三角関数の初等的説明で, ときどき気持ち悪いのは, 「それって一般角で本当に成り立つの?」と思ってしまう疑問に答えてくれないことだ. 別に証明が大変というわけではない. たとえば,
の場合, 加法定理で証明すればよいではないかと思うかもしれないが, そもそも加法定理を証明する場合, ほとんどは還元公式を使っているので, やはり違うやり方で証明しておいた方がよい. (そもそも加法定理は鋭角の場合で成立することさえ示せれば, 還元公式により一般角でも成立することが示せるので図形的証明は一般角でも有効なのだ.)
下図のように原点を中心とする単位円上の任意の点 を とし, 直線 に対称な点を とする. すると整数 が存在して,
が成立するので (またしても和差算!),
したがって, の座標は,
となる. 一方 の対称点であるから,
とも表せる*1. 以上より,
が恒等的に成立する *2.
また, 偶関数と奇関数の性質である,
も同様な証明で恒等的に成立することが示せる.
これぐらい証明できていれば, 後は恒等式の変数の置き換え *3 を使えば, 他の関係は芋づる式に導ける. たとえば,
の を で置き換えて,
更に を で置き換えて,
といった風である.
なお, 最初の方で加法定理について触れたが, 位置ベクトル
が 任意の角 回転したときは,
に移ることが還元公式からいえるので, 位置ベクトル が に移ることとあわせて, 加法 (/減法) 定理は一般角で一挙に つとも証明できることになる. つまり, 以下のようになる.