アケボノアセビ (ベニバナアセビ) 。自生種の中にも紅がかったものがあるので、園芸品種とは言いきれないのではないかと思う。堀辰雄の『大和路・信濃路』にも、
突然、妻がいった。
「なんだか、ここの馬酔木と、浄瑠璃寺にあったのとは、すこしちがうんじゃない? ここのは、こんなに真っ白だけれど、あそこのはもっと房が大きくて、うっすらと紅味を帯びていたわ。……」
「そうかなあ。僕にはおんなじにしか見えないが……」僕はすこし面倒くさそうに、妻が手ぐりよせているその一枝へ目をやっていたが、「そういえば、すこうし……」
とある。
『大和路・信濃路』に出てくる万葉集、大伯皇女 (おおくのひめみこ) の挽歌。
礒之於尓 生流馬酔木乎 手折目杼 令視倍吉君之 在常不言尓
磯の上に、生 (を) ふる馬酔木を、手 (た) 折らめど、見すべき君が、在りと言はなくに
陶芸家のところで、野草が植えてある庭に日が射すよう、木の枝打ちと熊笹の刈込みを手伝った。帰りにフキノトウを貰ったので天ぷらにして食べた。