ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (278)

早稲田大学の  1976 年の入試問題だが, いまだにあちらこちらでよく取り上げられている. 条件付き確率の秀逸な例題であり, また忘れ物をした場合には, 最初に訪れた場所から確認していくのが合理的な行動であることを教えてくれる問題でもある (どこから探しても, たいして差はないという見方もあるだろうが……).

【問】
5 回に 1 回の割合で帽子を忘れるくせのある K 君が, 正月に A, B, C3 軒をこの順に年始回りして家に帰ったとき, 帽子を忘れてきたことに気がついた. 2 軒目の家 B に忘れてきた確率を求めよ.

【解】
“帽子を忘れる” という事象を  L, “ A で帽子を忘れる”, “ B で帽子を忘れる”, “ C で帽子を忘れる” という事象をそれぞれ,  L_A,  L_B,  L_C と書くことにする.

最初に訪れた  A で忘れる確率:

 \displaystyle{
P(L_A) = \frac{1}{5}= \frac{25}{125}}

2 番目に訪れた  B で忘れる確率:

 \displaystyle{P(L_B) =\frac{4}{5}\cdot \frac{1}{5} = \frac{20}{125}
 }

3 番目に訪れた  C で忘れる確率:

 \displaystyle{P(L_C)=\frac{4}{5}\cdot 
\frac{4}{5}\cdot \frac{1}{5}= \frac{16}{125}
 }

 L_A,  L_B,  L_C は互いに排反な事象*1であるから, 確率の和の法則により,

 \begin{eqnarray}
P(L) &=& P(L_A) + P(L_B) + P(L_C)
\\&=& \frac{25+20+16}{125} 
\\&=& \frac{61}{125}
\end{eqnarray}

となる *2.

したがって, “帽子を忘れてきた” という条件のもとで, “B に帽子を忘れた” 条件付き確率  P(L_B|L) *3 は,

 \begin{eqnarray}
 P(L_B|L) &=& \frac{P(L_B \cap L)}{P(L)}
\\ &=& \frac{P(L_B)}{P(L)}
\\ &=& \frac{20}{61}
\end{eqnarray}

となる.//

*1:ある試行において一方の事象が起こったときに他方の事象は決して起こらないことをいう. なお, 事象  E と事象  F が互いに排反事象であるならば,  E \cap F = \varnothing, つまり P(E \cap F) = 0 である. 一方, 事象  E と事象  F が互いに独立事象であるというのは,  P(E \cap F) = P(E)P(F) であることをいうのだから,  P(E), P(Q) 
> 0 のとき, 排反事象は独立事象ではないし, 独立事象は排反事象ではない. むしろ意味的に考えれば, 排反事象は, ある試行において一方の事象が起こったときに他方の事象は決して起こらないという観点から, 相互に強い従属関係におかれているとすらいえる.

*2: A,  B, C 以外の場所で帽子を忘れた可能性がなぜないといえるのかといった詮索は, ここではしないことにする.

*3:高校数学では,  P_L(L_B) と書くことが多い.