疲れたので簡単に。
『コンチネンタル』(1934) の「夜も昼も」のシーンはいったい何度見たかわからない。
何度見ても思うことは同じであって、映画が最大に動くのは静から動へ移行する「はざま」にあるということだ。このシーンでいうと、確かに素晴らしいと感心はするものの人が褒め称えるほどアステアとロジャースがダンスをしているところに心惹かれるわけではない。映画そのものが最大に動くのはダンスがまさに始まるところである。それは、ロジャースがだんだんアステアに心許してゆく間ということになるだろうが、映画の画面に「心許していく」といった心理が直接見えている訳では決してない。それがどんな表現なのかを具体的に確認すること。それこそが「映画を見る」ことなんだと思う。
人物の配置のさせ方、誰にキャメラの焦点を合わせているか、ロジャースが肩で息をしているところ、その表情、振り向く様、背中を示すことで観客が想像してしまうこと、アステアを見つめる様、背景の波、繊細な照明、あちこちに歩いて行こうとするロジャースを示す短いショットの積み重ねはとりわけ素晴らしい。そしてターンの瞬間。『バンド・ワゴン』(1953) の “Dancing in the Dark” でもそうであったが、ミュージカル映画では気持ちが高まってどうしようもなくなるといきなり登場人物はターンをするのだということを知るのだ。
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