ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

竹取物語 (6)

左大臣あへのみむらしはたからゆた
かに家ひろき人にておはしける其年
きたりけるもろこし船のわうけいとい
ふ人のもとに文をかきて火ねすみの
かはといふなる物かひてをこせよとてつかう
まつる人の中に心たしかなるをえら
ひて小野のふさもりといふ人をつけて
つかわすもていたり唐こしにをるわう
けいに金をとらすわうけいふみをひろ
けてみて返事かく火ねすみのかは
ころも此國になきものなりをとにはき
けともいまたみぬ物なり世にあるもの
ならは此國にももてまうてきなまし

いとかたきあきなひなりしかれとも
もし天ちくに玉さかにもてわたりなは
若長者のあたりにとふらひもとめんに
なきものならは使にそへて金をは
返し奉らんといへりかのこしふね
きけり小野のふさもりまうてきてまう
のほるといふ事を聞てあゆみとうする馬
をもてはしらせん(む?)かへさせ給ふ時に
馬にのりてつくしよりたゝ
七日に
まうて
きたる

文を見るにいふ火ねすみのかは衣からう
して人を出してもとて奉るいまの世に
もむかしの世にも此かは衣たやすく
なきものなりけりむかしかしこき天ち
くのひしり此國にもてわたりて侍り
ける西の山寺にありときゝ及ておほや
けに申てからうしてかひ取て奉るあ
たひの金すくなしとこくし使に申
しかはわうけいの物くはへてかひたり金
五十両給るへし舟の帰らんに付てたひ
をくれもしかねたまはぬ物ならは彼衣の
しち返したへといへる事をみて何お
ほすいまかねすこしにこそあなれうれ
しくしておこせたるかなとてもろこし
のかたにむかひてふしおかみ給ふ此かは
きぬ入たるはこをみれはくさ〳〵のうる
はしきるりをいろえてつくれりかわき
ぬをみれはこかねのひかりしさゝやきたり
たからと見えうるはしき事ならひなき
ものなり火にやけぬ事よりもけうらなる

事かきりなしうへかくやひめこのもし
かり給ふにこそ有けれとのたまひてあな
かしことてはこに入給ひてものゝえたに
つけて御身のけさういといたくしてやか
てとまりなんものそとおほしてうたよみ
くはへてもちていましたりそのうたは
かきりなきおもひにやけぬかはころも
たもとかはきてけふこそはきめ
といへり家の門にもていたりてたてり竹取
出きてとり入てかくやひめにみすかくや
姫のかは衣みて云うるはしきかはなめ
りわきてまことのかはならんともしらす
竹取こたへていはくともあれかくもあれ
まつしやうし入奉らん世中に見えぬかは
きぬのさまなれはこれをとおもひ給ひね
人ないたくわひさせ給ひ奉らせ給ふそと
いひてよひすへたてまつれりかくよひすへ
て此度はかならすあはんと女の心にも思ひ
をり此おきなはかくやひめのやもめなる

をなけかしけれはよき人にあはせんと
思ひはかれとせちにいなといふ事なれは
えしひぬはことはりなりかくやひめおきな
にいはく此かは衣火にやかんにやけすは
こそまことならめとおもひて人のいふ事
にもまけめ世になき物なれはそれを
まことゝうたかひなく思はんとの給ふなを
これをやきて心みんといふおきなそれさも
いはれたりと云て大臣にかくなん申といふ
大臣こたへて云かは衣もろこしにもなか
りけるをからうしてもとめたつねえたるなり

なにのうたかひあらんさは申ともてやかせ
て見給へといへは火の中に打くへてやか
せ給ふにめら〳〵とやけぬされはこそこと物のかはなりけりといふ大臣これを見給ひ
てかほは草のはの色にて居給へりかくや姫
はあなうれしとよろこひてゐたりかのよみ
給ひける歌の返しはこに入て返す
名残なくもゆとしりせはかはころも
おもひのほかにをきてみましを
とありけるされは
かへりいましに
けり