1964 年 2 月 1 日にビートルズの “I Want to Hold Your Hand” が全米ビルボードで一位になった後の一時期をいわゆる “British Invasion” と言うわけだが、もちろん、ビートルズの音楽はアメリカのポピュラー音楽の変化を加速させはしたものの、アメリカのポピュラー音楽自体は それとは無関係に 50 年代あたりから大きな変曲点を迎えていたわけで、そんなのは常識だと思うのだが、この時期のポピュラー音楽が変曲点を迎えたのはビートルズの影響だと思っている人も大勢いるらしく、2015 年には、わざわざデータ・サイエンスの手法でそうではないことを解析した論文まであらわれている。
もっとも、個人的には、1960 年以降のもっとも大きな変曲点は 90 年代初期のヒップホップが隆盛した時期にあると主張するこの論文を非常に疑わしいと思っており、その最大の理由は、そもそも 1960 年代初期の変化を見るのに、それより前の年代のポピュラー音楽がデータに充分含まれておらず、研究者たちがきちんと自分でも聞いているといった節もないことで、そのような杜撰さで、1960 年代のポピュラー音楽の変化がヒップホップが及ぼした変化よりも小さいなどと主張しても駄目でしょうと思う。
閑話休題。Gladiolas で Little Darlin’ をヒットさせた天才児 Maurice Williams が 15 才のときに午後 10 時に家に帰らないといけないというデートの相手を説得しようとして失敗したことからインスピレーションを得て作ったというのがこの “Stay” という曲。わずか 1 分 36 秒という曲の簡潔さから、米国のヒットチャート史上、最短の長さの曲といわれている。断言してもいいが、1959 年に録音された曲だが、1964 年の “I Want to Hold Your Hand” よりも遥かに素晴らしい。
1959:
Maurice Williams and the Zodiacs:
1963:
The Hollies:
The Four Seasons:
1964:
The Dave Clark Five:
1968:
Jan and Dean: