中将とりつれはふとあまの羽ころも
うちきせ侍りつれはおきなをいとをし
かなしとおほしつる事もうせぬ此き
ぬきつる人は物思ひなくなりにけれは
車にのりて百人はかり天人くして
上りぬそのゝちおきな女ちのなみたを
なかしてまとへとかひなしあの書をき
し文をよみてきかせけれと何せんに
か命もおしからんたかためにか何事も
ようもなしとてくすりもくはすやかて
おきもあからてやみふせり中将人々
ひきくしてかへりまいりてかくやめを
えたゝかひとめすなりぬるをこま〳〵と
そうすくすりのつほに御文そへてま
いらすひろけて御覧していとあはれ
からせ給ひて物もきこしめさす御あ
そひなともなかりけりたいしん上達
部をめしていつれの山か天にちかき
とゝはせ給ふにある人そうすするかの國
にあるなる山なん此都もちかく天も
ちかく侍るとそうすこれをきかせたまひ
て
あふこともなみたにうかふ我身には
しなぬくすりもなにゝかはせん
かの奉る不死のくすりに又つほくして
御使に給はすちょくしには月のいはかさと
いふ人をめしてするかの國にあなる山のい
たゝきにもてつくへきよし仰給ふみ
ねにてすへきやうをしへさせ給ふ御文
ふしのくすりのつほならへて火をつけて
もやすへきよし仰給ふそのよしうけ
たまはつて兵者もあまたくして山への
ほりけるよりなん其山をふしの山
とは名付ける其けふりいまた雲の
中へたちのほるとそいひつたへたる