ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

未央柳

梅雨寒の午後に歩いていると、小雨に濡れてビヨウヤナギの黄色い花が道辺に咲いているのが目にとまった。漢字では「未央柳」と書かれるこの落葉低木は、谷崎潤一郎『盲目物語』終盤の北の庄落城の場面にも出てきたように、楊貴妃の美しさを喩えるため「太液の芙蓉」とともに白居易が使った「未央の柳」からその名前がとられているのだろう。

「雨を帶びたるよそほひの、太液の芙蓉のくれなゐ、未央の柳のみどりも、これにはいかでまさるべき」

歴史的仮名遣いを練習するためだけが最初の目的で『盲目物語』を読んでいたが、大和国栖村の手ずきの紙まで使って本を装丁させたという谷崎が、こんなルビの振り方やこんな送り字のやり方を本当に許したんだろうかと気になってきて、どうもそうではないらしいということが漸う漸うわかってきた。それで修正をまた始めたところである。