ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

関数 (続き) の続き

中学 1 年生に座標軸とはすでに正負の数のところで習った数直線を  2 本, 横と縦に配置したものだと説明していたら *1, なぜか望月新一先生のブログ記事を思い出してしまった.

​​「同じものを同じものと見做すか, それとも違うものと見做すか」という話は, 恐らく通常の数学用語で表現すると,

​「同型なもの (=つまり, 同一の ‘設計図’ に​基づく内部構造を有するもの) を、​同一視​するか, それとも区別するか」​

というような記述の, 一般人向けの翻訳のつもりでしょうが, 同型なものを同一視することも, 区別することも, (20 世紀​初頭に遡る) 公理的集合論によって当たり前に記述できる​考え方であり, つまり古くから純粋数学全般で広く知れ渡っている当たり前な考え方であり, 決して私が最近になって導入した考え方ではありません.

番組内では, 三個のリンゴの話が度々登場しますが, この​「三個のリンゴ」という考え方自体, それぞれのリンゴが​「同型」であるという認識がなければ成立しませんし, また「同型であるにも関わらず、それぞれのリンゴは同一視せずに区別する」という考え方がなければ, 「三個」という概念も成り立ちません. (つまり, 区別しないで同一視してしまうと, 「三個」は「二個」になったり, 「一個」になったりするということです.)完全版の最後辺りに出てくる, 平面における「x 軸」と「y 軸」も同じ現象の一例になります. (つまり,「x 軸」も「y 軸」も, 一次元の直線と同型になりますが, 同一視せずに区別して扱うようにしないと, 「平面」という幾何的図形は成り立ちません.)

関数については, 更に「像」と「逆像」について触れておく.

 F を 集合  X から  Y への関数とし,  X の部分集合を  A とする. 像  F(A) とは  Y の部分集合であって,  y \in F(A) y = F(x) となる  x \in A が存在するという条件を満たすものである.

※ 上の定義から,  F が全射であるというのは,  Y = F(X) と同値である. //

 X の任意の部分集合  A,  B において,

「像」の先程の定義から  A \subset B ならば,  F(A) \subset F(B) であることはすぐにわかる.

 F が単射であるとき,  F(A) \subset F(B) ならば  A \subset B である.

【証明】
 x \in A であるとする.  y = F(x) とおくと  y \in F(A) であるが仮定より,  y \in F(B) である. すると  y = F(x') となる  x' \in B が存在するが,  F が単射であるから,  x' = x であり,  x \in B が言えた. //

 A \cap B \subset A かつ  A \cap B \subset B なので,

 F(A \cap B) \subset F(A) \cap F(B)

である.

また,  F が単射であることは,

 \forall A \in X, \forall B \in X, \\F(A \cap B) =  F(A) \cap F(B)

と同値である.

【証明】
 F が単射であるとする:

 y \in F(A) \cap F(B) とすると,  y \in F(A) だから,  F(x_1) = y となる  x_1 \in A が存在する. また,  y \in F(B) だから,  F(x_2) = y となる  x_2 \in B が存在する.  F は単射なので,  F(x_1) = F(x_2) から,  x_1 = x_2 である. したがって  y \in F(A \cap B) である.

 \forall A \in X, \forall B \in X, \\
F(A \cap B) =  F(A) \cap F(B)
であるとする:

任意の  x_1, x_2 \in X について,  A= \{x_1\},  B =\{x_2\} とおく.  x _1 \neq x_2 であるとすると,  A \cap B = \phi であり, これから  F(A) \cap F(B) = \phi である. すなわち,  F(x_1) \neq F(x_2) である. したがって,  F は単射である. //

 F(A) \cup F(B) = F(A \cup B)

【証明】
 A \subset A \cup B かつ  B \subset A \cup B なので,  F(A) \subset F(A \cup B) かつ  F(B)\subset F(A \cup B) である. したがって,

 F(A) \cup F(B) \subset F(A \cup B)

である. 逆に  y \in  F(A \cup B) とすると,  y = F(x) となる  x \in A \cup B が存在するが,  x \in A とすると,  y \in F(A) である.  x \in B とすると,  y \in F(B) である. つまり,  y \in F(A) \cup F(B) である. //

 F を 集合  X から  Y への関数とし,  Y の部分集合を  A' とする. 逆像  F^{-1}(A') とは  X の部分集合であって,  x \in F^{-1}(A') F(x) \in A' となる条件を満たすものである.

 Y の任意の部分集合  A',  B' において,

逆像の定義から,  A' \subset B' ならば,  F^{-1}(A') \subset F^{-1}(B') であることはすぐにわかる.

 F が全射であるとき,  F^{-1}(A') \subset F^{-1}(B') ならば  A'\subset B' である.

【証明】
 y \in A' であるとする.  F は全射なので,  y = F(x) となる  x が存在し,  x \in F^{-1}(A') である. 仮定より,  x \in F^{-1}(B') である. すると  F(x) = y  \in B' である//

 F^{-1}(A' \cap B') =  F^{-1}(A') \cap F^{-1}(B')

 F^{-1}(A' \cup B') =  F^{-1}(A') \cup F^{-1}(B')

【証明】
たとえば,  x \in F^{-1}(A' \cap B') は,  F(x) \in A' \cap B' と同値であり, したがって,  (F(x) \in A')  \cap (F(x) \in B') と同値であることなどからすぐにわかる. //

*1:この前は, 一次方程式の解き方を算数の線分図で解くのと同じであることを説明していた. 小学校ではたとえば 2 × ▢ + 6 = 8 を線分図を描いて考えて解いている. 正負の数の教え方も線分図が数直線になっただけのような気がする.