ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

yet と still

"My Funny Valentine" の歌詞を取りあげてみる。

You're my funny valentine,
Sweet comic valentine,
You make me smile with my heart.
Your looks are laughable, un-photographable,
Yet, you're my favorite work of art.
Is your figure less than Greek?
Is your mouth a little weak?
When you open it to speak, are you smart?
But, don't change a hair for me.
Not if you care for me.
Stay little valentine, stay!
Each day is Valentine's Day

とても、わかりやすい歌詞であるし、Chet Baker はとてもゆっくりと歌いあげているので、これくらい英語学習に向いた素材はなくほとんど奇跡なのではと思うのであるがどうだろうか?たとえば、これで L と R の発音の違いが認識できなければ他では絶対に無理だろう。それに、発音以外にも教師が偉そうに説明すべきポイントが豊富である。たとえば、

1. "valentine" が普通名詞になっている
この相手は Valentine という名前ではないってことである。valentine も 前回出てきた人としての love と同じ使い方である。

2. with my heart の副詞的な使い方

3. 名詞の a look と looks の使いわけ

4. Don't change hair ではなく、Don't change a hair と言っている点に注意する。

5. 歌詞にある Yet は Still とどう違うか?
これは、うまく説明できないんだけれど、still だと想定はそのまま残っているという感じがする。つまり、 

Your looks are laughable, un-photographable,

であるという想定は「維持」されたまま、過去も今もずっと

you're my favorite work of art.

と言っている感じがする。Yet だと、

Your looks are laughable, un-photographable,

であるという想定を「裏切って」

you're my favorite work of art.

と言っている感じがする。つまり、実際のところは、”Your looks are laughable, un-photographable,” ではないという含みがある。口に出した以上、大して違わないという意見もあろうが、still と yet は個人的には結構違うと思っていて、言われた方はやはり yet の方が嬉しいんではなかろうか。yet は「現在の事実」は「想定」とは違う (反対だ)という意味合いをコノテーションとして有していると思う。

He’s here yet!

(えー嘘、) まだ居る!

であろうか。ただ、この場合の接続詞 but のような使い方は本来 yet であるにも関わらず、だんだん still も使われるようになったというだけのことかもしれない。

※ オバマ元大統領の演説に

 We know in our hearts that for the United States of America, the best is yet to come.

というのがあったが、The best is to come は当然だと思われる想定。しかし現在はその想定が実現されていないことを示す。→ まだ最良の時は来ていない。”He’s here yet.” は “He’s here.” が現在の事実で、想定はその逆。

It is the largest diamond yet found. 

は、現在の事実としては、発見された最大のダイヤであり、想定としては将来は最大ではないことから、「現在のところ」という訳が当てられる。最上級につける yet の他に ever もよくみるが、こちらの方は今後もこれ以上のものはないだろうというニュアンスになる。

Have you done homework yet?

は「終わった」という事実を確認しているので、想定は「終わっていない」である。already の使い方もなかなか難しいが、基本は「想定よりも事実の方が早い」という意味である。

Have you done homework already?

は「え、もう終わったの?」という感じである。

※ ところで、

Get (Wake) up already!

は、堪忍袋の緒が切れるよりも前に起きろということ。//

応用として、以下の例文をあげる。

A: He isn't up already, is he?
B: Yes, he is.
A: Oh, I didn't think he was up yet.
B: Well, he is.

最初は「彼がもう起きてるなんてなしよね」と言っていて(He is up already. なんてないと言うこと)、それに対して「起きてるよ」と言っており、「あら、もう起きてるなんて思っていなかった」から「それが起きてるのよ」みたいな会話になっている。

※ 上の説明の例文(訳は大袈裟にしている): 

I can see him yet.

「良かった、まだ会える」

I can still see him.

「まだ会える」

There’s plenty of time yet.

「あれ、 まだたっぷり時間がある」

There’s plenty of time still.

「まだたっぷり時間がある」

He’s here already.

「もう来てるなんて早いね」

I can't see you already.

「こんなにすぐにもう会えなくなるなんて」

I can't see you anymore.

「これからは、もう会えない」

He's not nervous already, is he?

「もういらいらしているなんて、ありえないよね?」

He hasn't left home already, has he?

「こんなに早くでかけるなんて、ありえないよね?」

Have you already seen him?

「会う会うとは思っていたけど もう会ったんだ?」

Have you seen him yet?

「会ってるなんて思っていなかったけど、もう会ったんだ?」

Hasn't she arrived yet?

「着いたと思ってたのに、着いていないの?」
※ 否定疑問文は相手にyesの回答を期待している。つまり想定は「着いた」。 

Hasn't the bus left already?

「こんなに早くバスが出るなんてありえないよね?」
※ not already の not が「ありえない」ような反語表現になるのは否定疑問文のようなコンテクストだからである。下の例を見てほしい。 

It’s time to wake up Tom if he isn’t up already.

この例だと、「トムが想定よりも早く起きていないならば」→ 「想定の時間になってもまだ寝ているならば」ということを言っているに過ぎない。

———
英語のリスニングについては、人に説明できるほど得意なわけでもないが、Chet Baker が歌っているものなど、非常にゆっくりで、どうやって発音しているかが、まるで手にとるようにわかる。今回改めて認識したのは、 二重母音は、母音の「わたり音」であるということである。 つまり「始まりの音」が大事でもなく、「終わりの音」 が大事でもない。「始まり」から「終わり」に向かって連続して常 に動いている感じである。日本人が苦手とされる " L" なんかも、その音だけを独立に聴こうとしてはだめで、その前後 (連続的な意味で捉えて欲しい) の母音がどんな影響を受けているか (たとえば高くなる、純粋に母音として聞こえている時間は短くなる) とか、子音の後で "L" 自体 がまるで母音のように響く感じとか息が押される感じとかをつかむ方が余程大事だと思う。