資本主義としてのハリウッド映画

2007 年くらいにトルコ出身の経済学者、ダニ・ロドリック教授が提唱した 「国際政治のトリレンマ」というのは、新自由主義の歪みが顕在化し始めた頃から、しばしばその説明概念として引用されている。トリレンマというのは、「グローバル化、国家、民主主義」の三つに関する目標は同時にはすべて達成できず、少なくとも一つは犠牲にされたり、不十分になってしまうということである。例えば、現在の中国なんかは、わかりやすく「民主主義」が問題である。戦前の日本だって「大東亜共栄圏」を一応「グローバル化」と考えれば、明らかに「民主主義」は達成できていない。戦後初期の日本は GHQ の占領政策で労働組合が許され、「戦後民主主義」の時代であり、フォーディズムとケインズ施策の両輪で高度成長を始めたが、当時はブレトン・ウッズ協定があって、資本の自由な国際移動には制約があった。

1930 年代のハリウッド映画が 1929 年の大恐慌から復活できたのは、民主党のフランクリン・D・ルーズヴェルトのニューディール政策とスタジオ・システムが上手く歩調を合わせたからである。おまけに、ナチズムによってドイツから追われた多数の映画人がやってきたのを初め、当時のロサンゼルスは歴史上類をほとんどみない進歩的文化人が集結したコスモポリタン都市であった。そのハリウッドも東西の冷戦という国家対立からくる「赤狩り」で大きな打撃を受けてしまう。この辺りの事情は蓮實さんの『ハリウッド映画史講義』に詳しい。

ということで、「国鉄」に関する動画をいくつか見た。この動画の頃、フォーディズム=ケインズ的な資本主義は危機に陥り、やがて規制緩和、民営化などの新自由主義が主流になっていく。中曽根政権が国鉄分割民営化と国労を解体するのは 1987 年である。