この記事は, 前にも書いたことがある内容をただ言いかえているだけである.
前田隆一の『新算数教育講座』第 3 巻 (1960) については, 最近の記事で紹介したが, 文章題に「観点変更」をもたらす数理的主題のひとつとして前田は「量を分けること」もあげている.
量が大小 n 個の部分に分かれているとき, これらを同じ大きさに分けなおすには全体を n 等分すればよい.
これが, 「平均」の意味だと前田は言うのだが, このことに反対する人は多分いないと思う.
「くりの実を, 私は 58 個, 弟は 35 個, 妹は27 個拾った. 3 人で同じように分けるにはどうすればよいか.」
いま, 2 つの部分 P, Q があって P > Q であるとき, この 2 つの部分を等分するには, P は Q に (P − Q) /2 渡せばよいという見方も文章題の和差算や差分算を解く上では重要な考え方である.
高校数学の三角関数の積和公式や和積公式は覚える必要もないし, 導出する必要もない. 必要なのは算数である.
をわざわざ図に表わしてみる.
が に 渡せば, 両者は になる. 等しく分けられたものを平均という. したがって,
, の状態から, が に を渡せば, と となってその差 () は の 倍になるので,
である. 計算などほとんどしていない. *1
後は加法定理を知っていればすぐに計算できる.
, とすれば,
で,
,
である.
次は, とみても, とみても結果は同じであるが, とみて大きい方から小さい方を引くほうが簡単だ.
次は とみて,
次に,
, とすれば,
で,
,
である.
つぎは,
※ 2 倍角 (半角) / 3 倍角の公式
積分計算では, こちらの形をよく使う.
同様に,
//
和積公式に至っては, さらに簡単である.
を積の形にしたかったら, (連立方程式をいちいち解くのではなく) 平均と偏差の関係であることを思い出して, と の平均 (= ) を求めて,
として, 後は上式を加法定理にもとづいて計算するだけである. 結果は,
となる.
※ 倍角の公式
したがって,
つぎに,
したがって,
*1:この A, B を求める式は現在はどうか知らないが, 明治, 大正, 昭和初期を通じて算数が算術だったころには最も有名な公式であって, 大抵の算術の本の最初に出てくる.