無理数) であることと矛盾する. したがって証明された. //
以上, 証明すべき含意命題は, 前件 (仮定) の方は , 後件 (結論) は である複数の命題に分割でき, それぞれの命題は,
を使って同値変形できることを述べた.