ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (35)

高校の物理で電磁気を少し教えてみてわかったのだが、そもそも一番最初の静電場のところの電場と電位のところでつまずく。そのつまづき方っていうのは、よく解説される近接作用と遠隔作用とかいうようなところではまったくないように感じる。

まずクーロン力の式自体は一見問題なさそうだし計算もできるのだが、プラスとプラス、あるいはマイナスとマイナスでは斥力が働き、プラスとマイナスの組合わせでは引力が働くということを理解していなくて、ただ式に当てはめて力の大きさを計算しているだけということに気がついたときには愕然とした。考えてみれば符号がなんであれ電気量が同じなら力の大きさはどれも同じというのはすごいことだなあと、改めてクーロンの法則を神秘的なものとして眺めたりもした。

それで、プラスとマイナスの違いを念のためしつこく説明することにした。つまり、マイナスの電荷が受ける力  \mathbb{F} はその場所の電場  \mathbb{E} の向きと正反対なんだよということや、 -1[V] の位置にある -1[C] の電荷の位置エネルギーは  1[J] でプラスの電荷の位置エネルギーとは正反対なんだよ、だって電流と電子の流れは反対方向でしょうとかいうことで、ここをクリアしてくれると正直ほっとした気持ちがする。

ガウスの法則は、それほど難儀せずに理解できるようで、こちらも他所から入ったものはみな出ていくでしょうぐらいの説明でお茶を濁せるから少し楽である。

問題なのは、静電気力が保存力だということで、これは静電場でなくても時間変動磁場の影響が無視できると考えられる場合には実用的に前提とされるので、しっかりと理解してもらいたいのだが、結構手間がかかる。その源流はそもそも、力学のところで「仕事」について曖昧にしか理解していない点にあるようである。それで、その官僚性に我ながら辟易しながら、本を上げ下げして、マイナスの仕事はどっちに移動させたときかを質問するとともに、マイナスの仕事とはどういう意味かを考えてもらうようにしている。そうでないと、静電場に限らず、距離だけに依存する中心力の場での仕事が経路によらない (つまり、中心力は保存力で位置エネルギーがある) ということが理解できないだろうと思うからである。