ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

関数 (続き)

前回の続きだが, 中学数学からはちょっと逸脱する.

集合  X から 集合  Y への関数  F があって, その要素  (x, y) の順番を反転した対  (y, x ) の集合が集合  Y から 集合  X への関数になる条件を調べるには, 前回の記事で取り上げた関数の定義を素直に確認すればよい.

まず, 任意の  y \in Y について対  (y, x ) x が存在することである. つまり  y = F(x) となる  x が存在することであるが, このことを関数  F が「全射」であるというのだった.

さらに,  y = F(x) となる  x がただ 1 つであることであるが, この条件は関数  F が「単射」であるというのだった. 同じことだが, 任意の  x_1, x_2 \in X について,  F(x_1) = F(x_2) ならば  x_1 = x_2 であるといったり, その対偶をとっていわれることが多い.

以上をまとめると, 対  (y,x) の集合が集合  Y から 集合  X への関数となるには, 任意の  y \in Y について  y = F(x) となる  x \in X が存在して, かつそのような  x はただ 1 つであるという「全単射」条件が満たされていればよい. この関数を  F の「逆関数」と呼び  F^{-1} と書いたりするのだった.

次に合成関数について触れておくと,

 F を集合 X から集合  Y への関数,  G を集合  Y から集合  Z への関数だとする. すると任意の  x \in X について対  (x, G(F(x))) を作るとその対の集合は容易に分かるように関数となる. これを  G F の合成関数と呼び,  G \circ F と書く.

関数  F と関数  G がともに単射 / ともに全射 / ともに全単射のときは,  G \circ F はそれぞれ単射 / 全射 / 全単射である. 証明は省略する.

 G \circ F が単射であるならば F は単射であるが,  G は単射であるとは限らない.

F が単射である証明】

 G \circ F は単射であるから, 任意の  x_1, x_2 \in X について,  x_1 \neq x_2 ならば  G(F(x_1)) \neq G(F(x_2)) である.

 G は関数であるから,  G(F(x_1)) \neq G(F(x_2)) ならば  F(x_1) \neq F(x_2) である .

したがって, 任意の  x_1, x_2 \in X について,  x_1 \neq x_2 ならば  F(x_1) \neq F(x_2) であることが言え,  F は単射である. //

G が単射であることの反例】

 X = \{x\},  Y= \{y_1, y_2\},  Z= \{z\}

として,

 F = \{(x, y_1)\},  G = \{(y_1, z), (y_2, z)\}

とすれば,

 G \circ F = \{(x,z)\}

だが,  G \circ F は (前提  \forall x_1, \forall x_2, x_1 \neq x_2 の真集合が空なので) 単射であり,  G は単射ではない. //

また  G \circ F が全射であるならば G は全射であるが,  F は全射であるとは限らない.

G が全射である証明】

 G \circ F は,全射なので, 任意の  z \in Z について,  z = G \circ F (x) となる  x \in X が存在する. したがって,  F(x) \in Y が存在するので,  G は全射である. //

F が全射であることの反例】

 X = \{x\},  Y= \{y_1, y_2\},  Z= \{z\}

として,

 F = \{(x, y_1)\},  G = \{(y_1, z), (y_2, z)\}

とすれば,

 G \circ F = \{(x,z)\}

だが,  G \circ F は全射であり,  F は全射ではない. //

 F: X \rightarrow Y,  G: Y \rightarrow X とし,  X \rightarrow X,  Y \rightarrow Y の恒等関数をそれぞれ  id_X,  id_Y とする.

 G \circ F = id_X かつ  F \circ G = id_Y ならば,  G = F^{-1} である.

※ 関数  G が逆関数であると予想できる場合, 実際にそうであることを示したり,  F が全単射であることを示すときに便利である.

【証明】

恒等関数は全単射であるから, 上で証明したことより, 関数  F,  G は全単射である.  F が全単射であるから, 任意の  y \in Y に対して,  y = F(x) となる  x \in X がひとつ定まるので,  F^{-1}(y) = x である. 一方,

 \begin{align} G(y) &= G(F(x)) \\
&= G\circ F (x)\\
&= id_X(x)\\
&= x \end{align}

であるから, 任意の  y \in Y に対して  G(y)=F^{-1}(y) となり, これから  G = F^{-1} がいえる. //

任意の集合  X,  Y,  Z について, 任意の関数  F: Y \rightarrow Z と,  X から Y への任意の関数  G, H を考える.

関数  F が単射であることと, 「 F \circ G = F \circ H ならば  G = H である」は同値である.

【証明】
関数  F が単射であることと,  F \circ G = F  \circ H を仮定する. 任意の  x \in X について,

 F(G(x)) = F (H(x))

であり,  F は単射であるから,

 G(x) = H(x)

となり, G = H である.

次に, 「  F \circ G = F \circ H ならば  G = H である」とし,  F が単射でないとする. すると,  F (y_1) = F(y_2) であって,  y_1 \neq y_2 である  y_1, y_2 \in Y が存在する.  X = \{x\} として,  G(x) = y_1,  H(x) = y_2 とする. そうすると,  F \circ G = F \circ H であるが,  G \neq H となって矛盾する.//

任意の集合  X,  Y,  Z について, 任意の関数  F: X \rightarrow Y Y から Z への任意の関数  G, H を考える.

関数  F が全射であることと, 「 G \circ F = H \circ F ならば  G = H である」は同値である.

【証明】
関数  F が全射であることと,  G \circ F  = H  \circ F を仮定する.  F は全射だから, 任意の  y \in Y について,  y = F(x) となる  x \in X が存在する.

 G(y) = G(F(x)) = H(F(x)) = H(y)

となり, G = H である.

次に, 「  G \circ F = H \circ F ならば  G = H である」とし,  F が全射でないとする. すると, 任意の  x \in X について  y' \neq F(x) となる  y' \in Y が存在する.  Z = \{0, 1\} として,  G(y') = 1 とし,  y \neq y' については  G(y) = 0 として関数  G を定める. また, 関数 H は 任意の  y \in B H(y) = 0 とする. そうすると,  G \circ F = H \circ F であるが,  G \neq H となって矛盾する.//