前回の記事で, グラフの移動について書いたので, 前にも解いた 次方程式の解の存在範囲の問題をもっと簡単に (?) 解いてみよう. 数 II では, 数 I のグラフを利用した解法を「解と係数の関係」「判別式」と対応づけてその同値を理解する単元がある.
【問】
方程式 の つの実数解のうち, 少なくとも つが の範囲にあるような定数 のとりうる値の範囲を求めよ.
【解】
とおく. そうすると方程式は,
を 軸に沿って 移動し,
して考える. 仮定の範囲はそれに伴って, へ移動する. 実数解を とおく (, ).
補集合をとる方法がやはり素直な気がする. 指定された範囲に一つも解が含まれない場合を求めることを考える. それは次の 通りの場合だ.
これから,
否定して, 実数解であるという条件から,
から,
//
次もやってみる.
【問】
次方程式 が次の条件を満たすような定数 の範囲を求めよ.
異なる つの実数解のうち, ただ つが にある.
異なる つの実数解のうち, ただ つが にある.
に少なくとも つの実数解をもつ.
に少なくとも つの実数解をもつ.
【解】
まず、左辺の式をグラフと見て 軸方向に 平行移動して
とおく. 区間は になる.
実数解を とおく ().
一見やさしそうな「ただ一つの解*1 をもつ」場合のよくある解法 が内包している端点条件処理のややこしさ (単純さは上辺のことだけで, うっかりしやすい の場合も考慮して煩わしい対処をしなければならない.) を認識させるという出題意図はわかるが, そのややこしさは, この問をその方法で解く場合に限り生じる. ここでは と をまず解いて, その後, 指定された範囲に つの解 (または重解) を含む条件を求めて, と を求める方針でいく.
これから,
否定して, 実数解であるという条件から,
以上より,
これから,
否定をとって, 実数解であるという条件から,
以上より,
とおいて,
から,
である.
のとき, だが, の結果より異なる実数解を範囲に ( つ) もつ.
のとき, だが, の結果より実数解を範囲に持たない.
のとき, 範囲内に異なる実数解のうちただひとつを持つことはない.
以上より,
,
とおいて,
から,
である.
重解をとるのは, または であることに注意して,
のとき, だが, であり, 範囲内に実数解を つもつ.
のとき だが, 重解を持つので適さない.
のとき, 範囲内に異なる実数解のうちただひとつを持つことはない
以上より,
,
//
【問】
の 次方程式
が, の範囲にただ つの実数解をもつ条件を求めよ.
【解】
このような「ただ つの実数解」は,
異なる実数解の片方に加えて重解も含むからややこしい.
とおいて, の 解を , () とする.
から,
となる の条件を調べる.
のとき, だが, 上の範囲に含まれないので, ただひとつの解を持つ.
のとき,
であるが, のときは, つの実数解を持つ. はただひとつの実数解を持つ.
のとき, 異なる実数解のうちただひとつを持つことはない.
次に, 判別式,
から, 重解を持つ のうち,
は, 上の範囲に入る.
以上より,
または,
//
最後にこれも以前に解いた問題だが, 軌跡の問題に応用してみる. やっていることは全く同じである.
【問】
放物線 上に 点 , をとる. が の範囲を動くとき, 線分 が通過する領域を図示せよ.
【解】
線分 上の点を とすると, は, 直線 上にあることから,
で , 端点が , なので にはとりえる範囲があり, それは,
例によって,
とおいて, グラフを 軸方向に 動かすと,
となり, それにあわせて, 先程の範囲は
となる. この範囲に の解が少なくともひとつ存在するときの条件を求める. 対称性から, のときの存在範囲を求める. このとき, の範囲は, のとき,
であり, では である.
とおく.
まず, が実数解をもつためには,
なので, その範囲の 平面の の領域から,
の範囲を消去する. 次に,
の範囲を消去する. のときも同様にして, 求める領域は, 下図のようになる. ただし, 境界を含む. (グラフ横軸は , 縦軸は を示す.)
*1:この場合の「ただ一つ」とは重解のことではなく, 異なる解のどちらか片方だけが指定範囲にあるということである.