このないしかへりまいりて此よしをそう
す御門きこしめしておほくの人ころ
しける心そかしとのたまひてやみに
けれとなをおほしおはしましてこの
女のたはかりにやまけんとおほして
仰給ふ汝かもちて侍るかくやひめ奉れ
かほかたちよしときこしめして御つかひ
たひしかとかひなくみえすなりにけり
かくたひ〳〵しくやはならはすへきと仰
らるゝおきなかしこまつて御返事申
やうこのひめのわらははたへて宮仕つ
かうまつるへくもあらす侍をもてわつらひ
はへりさり共おほせ給はんとそうすこれを
きこしめして仰給ふなとかおきなのおほ
したてたらん物を心にまかせさらむ
此女もし奉りたるものならはおきな
にかうふりをなとかたはせさらんおきな
よろこひて家にかへりてかくやひめに
かたらふやうかくなん御門のおほせ給へる
なをやはつかうまつりたまはぬといへはかく
やひめこたへていふもはらさやうのみやつかへ
つかうまつらしとおもふをしゐてつかう
まつらせたまはゝきえうせなんすみつ
みつかさかうふり仕てしぬはかりなり
おきないらふるやうなし給ひそかうふりも
わか子を見奉らてはなにかせんさはあり
ともなとか宮つかへをし給はさらん死給ふ
へきやうやあるへきといふなをそらことか
とつかまつらせてしなすやあると見たまへ
あまたの人の心さしをろかならさりし
をむなしくなしてしこそあれきのふ
けふみかとののたまはん事につかん人
きゝやさしといへはおきなこたへていふ天
下の事はと有ともかゝりとも御命のあ
やうきこそおほきなるさはりなれはなを
つかうまつるましき事をまいりて申さん
とてまいりて申やう仰の事のかしこさに
かのわらはをまいらせんとてつかうまつれは
宮つかへに出したておはしぬへしと申
みやつこ丸か手にうませたる子にてもあ
らすむかし山にて見付たるかゝれは心はせ
も世の人に似すはへるとそうせさす御門
おほせ給はくみやつこまろの家は山もとち
かくなり御かりみゆきしたまはんやうにて
見てんやとのたまはすみやつこまろ申
やういとよき事なりなにか心もなくて
侍らんにふとみゆきして御らんせられな
むとそうすれは御門俄に日をさためて
御かりに出給ふてかくやひめのいへに入給ふて
み給ふにひかりみちてけうらにてゐた
る人有これなんとおほしてにけて入袖
をとらへ給へはおもてをふたきて候へとは
しめよく御らんしつれはたくひなくめて
たく覚えさせたまひて