有限増分定理は, 森毅の著作 「現代の古典解析」で知った. 彼が訳したディユドネの「現代解析の基礎」では, 平均値の定理として「有限増分定理」を紹介している. ディユドネは,
平均値の定理の真価は等式にあるのではなく, 不等式にあるのだ.
と書いている. 有限増分定理は, このような問題の場合, 数 で習う積分の不等式 (積分の単調性) を使って示せばよい. 年東大理系前期の問題.
【問】
【解】
のとき,
のとき,
(増減表を書いて) したがって, 題意を満たす.
で, は単調増加であり, すべての について
である. また の結果から, は連続で,
である. また, だから,
再帰的に繰り返して,
を得る.
だから, のとき,
である.
//
※
を求めるのに, の証明をわざわざ書くまでもないと思うが, もしロピタルの定理も使わずに書くとしたら, まず,
を証明するために, () とおく. 項定理より,
したがって,
から, とすれば,
となる. 次に, となるように, をとると, のとき, になるが,
となって, とすれば,
をえる. //
※ 有限増分定理とは, が , を含むある開区間で微分可能として,
()
とすると,
が成り立つということである.
たとえば, が成立している場合,
として, とおけば,
ということなので, 定理より,
つまり,
が成り立っている.
森毅は, さらに
ならば,
から, ロピタルの定理,
ならば ( ただし, で ),
を得ている. (もちろんロピタルの定理は特定の不定形に使うものであり, この場合 である.)
//