ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

竹取物語 (15)

かくやひめいはく月のみやこの人にて父母
ありかた時の間とてかの國よりまうて
こしかともかく此國にはあまたの年を
へぬるになんありける彼國の父母の事も
覚えすこゝにはかくひさしくあそひき
こえてならひ奉れりいみしからん心地
もせすかなしくのみあるされとをのかこゝ
ろならすまかりなんとするといひてもろ
ともにいみしうなくかははるゝ人も年頃
ならひて立わかれなん事を心はへなと
あてやかにうつくしかりつることをみならひ
てこひしからん事のたへかたくゆ水のま
れすおなし心になけかしかりけりこの
事を御門きこしめして竹取か家に
御つかひつかはさせ給ふ御使に竹取出あひ
てなく事かきりなし此事をなけくに
ひけもしろくこしもかゝまり目もたゝ
れにけりおきな今年は五十はかり目も

たゝれにけりものおもひにはかたときに
なん老になりにけりとみゆ御つかひお
ほせ事とておきなにいふいと心くるしう
物おもふ成はまことにかと仰たまふ竹取
なく〳〵申此十五日になん月のみやこよ
りかくやひめのむかへにまうてくなるたう
とくとはせ給ふ此十五日には人々給はりて
月のみやこの人まうてこはとらへさせんと
申御使かへりまいりておきなの有さま
申てそうしつる事とも申をきこし
めしての給ふ一目見給ひし御心にたに
わすれ給はぬに明くれ見なれたるかくや姫
をやりていかゝおもふへきかの十五日つかさ〳〵
におほせてちょくし少将高野のおほくに
おほせて六ゑのつかさ合て二千人の人を
竹取の家につかはす家にまかりてつゐち
のうへに千人屋の上に千人家の人ゝおほ
かりける合てあけるひまもなくまも
らす人々も弓矢をたいしてたりやの内
には女ともはんにおりて守らす女ぬりこ

めの内には女ともかくやひめをいたかへて
おりおきなもぬりこめの戸さしてとくち
におりおきなの云かはかり守るところに
天の人にもまけむやといひてやのうへに
おる人々いはく露も物そらにかけらは
ふといころし給へまもる人々の云かはかり
してまもる所にかはり一たにあらはまつ
いころして外にさらさんとおもひ侍ると
いふおきなこれをきゝてたのもしかり
おり是をきゝてかくやひめはさしこめて
まもりたゝかふへきしたくみをしたり
ともあの國の人をえたゝかはぬなり弓矢
していられしかくさしこめてありとも
かの國の人々はみなあきなむとす相たゝ
かはんとすともかの國の人きなはたけき
心つかう人もよもあらしおきなのいふ
やう御むかへにこん人をは長きつめして
まなこをつかみつふさんさかしみをとりて
かなくりおとさんさかしりをかきいてゝこゝ
らのおほやけ人にみせてはちをみせん

とはらたちおるかくやひめいはくこは
たかになのたまひそ屋のうへにおる人とも
のきくにいとまさなしいますかりつる心
さしともをおもひもしらてまかりなんする
事の口おしう侍りけりなかきちきり
のなかりけれはほとなくまかりぬへきなめり
とおもひかなしくはへるなりおや達のかへり
みをいさゝかたにつかうまつらてまからん
道もやすくもあるましきに日ころも出ゐ
てことしはかりのいとまを申つれとさらに
ゆるされぬによりてなんかくおもひな
けき侍る御心をのみまとはしてさりなん

事のかなしくたえかたくはへるなりかの
みやこの人はいとけうらにおひをせす
なんおもふ事もなく侍るなりさる所へま
からんするもいみしく侍らす老おとろへ給へ
るさまを見奉らさらむ事こひしからめ
といひておきなむねいたき事なし給ふ
そうるはしきすかたしたる使にもさはら
しとねたみおりかゝるほとによひ打過
てねのこくはかりに家のあたりひる
のあかさにもすきてひかりたりもち月
のあかさを十あはせたるはかりにて有人の
毛のあなさへみゆるほとなり大空より人
雲にのりておりきて
土より
五尺
はかり
あかり
たるほとに
たち
つらね
たり