通勤電車の中で、学生さんがすごく熱心に本を読んでいるので、いったい何を読んでいるのだろうと思ったら、ベストセラーになった『ファクトフルネス』である。これだけフェイク・ニュースやネガティブ・ニュースやヘイト記事や歴史修正記事が世の中に溢れていると、確かにこういう本は意味がある。この本も、この本で紹介されている
のサイトも大変面白かった。バングラデシュに微力ながら関係している自分としては、多くの人が読んでくれて、アジアやアフリカの低~中所得国に対して偏らない認識をもっともってくれると嬉しいなあと思った。
いままで気づかなかった事実や視点がたくさんあった。以下はその一部の例である。
・1960 年頃の世界人口統計の急激な落ち込みは、毛沢東指導下の中国の「大躍進政策」による餓死者によるものだということ。一説では 1 億人近くも餓死したんだから、考えてみれば、グラフにはっきりと出て当然なんだけれど、全然結びつかなかった。
・子供 (12 歳) の虫歯の罹患は、所得レベル 2 から 3 に入ったところでピークがあらわれる。甘いものを買う余裕と虫歯の予防に関する教育が受けられるか受けられないかでそうなるらしい。
・子供の生存率が伸びている原因を調べると、「母親が読み書きできる」という要因が、上昇率の約半分に寄与している。
・バングラデシュが洪水を監視するためのシステムをもっていて、ウェブサイトで洪水の状況がいつでも確認できること-- まったく知らなかった!
・ネバールの地震発生後の 10 日間で、9,000 人の子供が汚染水による下痢で亡くなったこと。
・ベトナムは中国と 2,000 年以上戦争していた。米国との「ベトナム戦争」しか、たしかに連想しないなあ。
・豚インフルエンザによる死亡は、結核による死亡にくらべて 8 万 2,000 倍の頻度でメディアに記事が出現した。
・女性ひとりあたりの子供の数が減っているために、生理用品のレベル 2 とレベル 3 の市場は爆発的に拡大した。
・歯ブラシは、所得レベル 1 では指か棒を使う。レベル 2 になるとブラスティックの歯ブラシ 1 本を家族で共有する。レベル 3 で、家族それぞれ 1 本ずつになる。
・レベル 2 の家庭は 1 年中毎日毎食、ほとんど同じものを食べ続ける。
・宗教と女性ひとりあたりの子供の数にはそれほど関連はない。
・スウェーデンは 1965 年まで中絶が違法だった。
・パブリックの病院の壁とかがボロボロなのは、診療に時間がかかる富裕層を寄せつけないためというのは面白い視点だが本当かどうかは不明。
※ なお、バングラデシュの独立は 1971 年で 1940 年代までにしばしば発生した大飢饉は正確にはイギリス領時代。ベンガル地域出身でアジア最初のノーベル経済学賞をもらった *1アマルティア・センが書いているように、飢饉は米が十分あったにもかかわらず、市場の失敗によってもたらされた。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
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*1:アジア最初のノーベル賞は 1913 年で、やはりベンガル地域出身のラビンドラナート・タゴール。