事前確率として, どのような確率分布が採用されるかが設問に定義されていない場合には, 事前確率をどのように考えるかによって, 異なる条件付き確率がえられることになる.
【問 】
壷の中には つしか球が含まれておらず, それぞれの球の色は白か黒である. この壺から, 球を つ取り出し, 次に球を取り出す前に, その球は壷に戻されるものとする. 最初の 回とも, 取り出された球が白だったとき, 回目に取り出される球も白である確率はいくらか.
【解】
壺の中に入っている白球の個数を () とし, 事象 を “壺の中に 個の白球が入っている” と定義する.
がどのような事前確率分布をしているかについて, この設問ではそれぞれの球は “白か黒である” ことから, 球の色の確率分布は, 項分布にしたがっていると考え,
とする. 事象 を “最初の 回で取り出した球が白色である” とし, 事象 を “ 回目に取り出した球が白色である” とする.
そうすると,
だが, ここで, は互いに排反だから, 確率の和の法則より,
また,
であるから,
となる.//
※ 別解として,
であることを示すことができ *1, ベイズの定理から,
であるから,
となる.
//
次の同じような問題を考える.
【問 】
壷の中に つの球が入っており, 色は白か黒であるが, すべてが同じ色ではない. これらの球の つ を取り出たところ, 色は白であった. そして, 同じような試行をくり返すために, その球を壷の中に戻した. 次に 回取り出す球がすべて黒である確率はいくらか. ただし, 次に球を取り出す前に, 取り出した球は壷に戻されるものとする.
【解】
壺の中に入っている黒球の個数を () とし, 事象 を “壺の中に 個の黒球が入っている” と定義する.
がどのような事前確率分布をしているかについて, この設問ではそれぞれの球は “白か黒である” としているが, 今度は, “すべてが同じ色ではない” ともあることから, 確率分布が 項分布にしたがっているとは考えにくい. 確率分布が不明なので, 事前確率分布は, 等確率分布とし,
とする. 事象 を “最初に取り出した球が白色である” とし, 事象 を “ 回続けて取り出した球が, みな黒色である” とする.
そうすると,
だが, ここで, は互いに排反だから, 確率の和の法則より,
また,
であるから,
となる.//
※ 問 と同様, 別解として,
となり, ベイズの定理から,
であるから,
となる.
//
*1:導出過程の最後で, がいったん定まってしまうと, と は互いに独立事象であることから, とした.