ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (178)

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記事  (175) では, 点列  B, D, C,  G が調和点列であることを示すのに, メネラウスの定理とチェバの定理を使ったが, ここでは他のやり方で示すことを考える.

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1 直線上に 2 A, B を定め, 線分  AB を内分または外分する点  P の分割比  \displaystyle{\frac{AP}{BP}} と線分  AB を内分または外分する点  Q の分割比  \displaystyle{\frac{AQ}{BQ}} についての比  \displaystyle{\frac{AP}{BP}:\frac{AQ}{BQ}} A, B; P, Q の「複比」といい  (ABPQ) という記号であらわすことにする.
※ 本当は線分を有向線分と考え正負の記号をつけてあらわすのが普通だが, ここではそれをしない.

いま一つの直線上にある点  A, B, C,  D と別の直線上にある  A', B', C', D' の間に,

 (ABCD)=(A'B'C'D')

という関係があるとき, この二つの点列の対応を「射影的変換」と呼ぶことにする.

射影点列変換の重要な性質をいくつかあげる.

 (ABCD) = k ならば,

 (BADC) = (CDAB) =(DCBA) =k

である.

[証明] 定義から,

 \displaystyle{(ABCD) =\frac{AC}{BC}:\frac{AD}{BD}}

であるが,

 \displaystyle{(BADC) = \frac{BD}{AD}:\frac{BC}{AC}= \frac{AC}{BC}:\frac{AD}{BD}}

である. 他も同様.//

次の性質は射影的変換でとりわけ重要である.

同一の点  O を通る四つの定直線  a, b, c, d を任意の一直線で切り, その交点を  A, B, C,  D とすれば  (ABCD) の値は, 切線の位置によらず一定である.

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 B を通る,  a に平行な直線と  c,  d の交点を  P,  Q とする. 三角形の相似から,

 \displaystyle{\frac{AC}{BC}= \frac{OA}{BP}}
 \displaystyle{\frac{AD}{BD}= \frac{OA}{BQ}}

したがって,

 \displaystyle{\frac{AC}{BC}: \frac{AD}{BD} = \frac{OA}{BP}:   \frac{OA}{BQ}=\frac{BQ}{BP} }

である. ところが,  BQ は常に  a と平行だから  \displaystyle{\frac{BQ}{BP}} は定値である. したがって  (ABCD) も定値である.//
※ 切線 AD a, b, c, d の延長線で交わっても成立する.

2 つの直線が  A で交わるとき, この 2 直線上にそれぞれ 3 B, C, D B', C',  D' をとり,  (ABCD) = (AB'C'D) だとすれば,  BB', CC',  DD' は同一点を通るか平行である. (★)

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 BB',  CC' が交わる場合, その交点を  O とする.  O D を結び  AB' OD の交点を  D" とすれば, 前に証明したことから,

 (ABCD) = (AB'C'D")

で, 仮設から,

 (AB'C'D') = (AB'C'D")

となり,  D' D" は一致する.

次に,  BB', CC' が平行な場合, 相似から

 \displaystyle{\frac{AC}{BC} = \frac{AC'}{B'C'}}

だから, 仮設より,

 \displaystyle{\frac{AD}{BD} = \frac{AD'}{B'D'}}

となるので,  BB', CC', DD' は平行になる.//

 O を通る 4 直線  a, b, c,  d の切線と  O' を通る 4 直線  a', b', c',  d' の切線の複比をそれぞれ  (abcd),  (a'b'c'd') とあらわすことにする. いま,  a a' が同一直線であって, かつ  (abcd) = (a'b'c'd') であるならば,  b,  b' の交点  B,  c,  c' の交点  C,  d,  d' の交点  D は同一直線上にある.(★★)

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2 B, C を通る直線を引き, この直線が  a a' と交わる点を  A とし, さらにこの直線が  d と交わる点を  D_1,  d' と交わる点を  D_2 とすると,

 (abcd) = (ABCD_1)
 (a'b'c'd') = (ABCD_2)

であるが, 仮設から,

 (ABCD_1) = (ABCD_2)

である. したがって前の事実から,

 D_1 D_2 は一致して交点  D となる.//

以上で基本事項は終わったので, 最初の問題を考える.

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たとえば,  O を通る 4 直線の任意の切線の複比を  O(ABCD) とあらわすことにすれば,

 O(BCDG) \\
= O(EFHG)  \\
=A(EFHG)\\
=A(CBDG)

すなわち

 (BCDG) = (CBDG)

つまり,

 \displaystyle{\frac{BD}{CD}: \frac{BG}{CG} =  \frac{CD}{BD}: \frac{CG}{BG}}

よって,

 \displaystyle{ \left(\frac{BD}{CD}: \frac{BG}{CG}\right)^2 =  1}

負の比はここではとらないことにしたので,

 \displaystyle{ \frac{BD}{CD}: 
\frac{BG}{CG} =  1}

ゆえに,

  \displaystyle{\frac{BD}{CD} = \frac{BG}{CG} }

よって  B, D, C, G は調和点列である.//

有名なデザルグの定理.  \triangle ABC \triangle A'B'C' の対応する頂点を結ぶ直線  AA',  BB',  CC'1 O を通るときは, 辺  BC,  B'C' の交点  X, 辺  CA,  C'A' の交点  Y, 辺  AB,  A'B' の交点  Z は同一直線上にある.

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 O(XBDC)=O(XB'D'C)

また,

 O(XBDC)=A(XBDC)
 O(XB'D'C')=A'(XB'D'C')

したがって,

 A(XBDC) = A'(XB'D'C')

 AD A'D' は同一直線上にあるので, ★ ★から  X, Y,  Z は同一直線上にある.//

円周上の任意の 2 X,  X' と円周上の 4 定点 A, B, C,  D をそれぞれ結んだ線束の複比は等しい.

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円周角の性質から  X からと  X' からの線束は合同である.//

※ 円周上の点をつなぐ複比も記号を流用して  X(A, B, C, D) と書くことにする.

次も有名なパスカルの定理.  A, B, C, D, E,  F を同一円周上の 6 点とし, これらの点をこの順序で結んでいくと線分の交点  X, Y, Z は同一直線上にある.

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 Z(FYPE) \\
= C(FYPE) \\
=C(FBDE) \\
= A(FBDE)
 = A(QXDE)\\
=Z(QXDE)

以上から,

 Z(FYPE) = Z(QXDE)

よって,  FQ, YX, PD は同1 Z で交わる.//

 \triangle ABC2 AB,  AC とそれぞれ  E, F で接し, その外接円の弧  BC D で接する円を描き,  EF を結べば,  EF \triangle ABC の内心を通る.

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 O' の中心  O' は,  OD 上にある.  \triangle ODG は二等辺三角形で  \triangle O'DF と相似だから  OG O'F は平行. したがって  OG AC は直交している. したがって  G は弧  AC の中点. 同様に  \triangle ODH は二等辺三角形で  \triangle O'ED と相似であることを確認して,  H は弧  AB の中点であることがわかる. したがって円周角から角  B, C をそれぞれ  GB,  HC が二等分しているので, 交点  I \triangle ABC の内心である. あとは直前のパスカルの定理から,  E, I, F は一直線上にあるので, 題意は成立する.//

パップスの定理. 直線  g 上の 3 点を  A, B, C, 直線  g' 上の三点を  A', B', C' とすれば, 直線  BC',  B'C の交点  P, 直線  CA ',  C'A の交点  Q, 直線  BA ',  B'A の交点  R の三点は同一直線上にある.

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 (BXRA')=A(BXRA') = A(OC'B'A')\\
= C(OC'B'A') =C(BC'PY)= (BC'PY)

したがって,

 (BXRA') = (BC'PY)

また, 直線  BA' BC' B で交わる. 直線  XC' と直線  A'Y は点  Q で交わるので, ★から RP Q で交わる.//