ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

3. ガロア理論 (簡易版)


3-0. 導入

もう、細部の状況は忘れてしまったけれど、 \mathbb{R}[x] の多項式で、 f(x), g(x) が互いに素 (考えている係数の体の範囲で二つの多項式を割る共通の多項式が単元を除いてないということ) であるとき、

 f(x)\rho(x) + g(x)\sigma(x) = 1

となる、多項式 \rho(x), \sigma(x) が存在するというのは、すごく新鮮に感じたことを覚えている。そうか、多項式も整数のように扱えるんだということが、初めて実感として分かったからだと思う。

多項式に剰余系があるんだというのも新鮮だった。

ちょっと京都大学の 2012 年 (エヴァリスト・ガロアは 1811 年 10 月 25 日に生誕) 入試問題をやってみる (ただし、答は見てないので間違えているかも)。

[問い]

(1)  2^{\frac{1}{3}} (23 乗根) が無理数であることを証明せよ。

(2)  P(x) は有理数を係数とする  x の多項式で、

 P(2^{\frac{1}{3}}) = 0

を満たしているとき、P(x)x^3 -2 で割り切れることを証明せよ。


[答 (のつもり)]

(1) 自然数  p, q で、

 2^{\frac{1}{3}} =  \frac{p}{q}

と表わせたと仮定する。そうすると、

 p^3 = 2q^3

となる。すると p は偶数である。したがって、 p_1 を自然数として、

p = 2p_1

とおける。それを上式に入れてみると、なんと q も偶数だとわかる。それで、また同じことをと言われようともものともせず、 q_1 を自然数として、

 q = 2q_1

とおく。その結果、

 p_{1}^3 = 2q_{1}^3

がえられ、

 2^{\frac{1}{3}} =  \frac{p}{q}  = \frac {p_1}{q_1}  \quad (p > p_1, q > q_1)

となる。この手続きは無限に繰り返し可能なはずである。

 2^{\frac{1}{3}} =  \frac{p}{q}  = \frac{p_1}{q_1} = \frac{p_2}{q_2} =\cdots

 (p > p_1 > p_2  > \cdots, q > q_1 > q_2 > \cdots)。

しかし、手続きが無限に繰返し可能であることは、 自然数が最小値をもつという厳然たる摂理に反する。

したがって、いかな自然数  p, q によっても、

 2^{\frac{1}{3}} =  \frac{p}{q}

とは表せない (残念)。//

(2)

(1) の結果より、

 \alpha = 2^{\frac{1}{3}}

は、有理数では表されない。一次多項式  x - \alpha は定数項が有理数ではなく、有理数を係数とする多項式ではない。有理数を係数にもつ多項式  \phi(x)

 \phi(\alpha) =  0

を満たし、次数最小でかつ最高次の  x^k の係数が 1 であるものを「最小多項式」と呼ぶことにする。その場合、問題文中の多項式  P(x) は、 \phi(x) の次数以上の大きさであることが、 \phi(x) の定義から明らかである。そこで、まず、 \phi(x)  P(x) をかならず割り切ることを証明する。

(割り切る証明)

整数のときと同じように多項式についても割り算ができて、

 P(x) = q(x)\phi(x) + r(x)

と書ける。 ただし、 r(x) は余りの多項式であり、その次数は  \phi(x) よりも小さい。

 P(\alpha) = \phi(\alpha) = 0

であることより、

 r(\alpha) = 0

が成立する。ところが、 \phi(x) は、

\phi(\alpha) = 0

となる次数最小のものであった。したがって、矛盾しないためには、

 r(x) = 0

が恒等的に成立することが必要である。以上より、 \phi(x)P(x) を割り切る。//

次に、

 \phi(x) = x^3 - 2

 \alpha の最小多項式であることを証明する。

(最小多項式の証明)

まず、 x^3 - 2 \alpha を代入すれば、0 になることは、実際の計算から明らかである。

 x - \alpha は定数項が有理係数ではなく、最小多項式にならないことはすでに 1) で証明した。次に、2 次式

 \phi(x) = x^2 + ax + b
(ここで、 a, b は有理数)

が最小多項式であると仮定する。そうすると、先ほど証明した結果に基づけば、 \phi(x) x^3 -2 を割り切ることができる。実際に割り算を実行してみると、

 x^3 - 2 \\= (x^2 + ax + b)(x - a ) + (a^2 - b)x + ab - 2 \\= 0

余りの多項式は恒等的に 0 であることから、

 a^2 = b \\
ab  = 2

つまり、

 a^3 = 2

となって、問 (1) の結果から、a が有理数であることと矛盾する。したがって、2 次式は最小多項式とはならない。したがって、3 次の  \phi(x) = x^3 - 2 は最小多項式である。//

以上から、

1)

 \phi(\alpha) = 0

を満たす最小多項式は、

P(\alpha)= 0

となる多項式 P(x) をかならず割り切ること

2)  x^3 -2 は、上記の最小多項式の条件を満たす。

の両方を示したので、 P(x) は、 x^3 - 2 で割り切れる。//

イメージをつけるために、別の例を取りあげる。整数の剰余系を意識して欲しい。

 x^2 -2=0

の根は有理数では表せないので、有理数体では既約 (それ以上、因数分解できないことから、素数を対応させることが重要だ) である。

いま  \sqrt{2} を有理数体に入れて (添加して) 有理数体を拡大したい。

有理数を係数とする次の有理式  f(x)を考える。

 f(x) = \frac{a_0 x^n + \cdots + a_n}{b_0 x^m + \cdots + b_m}

ここで、

 x^2 = 2

 f(x) に代入すると、2 次以上は全部なくなって、1 次以下だけが残るはずである。

 f(x) = \frac{c_0x+c_1}{d_0x + d_1}

分母を有理化して (つまり、分母と分子に d_0x - d_1 をかければ、分母に更に  x^2 = 2 が適用できる)。

 f(x) = k_0 + k_1x

の形となり、

 f(\sqrt{2}) = k_0+ k_1\sqrt{2}

となる。 k_0, k_1 は元の有理数である。

3-1. 極大イデアルの剰余体

「有理数」「実数」「複素数」は、みな「体」を成しているわけだが、「有理数体  \mathbb{Q}」に (すべての)「無理数」を加えれば「実数体  \mathbb{R}」に、それに更に虚数単位  i = \sqrt{-1} を添加すれば「複素数体  \mathbb{C}」 になっている。つまり、集合の関係でみれば、

 \mathbb{Q} \subset \mathbb{R} \subset \mathbb{C}

となっている。このように、基礎となる体  K に、新たな要素を加えた (「添加」という) 集合  L が体になる場合、両者の関係を明示するために、 L/K と書く。体  L を 「拡大体」、  K を「基礎体」と呼ぶ。また、拡大体に添加された要素を明示したい場合、 たとえば、有理数体  \mathbb{Q} \sqrt {2} を添加したとすると、

 \mathbb{Q}(\sqrt{2})

のように書く。さらに、基礎体が  \mathbb{Q} であることを明示すれば

 \mathbb{Q} (\sqrt{2})/ \mathbb{Q}

のようになるわけである。この例のように、要素 1 つだけを添加して拡大した場合、「単純拡大」と呼ぶ。また、

 E \subset K \subset L

のように、二つの体  E, L の中間にある体  K を「中間体」と呼ぶ。

もちろん、代数方程式を解く場合には、基礎体は代数方程式の係数 (よく知られているように根の対称式である) からできており、そこに巾根を添加して体を順次拡大していくわけである。


ここでは、単純拡大体  K(\alpha)/K をとりあげる。基礎体  K (とりあえず有理数で考える) を係数とする多項式を 「 K 多項式」と呼ぶことにし、K(\alpha) に添加される要素  \alpha を根にもつ K 多項式の集合  I を考える。つまり、

 I = \{f(x)| f(x) \in K[x], f(\alpha) = 0\}

という集合である。そして、その集合の中でもっとも次数の小さなモニック多項式  \phi(x) を「最小多項式」と呼ぶことにすれば、3-0 で示したように  \phi(x) I に含まれる多項式を必ず割り切る。また、自分自身は「既約」である。なぜならば、

 \phi(x)= \rho(x)\sigma(x)

に因数分解できたとしたら、

 \phi(\alpha) = \rho(\alpha)\sigma(\alpha) = 0

となり、体は整域なので、

 \rho(\alpha) = 0

または

\sigma(\alpha) = 0

となって、 \phi(x) が次数最小ということに矛盾するからである。以上より、上の集合  I は、

 I = \{g(x)\phi(x)| g(x) \in K[x]\}

と表すことができ、すぐに確認できるように、 I は単項イデアルであり、最小多項式  \phi(x) とはイデアルの生成要素であったことがわかる。

単純拡大体  K(\alpha)/K は、そもそも体だから要素を四則演算したものは、みな同じ体に含まれる。このことから、単純拡大体  K(\alpha)/K の要素は. 基礎体 K の要素を係数とする  \alpha の有理式とみなせる。その有理式がどんな形になるかを調べてみる。有理式であるから、

 h(\alpha)/g(\alpha)

ただし、

 g(\alpha) \neq 0

の形をしている。ここで、 h(\alpha), g(\alpha)K 多項式  h(x), g(x) の変数  x \alpha を代入したものとみなせる。

K 多項式  g(x) と 最小多項式  \phi(x) の最大公約式をもとめると、先ほど証明したように、 \phi(x) は基礎体  K で「既約」だったので、最大公約式は 定数 1 (つまり「互いに素」) であるか、または、最小多項式  \phi(x) と一致するかのどちらかである。最大公約式が  \phi(x) だとすると、

 \phi(\alpha) = 0

だから、

 g(\alpha) = 0

となってしまい、

 g(\alpha) \neq 0

であったことと矛盾する。 したがって、 g(x), \phi(x) は「互いに素」であり、

 g(x)\rho(x) + \phi(x)\sigma(x) = 1

となる K 多項式  \rho (x), \sigma (x) が存在する。

 \phi(\alpha) = 0

から

 g(\alpha)\rho(\alpha) = 1

となる。

※ 整数の合同式で

 ax \equiv 1 \pmod{b}

 x  b が素数であれば必ず求まったことを思い出す。「既約多項式」は「素数」に対応していることにも注意する。//

※ 最小多項式が生成するイデアルは、極大イデアルであり、単項イデアル整域では素イデアルでもある。そのことは、剰余環が体になる ( 0 を除く任意の要素が乗法に関し単元になる) ことと同値である。//

以上の結果から、単純拡大体  K(\alpha)/K の要素である有理式  h(\alpha) / g(\alpha) は、

 h(\alpha)/g(\alpha)=h(\alpha)\rho(\alpha) \\
=q(\alpha)\phi(\alpha) + r(\alpha)  = r(\alpha)

となる。最小多項式  \phi(x) n 次多項式とすると、 r(x) は、 \phi(x) の「余り」であるから、 (n-1) 次以下の多項式である。こうして、拡大体  K (\alpha)/K の任意の要素は、

 c_0 + c_1 \alpha +\cdots +c_{n-1}\alpha^{n-1} \quad (c_i \in K)

の形をしているという著しい結果が示された。

3-2. 線型空間としての拡大体

一般に、拡大体  L/K は、K ベクトル空間と見なせる。ベクトル空間を成すためには、加法については、「加法群」であることが条件だが、 L はそもそも体であるのだから、加法について群を成していることはいうまでもない。また、証明は省略するが、スカラー倍に関する諸条件についても、成立することが容易に確認できる。

 \phi(x) は、

 f(\alpha) = 0

となる K 多項式の最小次数であった。したがって、

 c_0 +c_1 \alpha+\cdots +c_{n-1}\alpha^{n-1} = 0 \quad (c_i \in K)

であることと、

 c_0 = \cdots = c_{n - 1} = 0

は必要十分条件の関係にある。 つまり、拡大体  K(\alpha)/K をベクトル空間としてみれば

 \{1, \alpha,\cdots, \alpha^{n-1}\}

は線形独立であり、空間全体を張るのであるから、基底ベクトルの組となり、その「次元」は  n である。線形代数では次元は  \mathrm{dim} と書くことが多いが、体論の場合は  [L : K] と書き「次元」とは言わず「次数」という。以上より「体次数」 は、最小多項式  \phi(x) の次数と一致する。体次数が有限の拡大体を「有限次拡大体」という。

体が  K \subset L \subset M のように有限拡大するとき、体次数について以下が成立する。

 [M:K] = [M:L][L:K]

(証明)

 L/K, M/L の基底をそれぞれ

\{l_1, \cdots, l_r\}, \{m_1, \cdots, m_s\}

とし、体  M の任意の要素  x は、

 x = \sum_{i=1}^{s}y_im_i \quad (y_i \in L)\\
=\sum_{i=1}^{s}(\sum_{j=1}^{r}z_{ij}l_{j})m_i \quad (z_{ij} \in K)\\
=\sum_{i=1}^{s}\sum_{j=1}^{r}z_{ij}(
l_{j}m_i)

となるが、M の要素  x0 のとき、 m_i は一次独立から、

 \sum_{j=1}^{r}z_{ij}l_{j} =0

となり、 l_j も一次独立だから、

 z_{ij}=0

がでて、 rs 個の  l_{j}m_{i} は一次独立。したがって、

 [M:K] = [M:L][L:K]

が示された。//

※ 要するに  a+b\sqrt{2} と項が表される体に  \sqrt{3} を添加したら

 (a+b\sqrt{2}) + (c+d\sqrt{2})\sqrt{3}

のようになり、一次独立なので

 a+b\sqrt{2}=0, c+d\sqrt{2}=0

で、これも一次独立だから、さらに

 a =b=c=d=0

になるということ。//

たとえば、 Q(\sqrt{2}, \sqrt{3})/Q の体次数を求めるのであれば、まず 有理数体  Q Q(\sqrt{2})/Q に単純拡大し、それから  Q(\sqrt{3})/Q(\sqrt{2}) に単純拡大すると考えればよい。個々の体次数は最小多項式の次数に等しい。

 [Q(\sqrt{2}): Q] = 2
 [Q(\sqrt{3}) : Q(\sqrt{2})] = 2

だから、

[Q(\sqrt{2}, \sqrt{3}):Q] =2\times 2 = 4

であることがわかる。実際、 Q(\sqrt{2}, \sqrt{3}) の基底は、

 \{1,\sqrt{2}, \sqrt{3}, \sqrt{6}\}

で構成できる。

3-3. ガロア拡大のいい加減な導入

それで、体の拡大のさせ方については、ややこしい話があるんだが、そこはどんどん飛ばしてしまうことにする。まず、理解しないといけないのは、ガロア理論が基本適用される拡大体は、最小多項式の根で拡大したときに、最小多項式のすべての共軛な根が拡大した体に含まれていて (最小多項式が拡大した体においては既約ではなく一次式の積に分解されているということで、これを「正規性」と呼ぶ) 、拡大体を線形空間とみたとき、最小多項式のすべての根が L の基底となるようなものである。また重根は持たないとする (これを「分離性」というが「最小」多項式であれば有理数係数のような普通の場合には、これは問題にならないことは最小多項式を形式微分すればわかる)。こういった拡大 (つまり「正規」かつ「分離」拡大) を「ガロア拡大」という。

たとえば、 \mathbb{Q}(\sqrt{2}). は、 -\sqrt{2} も含まれているので、最小多項式  \phi(x)=x^2 - 2 の分解体となり、「ガロア拡大」である。つまり、

 \mathbb{Q}(\sqrt{2}) = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, - \sqrt{2})=\mathbb{Q}(- \sqrt{2})

である。ところが、 \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}) は、1 の原始根  \omega \neq 1 をもたないので、

 \phi(x)=x^3 - 2

の分解体とはならず、ガロア(正規)拡大とはならない。 \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}, \omega) ならガロア拡大である。

3-4. 自己同型写像が作る群

それから道具立てとして、「拡大体」の対称性を測るために、根の置換えを「自己同型写像」として導入し、その写像の組がガロア群を作る。

体の自己同型写像 f とは、いままで定義したものと基本は同じで、体を L/K としたとき、 f: L \to L の写像で、次の条件を満たすものをいう。

1)写像 f は 全単射(上への一対一写像)

2)体  L の加法と乗法に関する群のそれぞれについて演算が保存される。すなわち、任意の  x, y \in L に対して以下が成立する。

 f(x+y)  = f(x) + (y)
 f(xy) = f(x)f(y)

ガロア理論で使う「自己同型写像」は、 L の要素の内、もとの基礎体 K の要素を引き継いた要素に対しては、「値が不変になる」と制限したものである。

つまり、任意の  \alpha \in L に対して、 \alpha \in K でもあるならば、

 f(\alpha)=\alpha

ということである。また、当然

 f(L) = L

である。

それで、これが根の置き換えに相当するものであることは、素直に適用してみれば直ぐにわかる。自己同型写像を  \sigma として、3 -1 の最後の式に適用してみると

 \sigma(c_0 + c_1 \alpha +\cdots +c_{n-1}\alpha^{n-1})\\
= \sigma(c_0) + \sigma(c_1 \alpha) +\cdots + \sigma(c_{n-1}\alpha^{n-1})
 = \sigma(c_0) + \sigma(c_1)\sigma( \alpha) +\cdots + \sigma(c_{n-1})\sigma(\alpha^{n-1})
 = c_0 + c_1\sigma( \alpha) +\cdots +c_{n-1}\sigma(\alpha\alpha\cdots\alpha)\\
= c_0 + c_1\sigma( \alpha) +\cdots +c_{n-1}\sigma(\alpha)^{n-1}

となって、やっぱり根の置換のイメージになる。

※ 最小多項式を  p(x) とすれば

 p(\alpha) = 0

であるが、

 \sigma(p(\alpha))=p(\sigma(\alpha)) =0

でもある。//

この写像の組が写像の合成を演算として群を成すことは、要するに根の置換なんだから証明するまでもない。群  \{1, \sigma_1, \cdots\sigma_{n-1}\} の位数は拡大体  L/K の拡大次数  n、つまり K 最小多項式の次数 (根の数) に等しくなる。この一致こそが、代数的可解性の本質なのである。

基礎体 K を不変にする拡大体 L 上の「自己同型写像」全体の群を \mathrm{Aut} (L/K) と呼んだりする。 \mathrm{Aut } は Automorphism の略。そして、この群をエヴァリスト・ガロアの名前をとって、「ガロア群 \mathrm{Gal} (L/K)」と呼ぶ。

3-5. 拡大次数とガロア群の位数

ガロア拡大体  L/K の拡大次数は、前回示した  L 上の同型写像の群  G=\{\sigma_1, \cdots, \sigma_n\} の位数と等しいという関係を証明する。つまり、

 [L:K] = |G| = n

という関係である。

まず、同型写像がお互い異なっていれば、線形代数の線形独立のときと同じような関係が成立するという、「デデキンドの補題」を証明する。その主張は以下の通りである。

  \sigma_1, \cdots. \sigma_n を二つずつ互いに異なる同型写像とすると、

 c_1\sigma_1(x)+ \cdots + c_n\sigma_n(x)=0 

が成立するならば、

 c_1=\cdots=c_n=0

である」

(証明)

帰納法で証明する。  n = 1 のとき、

 c_1\sigma_1(x) = 0

となるが、 \sigma_1(1) = 1 から、題意は成立する。

 n で成立したとして、

 c_1\sigma_1(x)+ \cdots + c_{n+1}\sigma_{n+1}(x)=0

 x ax を代入してみる。すると、

 c_1\sigma_1(a)\sigma_1(x)+ \cdots + c_{n+1}\sigma_{n+1}(a)\sigma_{n+1}(x)=0

となる。今度は二つ上の式に  \sigma_{n+1}(a) を左からかける。

 c_1\sigma_{n+1}(a)\sigma_1(x)+ \cdots + c_{n+1}\sigma_{n+1}(a)\sigma_{n+1}(x)=0

一つ前でえられた式から今回の式を両辺それぞれについてひくと、

 c_1(\sigma_1(a) - \sigma_{n+1}(a))\sigma_1(x) \\+ \cdots + c_n(\sigma_{n}(a) - \sigma_{n+1}(a) )\sigma_{n}(x) = 0

となる。 n について題意は成立しているから、各係数は 0 であり、しかも同型写像は互いに異なるとしたのだから、

 c_1=\cdots =c_n = 0

となり、したがって、

 c_{n+1} = 0

も成立するので、題意は証明された。//

この補題を使って、まず、

 [L:K] \geq |G| = n

を導く。

(証明)

 [L : K] = r < n

とし、背理法で証明するのだが、直感的にわかるよう  r =2, n =3 でやってみる。

 L K 上のベクトル空間と見なせるので、その基底を  \{\alpha_1, \alpha_2\} 、同型写像の群を   \{\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3\} とする。任意の  L の要素を  x とし、

 c_1 \sigma_1(x) + c_2 \sigma_2(x) + c_3 \sigma_3(x) =0

が成立していれば、上の補題から

 c_1 =c_2=c_3=0

が帰結される。ところが、

 x=x_1\alpha_1+x_2\alpha_2

と基底表示であらわして、それを上の式に代入し、それぞれの基底ベクトルごとに整理してみる。そうすると、基底は線型独立だから、以下のような式が得られる。

 x_1c_1+x_1c_2+x_1c_3=0
 x_2c_1+x_2c_2+x_2c_3=0

これを未知数  c_i についての一次連立方程式と見ると、一次従属解を持つため零ではない解を持つ。この例でいうと、

 c_1+c_2+c_3=0

を満たせばよいのだから、 c_i は零でない解をもつ。したがって矛盾が示せた。これは、明らかに多変数でも成立する (書くのが面倒だし、見る方は余計わからなくなるだけだからやらないけど)。したがって、

 [L:K] \geq |G| = n

が示せた。//

今度は、

 [L:K] \leq |G| = n

を証明する。こちらの証明はなぜかわからないが難しかった。もっと良い証明があるのではないかと思う。

(証明)

 [L : K] = r > n

とし、背理法で証明する。やはり直感的にわかるよう  r =3, n =2 でやってみる。

基底を  \{\alpha_1, \alpha_2, \alpha_3\} とし、同型写像の群を   \{\sigma_1, \sigma_2\} とする。

トリッキーだが、以下のような式を考え、それを変形してみる。

 \{\sigma_1(c_1) + \sigma_2(c_1)\}\alpha_1\\+\{\sigma_1(c_2)+ \sigma_2(c_2)\}\alpha_2\\+\{\sigma_1(c_3) + \sigma_2(c_3)\}\alpha_3
=\{\sigma_1(c_1)\alpha_1+\sigma_1(c_2)\alpha_2 + \sigma_1(c_3)\alpha_3\}\\+\{\sigma_2(c_1)\alpha_1+\sigma_2(c_2)\alpha_2 + \sigma_2(c_3)\alpha_3\}
 =\{c_1\sigma_1(\sigma_1^{-1}(\alpha_1) )+c_2\sigma_1(\sigma_1^{-1}(\alpha_2) ) \\+ c_3\sigma_1(\sigma_1^{-1}(\alpha_3) )\}
+\{c_1\sigma_2(\sigma_2^{-1}(\alpha_1) )+c_2\sigma_2(\sigma_2^{-1}(\alpha_2) )\\+ c_3\sigma_2(\sigma_2^{-1}(\alpha_3) )\}

一番下の式は、添字を適当に付け替えれば、以下の一次連立方程式が満たされると零になる。

\sigma_1(\alpha_1)c_1+\sigma_1(\alpha_2)c_2 + \sigma_1(\alpha_3)c_3=0
\sigma_2(\alpha_1)c_1+\sigma_2(\alpha_2)c_2 + \sigma_2(\alpha_3)c_3=0

この連立方程式の変数を  c_i と見れば、一次従属性から、 c_i は零とはならない値で連立方程式を満たすものが存在する。そのような  c_i を前の長い式に適用すると、式の値は零になるが、そうすると基底の独立性から、

 \sigma_1(c_1) + \sigma_2(c_1)=0

となり、同型写像が一次従属のような関係を持つことになって、これは明らかに矛盾である。したがって、

 [L:K] \leq |G|

となる。//

以上、 [L:K] \geq |G| かつ  [L:K] \leq |G|  から

 [L:K] = |G|

である。

3-6. ガロア対応

ガロアの理論の基本定理は、ガロア拡大体の中間体と、体の自己同型写像を要素とし、写像の合成を演算とするガロア群の部分群が対応するいわゆる「ガロア対応」を保証するものである。


ガロア拡大体  L/K の中間体  \Sigma/K を考える。

 K \subset \Sigma \subset L

ガロア拡大体  L/K にはガロア群  \mathrm{Gal} (L/K) が対応している (根の置換全部に相当する)。ガロア拡大体の中間体  \Sigma/K に対し、ガロア群 \mathrm{Gal} (L/K) の要素である自己同型写像の内、中間体  \Sigma/K の任意の要素を動かさないものを全部集めたガロア群  \mathrm{Gal}(L/K) の部分集合 H がひとつとれる。この部分集合  H は、ガロア群  \mathrm{Gal} (L/K) の部分群である。実際、中間体  \Sigma/K の要素を動かさない自己同型写像を合成しても、やはりその要素は動かないし、群となるべきその他の諸条件も簡単に確認できる。この部分群  H に含まれる同型写像は、中間体  \Sigma/K の任意の要素を不変に保つので、部分群  H は、基礎体を中間体  \Sigma にとったガロア拡大体  L/\Sigma に対応するガロア群  \mathrm{Gal} (L/\Sigma) とみなせる。また、 \mathrm{Gal} (L/\Sigma) に属する任意の写像で動かない拡大体  L/K の要素は、中間体  \Sigma に属する要素であるということが、いままでの議論からわかる。

※ 基礎体  K を不変にするガロア群 の部分群は、 \mathrm{Gal} (L/K) である。体が拡大していくにつれて、対応するガロア群の部分群は反対に縮小していく。つまり、体 が以下のように拡大していくにつれて

 K \subset \Sigma  \subset \Sigma^{\prime} \subset L

対応するガロア群  \mathrm{Gal}(L/K) の部分群は、

 \mathrm{Gal} (L/K) \supset \mathrm{Gal} (L/\Sigma) \\ \supset \mathrm{Gal} (L/\Sigma^{\prime}) \supset \mathrm{Gal} (L/L) = \{e\}

と逆に動いて位数は縮小していく。ガロア群の部分群の位数の大きさは対称性の高さの目安になっていることがわかる。//

この逆は、ガロア群  \mathrm{Gal} (L/K) の任意の部分群  H をとれば、その部分群の写像によって動かないガロア拡大体 L/K の中間体  \Sigma が必ず存在し、その中間体に対応するガロア群  \mathrm{Gal} (L/\Sigma) は部分群  H と一致するいうことである。つまり、この部分群 H と中間体  \Sigma は同型対応である。この最後の部分を証明する。

(証明)

ガロア群 \mathrm{Gal}(L/K) の任意の部分群を H とする。この 部分群 H に含まれる任意の写像によって不変に保たれるガロア拡大体  L/K の要素全体の集合を  \Sigma とする。この集合 \Sigma は体になる。なぜならば、集合  \Sigma の要素  \alpha, \beta が与えられた場合、

 \alpha + \beta, \alpha - \beta, \alpha\beta, \alpha/\beta \quad (\beta \neq 0)

でも不変なことが容易に示されるからである。 この体  \Sigma は、明らかに

 \Sigma \subset L/K

であり、体 K は、基礎体だから

 K \subset \Sigma \subset L

となる。したがって 体  \Sigma は 拡大体 L/K の中間体になる。


中間体 \Sigma を動かさないガロア群 は  \mathrm{Gal} (L/\Sigma) であるから、

 H \subset \mathrm{Gal} (L/\Sigma)

は成立する。したがって、部分群 H の位数と、ガロア群  \mathrm{Gal} (L/\Sigma) の位数の間には、

 |\mathrm{Gal} (L/\Sigma)| \geq |H|

がまず成立する。

 L/K はガロア拡大体であり、そこで分解する最小多項式は  K 上の既約多項式である。中間体  \Sigma は 基礎体  K を含むので、 L/\Sigmaがガロア拡大体であることは自明である。しかし、中間体  \Sigma/K で最小多項式が全部一次式に分解することは保証されていないので、 \Sigma/K がガロア拡大体とは限らない (例えば  \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}) は 2 の虚三乗根を持たないので  \mathbb{Q} 上の既約多項式  x^3-2 をそこで完全には一次式に分解せず、ガロア拡大体ではない)。//

ガロア群  \mathrm{Gal}(L/\Sigma) の位数  |\mathrm{Gal}(L/\Sigma)| は体次数  [L : \Sigma] に等しい。そして、その体次数は、体  \Sigma で既約で、拡大体  L/\Sigma で共軛な根がすべて一次式に分解する最小多項式の次数とも等しかった。

いま、部分群  H の位数 を

 |H| = h

とし、部分群 H に属している  h 個の同型写像を

 \sigma_1,\cdots, \sigma_h

とする。また、拡大体  L /\Sigma を作るために 体  \Sigma に添加された最小多項式の根の一つを  \thetaとする。そして、以下の  h 次の方程式を考える。

 (x - \sigma_1(\theta))(x-\sigma_2(\theta))\cdots(x- \sigma_{h}(\theta)) = 0

ここで、同型写像  \sigma_1, \cdots, \sigma_h のいずれかは単位元=恒等写像でなければいけないので、どれか一つは、 \theta になる。したがって、上式は必ず拡大体  L/\Sigma に添加された要素  \theta を根としてもっている。上記の代数方程式を既約な形に直した場合の方程式の係数は、

 \sigma_1(\theta), \cdots, \sigma_h(\theta)

が等しく出てくる対称式であり、その式を  \sigma_1, \cdots, \sigma_h のどれで変換しても、不変である。したがってガロア群の定義から、これらの係数はみな中間体  \Sigma に属している。そうすると、上式は中間体  \Sigma で既約で、 \theta を根にもつ代数方程式 (多項式) である。 \theta を根にもつ最小多項式 の次数は  L/\Sigma の体次数と等しく、最小多項式は、 \theta を根にもつ  \Sigma で既約な多項式の中で最小次のものである。以上から、

 [L:\Sigma] =  |\mathrm{Gal}(L/\Sigma)| \leq  |H|

であり、したがって 、前の議論とあわせて

 |H| = |\mathrm{Gal}(L/\Sigma)|

が成立し,

 H \subset \mathrm{Gal}(L/\Sigma)

だから、

 H = \mathrm{Gal}(L/\Sigma)

が証明された。//

なお 、

[L:K] = [L: \Sigma][\Sigma :K]

 |\mathrm{Gal}(L/K)| =|H||\mathrm{Gal(L/K)} : H|

が対応していることになる。

3-7. 正規部分群

ガロア拡大体  L/K の中間体  K(\alpha)/K を考えたとき、中間体がガロア (正規) 拡大体であることと、ガロア群の部分群 \mathrm{Gal}(L/K(\alpha)) が正規部分群であることは同値であることを確認する。

(証明)

中間体  K(\alpha) がガロア拡大体だとする。中間体  K(\alpha) の要素を動かさない 部分群

 H = \mathrm{Gal}(L/K(\alpha))

を取る。

 \forall x \in K(\alpha), \rho \in H

について、  K(\alpha)/K がガロア拡大体であることから

 \rho(x) \in K(\alpha)

である。部分群  H の任意の写像  \tau は、 K(\alpha) の要素を動かさないので、

 \tau(\rho(x)) = \rho(x)

が成り立つ。すなわち

 \rho^{-1}(\tau(\rho(x))) = x

なので、

 \rho^{-1}\tau\rho \in H

となる。したがって、

 H =  \mathrm{Gal}(L/K(\alpha))

は正規部分群である。

逆は、部分群  H が正規部分群なので、

 \forall \tau \in \mathrm{Gal}(L/K), \rho \in H, x \in K(\alpha)

について、

 \rho^{-1}\tau\rho \in H

が成立するので、

 \rho^{-1}(\tau(\rho(x))) = x

から、

 \tau(\rho(x)) = \rho(x)

となって、

 \rho(x) \in K(\alpha)

である。任意の x でこの関係が成立するので、中間体はガロア拡大体となる。//

以上から、ガロア群の部分群が正規部分群であることと、中間体がガロア拡大体であることは同値であることがわかった。そこで、 K(\alpha)/K がガロア拡大のときをもう少し調べてみる。

 \mathrm{Gal}(L/K) の任意の写像  \rho による  K(\alpha) の像  \rho(K(\alpha)) は、 K(\alpha)/K がガロア拡大体なのだから、

 \rho(K(\alpha)) \subset K(\alpha)

である。そこで、 \mathrm{Gal}(L/K)の写像  \rho, \tau が、体の添加要素  \alpha を共軛要素  \alpha^{\prime} に動かしたとする。つまり

  \alpha^{\prime} = \rho(\alpha) = \tau(\alpha)

であるが、これから

 \tau^{-1} (\rho (\alpha)) = \tau^{-1} (\tau(\alpha)) = \alpha

なので、写像

 \sigma = \tau^{-1}\rho

は部分群

 H = \mathrm{Gal}(L/K(\alpha))

に属していることになる。また、

 \rho = \tau\sigma

なので、自己同型写像  \rho \tau は両方とも、部分群  H の剰余類  \tau H に属していることがわかる。

逆に、自己同型写像  \rho \tau が、同じ剰余類  \tau H に属しているとすれば、

 \rho = \tau \sigma,  \sigma \in H

とおくことができ、部分群  H の写像  \sigma は中間体の要素の値を変えないのだから

 \rho(\alpha) = \tau\sigma(\alpha) =\tau(\alpha)

となり、部分群  H の同じ剰余類に含まれる写像はすべて、中間体  K(\alpha) の添加要素  \alpha を同一の共役要素へと移すことがわかった。

以上より、ガロア群  \mathrm{Gal} (L/K) の写像  \tau, \rho が 中間体 の 添加要素  \alpha を同一の共役要素  \alpha^{\prime} へと移すことは、ガロア群  \mathrm{Gal}(L/K) の正規部分群  H によって作られる剰余類  \tau H \tau, \rho が両方とも属するということと同値であるという結果がえられた。また、このことから、中間体  K(\alpha) /K の添加要素  \alpha と共軛な要素の数は、剰余類の指数に等しいということもわかる。

今度は、中間体がガロア拡大体でない場合を考えてみる。ガロア群  \mathrm{Gal}(L/K) に属する写像  \tau によって、中間体  K(\alpha)/K の添加要素  \alpha が、 \tau(\alpha) に変わったとし、 \tau(\alpha) はもとの中間体に含まれないとする。そうすると、写像 \tau は、中間体  K(\alpha) / K K(\tau(\alpha)) /K へと移す。この新しい中間体  K(\tau(\alpha)) を変えない写像  \sigma^{\prime} は、ガロア群 の部分群  \mathrm{Gal} (L/K(\tau(\alpha) ) ) に属している。

 \sigma^{\prime}(\tau(\alpha)) = \tau(\alpha)

であるから、

 \tau^{-1} (\sigma^{\prime} (\tau (\alpha))) = \alpha

したがって、写像

  \tau^{-1}\sigma^{\prime}\tau

は、もともとの部分群

 \mathrm{Gal} (L/K(\alpha) )

に属する。

 \sigma = \tau^{-1}\sigma^{\prime}\tau \in  \mathrm{Gal} (L/K(\alpha) )

とおくと、

  \sigma^{\prime} = \tau\sigma\tau^{-1} \in  \mathrm{Gal} (L/K(\tau(\alpha)))

となるので、写像  \sigma^{\prime} は 写像  \sigma と共軛であり、このことから、

 \tau \mathrm{Gal} (L/K(\alpha)) \tau^{-1} = \mathrm{Gal} (L/K(\tau(\alpha)))

であることがわかる。こうして、写像  \tau(\alpha) が、中間体  K(\alpha)/K を別な中間体  K(\tau(\alpha))/K へと移すとき、対応するガロア群の部分群は、 H と共軛な群   \tau H \tau^{-1} であることがわかった。そして、その共軛群がすべて一致する (動かない) ときに正規部分群となるのである。

3-8. 組成列

「組成列」の定義には注意が必要である。

 G の部分群の列を以下のように集合の包含関係で定める。

 G=G_0 \supset G_1 \cdots \supset G_n =\{e\}

において, G_i が「 G_{i-1} の正規部分群」であるとき、この部分群の列を「正規鎖」という。ここで、 G_i G_{i-1} の真部分群 (集合) であってかつ、 G_{i-1} G_{i} の間に,

 G_{i-1} \supset H \supset G_i

を満たす「 G_{i-1} の」正規部分群 H が存在しないとき,このような正規鎖を「組成列」という。

※ ここで注意しないといけない最大のポイントは「正規部分群」はもとの  G=G_0 に対する「正規部分群」ではなく、直前の  G_{i-1} に対する「正規部分群」ということである。両者は必ずしも一致しない。


5 次以下の対称群  S_n の正規部分群の位数がどんな並びになるかを改めて書いておく。

 S_2:
 2 \to 1

 S_3:
 6 \to 3 \to 1

 S_4:
 24 \to 12 \to 4 \to 1

 S_5
 120 \to 60 \to 1

である。交代群  A_5 は 3-9 にある証明と本質的に同じ証明から単純群だし、剰余群の指数が素数のものは、間に部分群は存在しえないが、 S_4 の正規部分群を並べるだけでは「組成列」にはならないことに注意が必要である。位数 4 の群は

 \{1, (1,2)(3,4), (1,3)(2,4), (1,4)(2,3)\}

というクラインの 4 元群と同型の可換群だが、この群は正規部分群、

 \{1, (1,2)(3,4)\}

を持つ。実際、

(1,3)(2,4)(1,2)(3,4)(2,4)(1,3) =(1,2)(3,4)
(1,4)(2,3)(1,2)(3,4)(2,3)(1,4) =(1,2)(3,4)

からすぐに確認できる。しかし、この群は元の  S_4 の正規部分群ではない。

以上から 2 次から 5 次までの組成列を全部書けば、

 S_2 \supset \{1\}

 S_3 \supset A_3 \supset \{1\}

 S_4 \supset A_4 \\ \supset  \{1, (1,2)(3,4), (1,3)(2,4), (1,4)(2,3)\}\\ \supset \{1, (1,2)(3,4)\}\supset \{1\}

 S_5 \supset A_5 \supset \{1\}

対応する位数は、

 S_2:
 2 \to 1

 S_3:
 6 \to 3 \to 1

 S_4:
 24 \to 12 \to 4 \to 2 \to 1

 S_5
 120 \to 60 \to 1

である。

※ 交代群  A_5 は可換群でないことを示す。

(証明)

アーベル群だと仮定する。交代群  A_5 は、長さ 3 の巡回置換を含む。すると

 (1,2,3)(2,3,4)=(1,2)(3,4)
 (2,3,4)(1,2,3)=(1,3)(2,4)

であるから、

 (1,2,3)(2,3,4)\neq (2,3,4)(1,2,3)

となり、アーベル群であることと矛盾する。//

※ ここでジョルダン・ヘルダーの定理をやっておくことにする。ジョルダン・ヘルダーの定理は、定義を確認するだけでもとても繊細な主張がある。また、その証明は美しい。

まず定義だが、日本語の表記だと「正規鎖」になっているが、英語でこれに相当するものには、"subnormal sereise" である。

 G = G_0 \supseteq G_1 \supseteq \cdots \supseteq  G_n = \{e\}

ここで、任意の  i について、 G_{i+1} は、 G_i の正規部分群である (前にも注意したが、 G_0 の正規部分群ではない。この二つは一般には一致しない)。この列を群  G の正規鎖 (subnormal series) と呼ぶ。また  G_i/ G_{i+1} を因子 (factor) と呼ぶ。

それで、これは日本語でどんな言葉が当てられているか知らないのだが、任意の  i について  G_i G=G_0 自身の正規部分群でもあるとき、正規鎖 (subnormal series) を特に normal series と呼ぶ。 G_i = G_{i+1} となるものがない正規鎖は、「非冗長 (irredundunt)」と呼ぶ。

それで、非冗長な正規鎖で、すべての  G_i/G_{i+1} が単純群であるときを G の組成列 (composition series) と呼ぶ。つまり、これ以上、細分できない非冗長な正規鎖のことである。組成列の因子  G_i/G_{i+1} を「組成因子 (composition factor)」と呼ぶ。

ここまで定義を確認した上で、ジョルダン・ヘルダーの定理とは、元の群 Gの正規部分群の列の一意性を言うものではもちろんないし、組成列が一つしかないという間違いを主張するものでもない。それは、群 G をこれ以上細分できない正規鎖として分解していったときに、異なる組成列の組成因子が同型である、つまり、それぞれの組成因子の順番を適当に並べ替えてやれば、組成因子がお互いぴったり一対一に対応するようにできるということである。そういう意味で  G の組成列はみな同型、あるいは等価だというのが、ジョルダン・ヘルダーの定理である。

エレガントと呼ばれる証明には、まず、
Zassenhaus の補題 (図式の形から、butterfly lemma とも呼ばれる) を証明する。

上の蝶の形のハッセ図で、 A, A_1, B, B_1 は、 G の部分集合である。さらに、 A_1 A の正規部分群であり、 B_1 B の正規部分群であるというのが条件である。

線で結ばれているのは、下の群が上の群の正規部分群という意味である。このとき、証明に必要なのは左と右の青い線の組成因子が同型だということで、それを証明するために中央の青い線の部分と同型であることを証明する。

 AA_1 の間を 、B B_1 の間をそれぞれ

 A \supset A_1(A \cap B) \supset A_1(A \cap B_1) \supset A_1
 B \supset B_1(A \cap B) \supset B_1(A_1 \cap B) \supset B

と細分したとき、

 A_1(A \cap B)/A_1(A \cap B_1) 
\\ \simeq  B_1(A \cap B) / B_1(A_1 \cap B)

が欲しい結果である。

次に、Zassenhaus の補題を使って、Schreier の細分定理を証明する。これは、 G の任意の二つの異なる正規鎖から、同型な (等価な) 細分された正規鎖を構成できるというものである。本質的には、Zassenhaus の図のように対称に細分すれば必ず同型が構成できる。

最後にジョルダン・ヘルダーの定理の証明は、 G の任意の二つの組成列は、正規鎖でもあるので、 Schreier の細分定理から同型な正規鎖を構成できるが、組成列はこれ以上細分できないので、もともと同型である。

以上が証明の流れである。証明の詳細は長くなるので、文献、その他をあたって欲しい。//

3-9. 冪根拡大ができる条件

「組成列」の正規部分群の直前の正規部分群との剰余群が「素数位数の巡回群」(つまり単純かつ可換) であることと、巾根拡大できることが必要十分条件であることを示す。ガロア拡大体  \Sigma/K に対応するガロア群が位数  n の巡回群のとき、拡大体  \Sigma

 x^n - A = 0

の根, すなわち巾根によって拡大される。ただし、基礎体 K には 1n 乗根  \zeta をすべて含むものとする。

(証明)

証明は有名な「ラグランジュの分解式」を使って行われる。ガロア群 (巡回群) の生成元を \sigma とする。ここで 拡大体  \Sigma/K の任意の要素 \alpha に対して、写像  L: \Sigma \to \Sigma を次のように定義する。

 L(\alpha) = \alpha+ \zeta\sigma(\alpha) + \cdots +\zeta^{n-1}\sigma(\alpha)^{n-1}

以前証明したデデキンドの補題の対偶をとると、拡大体  \Sigma/K の要素で、

 L(\alpha) \neq 0

となる \alpha が、必ず存在する。ここで  \sigma(L(\alpha)) を計算してみる。

 \sigma(L(\alpha))\\
= \sigma(\alpha) + \zeta\sigma(\alpha)^2 \\ + \cdots + \zeta^{n-2}\sigma(\alpha)^{n-1} + \zeta^{n-1}\alpha
 = \zeta^{-1}\zeta\{\zeta^{n-1}\alpha+ \sigma(\alpha) + \zeta\sigma(\alpha)^2  \\ + \cdots + \zeta^{n-2}\sigma(\alpha)^{n-1}\}
 = \zeta^{-1} \{\alpha + \zeta\sigma(\alpha) + \cdots +\zeta^{n-1}\sigma(\alpha)^{n-1}\}\\
= \zeta^{-1}L(\alpha)

したがって、

\sigma(L(\alpha)^n) = \sigma(L(\alpha))^n = \zeta^{-n}L(\alpha)^n = L(\alpha)^n

となるから、ラグランジュ分解式 L(\alpha)^n は、ガロア群の写像  \sigma で不変であり、ということはガロア群 (巡回群) に属するすべての写像でも動かない。これと

 L(\alpha) \neq 0

から、

 L(\alpha)^n = A  \quad (A \neq 0)

となる  A が必ず 基礎体 K にも存在することになる。

 L(\alpha) は、

 x^n - A = 0

の根である。しかも、ガロア群に含まれる任意の写像  \sigma^m L(\alpha) を変換すると

 \sigma(L(\alpha))^m = \zeta^{- m}L(\alpha)

となり、ガロア群に属する写像は、恒等写像を除いて  L(\alpha) を変える。したがって

 x^n - A = 0

の根である  L(\alpha) は基礎体  K には属しておらず、ガロア拡大体  \Sigma/K に添加された拡大要素となっている。//

逆に、

 x ^n - A =  0   \quad (A \neq 0)

1 つの根を決めて  \alpha (基礎体には含まれていない) とし、基礎体に含まれている 1n 乗根を  \zeta \neq 1 として、以下のようにとる。

 \alpha, \zeta\alpha, \zeta^2\alpha, \cdots, \zeta^{n-1}\alpha

そうすると、上の根による拡大、

K(\alpha)/K,  K(\zeta\alpha)/K, \cdots, K(\zeta^{n-1}\alpha)/K

は、みな同じ体として一致する。

方程式の 1 つの根 \alpha\zeta^r\alpha に移す自己同型写像が群を成すことが簡単にわかる。したがって、この自己同型写像が作る群は、

 \{1, \zeta,\zeta^2, \cdots,\zeta^{n-1}\}

という 1 つの要素  \zeta が生成する巡回群と同型である。したがって、 x^n - A = 0 の根を添加した拡大体のガロア群は、位数  n の巡回群である。

3-10. 付録

5 次以上の対称群の正規部分群は (自明なものを除けば) 交代群だけである」を証明しておく。群が自分自身と、\{e\} 以外の自明でない正規部分群をもたない群を「単純群」というのだった。 n \geq 5 のとき、交代群 A_n は単純群である。なお、交代群 A_5 はアーベル群ではない最小の単純群であることが知られている。//


n3 以上の場合に、すべての置換は、

 (1, 2), (1, 3),\cdots, (1, n)

の互換の積であらわすことができる」

(証明)

任意の互換  (j, k) は、一番最初に説明した「共軛変換」を使って、

 (j, k) = (1, j)(1, k)(1, j)

と書ける。すべての置換は互換の積でかけるのだから、任意の互換は上記のように書ける。//

「また、すべての置換は、

 (1, 2), (2, 3),\cdots, (n-1, n)

の互換の積として書ける」

(証明)

同じように「共軛変換」を使って、

 (1, 3) = (2, 3)(1, 2)(2, 3)

 (1, 4) \\
= (3, 4)(1, 3)(3,4)\\
= (3, 4)(2, 3)(1, 2)(2, 3)(3, 4)

 (1, 5) \\
= (4, 5)(1, 4)(4, 5)\\
=(4, 5)(3, 4)(2, 3)(1, 2)\\(2, 3)(3, 4) (4, 5)

これを繰り返せばよい。任意の置換は (1, j) の積として表せたから証明された。//

共軛変換をつかって、

 (2, 3) = (1, 2, 3)(1, 2)(1, 3, 2)

だが、本質的なことは、12, 23 に変更されることだけである。したがって、次のように書いても結果は同じである、

 (2, 3) \\
= (1, 2, 3, 4)(1, 2)(1, 4, 3,  2)\\
= (1, 2, 3, 4, 5)(1, 2)(1, 5, 4, 3, 2)\\
=  (1, 2, 3,\cdots, n)(1, 2)(1, n,\cdots, 2)

同様に、

 (3, 4) \\
= (2, 3, 4)(2, 3)(2, 4, 3)\\
= (1, 2, 3, 4)(2, 3)(1, 4, 3, 2)
= (1, 2, 3, \cdots, n)(2, 3)(1, n, \cdots,2)\\
= (1, 2, 3, \cdots, n)(1, 2, 3, \cdots,n)\\(1, 2)(1, n, \cdots, 2)(1, n, \cdots, 2) 

※ 上の結果を代入した。

 (4, 5)\\
= (3, 4, 5)(3, 4)(3, 5, 4)\\
= (1, 2, \cdots, n)(3, 4)(1, n, \cdots, 2)\\
= (1, 2, \cdots, n)(1, 2, \cdots, n)(1, 2,\cdots,n) \\ (1, 2)(1, n, \cdots, 2)(1, n, \cdots, 2)(1, n, \cdots, 2)

以下、同様である。すべての置換は、

 (1, 2), (2, 3), \cdots, (n-1, n)

 n-1 種類の互換を使った積で表すことができることを証明している。したがって、すべての置換は巡回置換  (1, 2, \cdots, n) とその逆置換、それから  (1, 2) をつかって表されることもわかった。

「任意の偶置換は、
(1, 2, 3), \cdots , (1, 2, n) によって表すことができる」

(証明)

 (i,  j, k)\\
= (i, k)(i, j)\\
= (1, i)(1, k)(1, i)(1, i)(1, j)(1, i)\\
= (1, i)(1, k)(1, j)(1, i)\\
= (1, k, i)(1,  i,  j)

となるので、長さ 3 の任意の巡回置換  (i, j, k) は 長さ 3 の巡回置換  (1, i, j) の積であらわすことができる。そこで、上の変数 j に 数字 2 を代入すると

 (i, 2, k) = (1, k, i)(1, i, 2)

 (1, k, i) \\= (i, 2, k)(1, i, 2)^{-1} \\= (i, 2, k)(1, 2, i)

ki, ij に読み替えると

 (1, i, j)\\
= (j, 2, i)(1, 2, j)\\
= (2, i, j)(1, 2, j)\\
= (2, j)(2, i)(1, 2, j)
 = (1, j)(1, 2)(1, j)(2,  i)(1, 2, j)\\
= (1, 2, j)(1, j)(2, i)(1, 2, j)\\
= (1, 2, j)(2, 1)(2, j)(2, 1)(2, i)(1, 2, j)\\
= (1, 2, j)(1, 2, j)(1, 2, i)(1, 2, j)

以上より、長さ 3 の巡回置換 (1, i, j) は 長さ 3 の巡回置換 (1, 2, i) の積で表される。したがって、任意の長さ 3 の巡回置換 (i, j, k) は、長さ 3 の巡回置換 (1, 2, i) の積で表される。//

置換は偶置換か奇置換かのどちらかに必ず決まるが、今度は、「どんな偶置換も、長さ 3 の巡回置換だけの積で表すことができる」ことを証明する。ただし、置換の対象となる数字の数 は  n \geq 3 とする。

(証明)

まず、隣あう互換のペアは長さ 3 の巡回置換の積で常に表されることを示す。ただし、

 (i, j)(i, j) = e

は考える必要がない。そうすると、

1) 互換のペアが数字を共有しない場合,
2) 一つの数字だけを共有する場合

の2通りについて考えればよいことがわかる。

1) 互換のペアが数字を共有しない場合

(i, j)(a, b)  \\
= (a, i)(a, j)(a, i)(a, b) \\
= (a, j, i)(a, b, i)

となって、長さ 3 の巡回置換の積であらわされる。

2) 互換のペアが 1 つの数字を共有する場合

 (i, j)(i, a) = (i, a, j)

以上より、偶置換は長さ 3 の巡回置換の積で表すことができる。//

次に、「 n \geq 5 の場合、長さ 3 の巡回置換は、長さ 5 の巡回置換であらわせる」ことを証明する。

(証明)

恒等 (単位) 置換を e とすると、

 (i, j, k)(i, j, k)(i, j, k) = e

だから、

 (i, j, k) = (i, k, j)(i, k, j)

共軛変換より、

 (i, k, j) = (i, l, m)(m, k, j)(i, m, l)

したがって、

(i, j, k) \\
= (i, l, m)(m, k, j)(i, m, l)(i, l, m)\\(m, k, j)(i, m, l)
 = (i, l, m)(m, k, j)(m, k, j)(i, m, l)\\
= (m, l)(m, i)(m, j)(m,k)(m, j)\\(m, k)(m, i)(m, l)\\
= (m, k, j, i, l)(m, l, i, k, j)\\
= (i, l, m, k, j)(i, k, j, m, l)

 i = 1, j=2, k = 3, l = 4, m = 5 とすれば、

 (1, 2, 3) \\= (1, 4, 5, 3, 2)(1, 3, 2, 5, 4)

がその一つの例である。//

5 次以上の対称群 の正規部分群は 自分自身と\{e\} 以外は交代群しかない」とことを証明する。

(証明)

A) まず、対称群 S_n \{e\} とは異なる正規部分群  N があるとした場合、その正規部分群  N が長さ 3 の巡回置換を含めば、正規部分群  N は 対称群  S_n 自身か交代群  A_n のどちらかあることを証明する。

正規部分群  N に長さ 3 のある巡回置換  (i, j, k) が含まれるとする。以下のような対称群  S_n の要素 \sigma \in S_n を考える。

 \sigma = (1, i)(2, j)(3, k)

この  \sigma で正規部分群 N に含まれる先程の長さ 3 の巡回置換 (i, j, k) を共軛変換すると、

 (1, i)(2, j)(3, k)(i, j, k)(3, k)(2, j)(1, i) \\= (1, 2, 3)

となる。 共軛な要素はまた正規部分群 N に含まれる必要があるのだった。したがって

 (1, 2, 3) \in N

この正規部分群 N に含まれる(1, 2, 3) をさらに

 \tau = (3, p) \in S_n

で共軛変換すると

 (3, p)(1, 2, 3)(p,  3) = (1, 2, p)

よって、正規部分群 N には (1, 2, 3), \cdots, (1, 2, n) がみな含まれることになる。すでに証明したように、交代群 A_n に含まれる任意の偶置換は、長さ 3 の巡回置換の積であらわすことが可能で、更にその長さ 3 の任意の巡回置換は、長さ 3 の巡回置換  (1, 2, i) の積として表すことができる。したがって、すべての偶置換が、正規部分群 N に含まれることになる。つまり、交代群  A_n は、正規部分群 N に含まれている。ということは、正規部分群  N は、交代群 A_n と一致するかそれより大きな位数の正規部分群である。交代群 A_n の位数(要素の数)は、 n!/2 である。したがって、指数 2 であり、「ラグランジュの定理」によって、交代群より大きな部分群は S_n 自身しかない。したがって正規部分群  N は、交代群であるか、対称群 S_n 自身のどちらかであると結論できる。

B) 上の事実を利用して、 5 次以上の対称群 S_n で、対称群 S_n 自身と 単位群  \{e\} を除く正規部分群は交代群  A_n だけであることを以下に証明する。

(証明)

再び 5 次以上の対称群 S_n\{e\} を除いた任意の正規部分群を N とする。\sigma は正規部分群 N に含まれる任意の置換で、 単位元 e ではないとする。この置換  \sigma を互いに共通の数字をもたない置換の積 (したがって置換は交換できる) へ分解したとき、次の 2 通りのどちらかである。

1)  \sigma は長さ 2 より大きい巡回置換をもつ

2)  \sigma は互いに共通の数字をもたない長さ 2 の互換の積であらわされる

そうすると、上の 1) の場合、積が交換可能であることに注意すれば、置換  \sigma m > 2 として

 \sigma = (1, 2,\cdots, m)\sigma^{\prime}

とおくことができる。

そうすると、

 (1, 2, \cdots, m) = \sigma\sigma^{\prime-1}

もし、正規部分群 N が長さ 3 の巡回置換 (1, 2, m) を含んでいれば、先ほど証明したことから、正規部分群  N は交代群 A_n か対称群 S_n 自身である。そこで、正規部分群 N に長さ 3 の巡回置換 (1, 2, m) が含まれるかを逆算してみると

 (1, 2, m)\\
= (1, m)(1, 2)\\
= (m, \cdots, 1)(2, 1)(1, \cdots, m)(1, 2)
=(\sigma\sigma^{\prime-1})^{-1}(1, 2)\sigma\sigma^{\prime-1}(1, 2)\\
= \sigma^{\prime}\sigma^{-1}(1, 2)\sigma\sigma^{\prime-1}(1, 2)

ここで、置換 \sigma^{\prime} と、置換 (1,2,\cdots, m) は、共通の数字をもたないと定めた。したがって 交換できる。よって

 (1, 2, m) \\= 
\sigma^{\prime}\sigma^{-1}(1, 2)\sigma(1, 2)\sigma^{\prime-1}

上の式の右辺の (1, 2)\sigma(1 2) は、置換  \sigma を 互換  (1, 2) で置換した共軛である。 互換 (1, 2) は対称群 S_n に含まれており、N は正規部分群なので、

 (1, 2)\sigma(1 , 2) \in N

また、正規部分群 N のどの要素も自分自身に逆元をもつから

 \sigma^{-1} \in N

したがって、

 \sigma^{-1}(1, 2)\sigma(1, 2) \in N

それを 置換  \sigma^{\prime} で変換したものも、また正規部分群 N の元である、したがって、

 (1, 2, m) \in N

が証明できた。以上、正規部分群 N は長さ 3 の巡回置換 (1, 2, m) を含んでいることと、先ほど証明した事実から、1) の場合、正規部分群 N は交代群 A_n か対称群 S_n 自身でしかありえない。

次は 2) のケースであるが、これから証明するとわかるが、 n \geq 5 の条件が活きてくることに注意して欲しい。なお、記号が煩雑なので互いに共通文字を含まない互換を

 (1, 2)(3, 4) \in N とする。

一般化したいなら、1, 2, 3, 4 を他の数字に読み替えればよい。

これも逆から計算した方が早いので、

 (1, 2, 3) \in N かどうか試してみる。

 (1, 2, 3) = (1, 3)(1, 2)

ここで注目したいのが、 n \geq 5 なので、上の互換 (1, 3) とも、互換 (1, 2) とも共通の数字をもたない (4, 5) という互換を想定することができる点である。そうすると、

(1, 2, 3) \\= (1, 3)(4, 5)(4, 5)(1, 2)

上の式で、互換の積 (1, 3)(4, 5) と互換の積 (4, 5)(1, 2) は、その形から互換の積 (1, 2)(3, 4) に共軛のはずである。 n5 未満の場合はこんな分解はできず、5 以上の場合とは、大きな違いがある。実際に (1, 3)(4, 5)(4, 5)(1, 2)(1, 2)(3, 4) と共軛であることを示してみる。

(1, 3)(4, 5) \\=(2, 3, 4, 5)(1, 2)(3, 4)(2, 5, 4, 3)

となり、 (1, 3)(4, 5) \in N となる。 (4, 5)(1, 2) についても全く同様に

(4, 5)(1, 2) \\= (1, 4, 2, 5, 3)(1, 2)(3, 4)(1, 3, 5, 2, 4)

となり、 (4, 5)(1, 2) \in N となる。

(1, 2, 3) = (1, 3)(4, 5)(4, 5)(1, 2)

だったから、

 (1, 2, 3) \in N

したがって、正規部分群 N は長さ 3 の巡回置換を含むから先ほど証明したことより、正規部分群 N は交代群 A_n か対称群 S_n 自身である。

以上、場合 1) と 2) とも \{e\} 以外の正規部分群 N は長さ 3 の巡回置換を自身に必ず含むので、5 次以上の対称群 S_n の正規部分群は、交代群 A_n か対称群 S_n 自身しか存在しないことが証明された。//


4 次の対称群  S_4 の位数は、 4! = 2^3\times 3 であり、約数の個数は、 (3+1)\times(1+1) = 8 である。正規部分群は、約数 1 (単位群) 、約数 4 ( \{1, (1,2)(3,4), (1,3)(2,4), (1,4)(2,3)\} ) 、約数 12 (交代群)、約数 24 (自分自身) に存在する。

3 次の対称群  S_3 の位数は、 3! = 2 \times 3 で、約数の個数は 4 個。正規分群は約数 1 (単位群)、約数 3 (交代群)、約数 6 (自分自身)である。

なお、5 次の対称群の位数は  5! = 2^3\times3\times5 で、約数は  4 \times 2 \times 2 =16 個。正規部分群は、約数  1, 60, 120 のみ。シローの定理により、位数 8 の部分群、位数 3 の部分群、位数 5 の部分群は少なくとも一つ必ず存在する。

代数的構造 (ちくま学芸文庫)

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