霜月極月のふりこほりみな月のてり
はたゝくにもさはらすきたり此人々ある
ときは竹とりをよひ出してむすめを
我にたへとふしおかみ手をすりの給へはを
のかなさぬ子なれは心にもしたかえすと
なんいひて月日ををくるかゝれは此人々家
にかへりて物を思ひ祈りをしくわんを立
おもひやむへくもあらすさりともつゐに男
あはせさらむはとおもひてたのみをかけたり
あなかちに心さしをみえありくこれをみつ
けておきなかくやひめにいふやう御身はほとけ
へんけの人と申しなからこれほとおほき
さまてやしなひ奉る心さしをろかなら
すおきなの申さん事きゝ給ひてんやと
いへはかくやめ何事をかのたまはんことはう
けたまはらさらむへんけの物にて侍けん身
ともしらすやおやとこそおもひ奉れといふ
おきなうれしくもの給ふものかなといふお
きな年七十にあまりぬけふともあすとも
しらす此世の人は男は女にあふ事をす女は
おとこにあふとをすそのゝちなん門ひろく
もなり侍るいかてかさる事なくてはおはせん
かくやひめのいはくなんてうさる事かし
侍らんといへはへんけの人といふとも女の身
もち給へりおきなのあらんかきりはかうても
いませかしこの人々の年月をへてかうのみ
いましつゝのたまふ事をおもひさためて
ひとり〳〵にあひ給へやといへはかくやひめ
いはくよくもあらぬかたちをふかき心もしら
てあた心つきなはのちくやしき事も
あるへきをとおもふはかりなり世のかしこき
人なりともふかき心さしをしらてはあひ
かたしとなんおもふといふおきないはく思ひ
のことくもの給ふかなそも〳〵いかやうなるこゝ
ろさしあらん人にかあはんとおほすかはかり
心さしをろかならぬ人にこそあめれかく
やひめのいはくかはかりのふかきをかみむ
といはんいさゝかの事にをとりまさりは
しらむ五人の中にゆかしきものをみせ
給へらんに御心さしまさりたりとてつかう
まつらんとそのおはすらん人々に申給へといふよ
き事なりとうけつ日くるゝほとれいのあつ
まりぬ人々あるひはふえをふき或は歌を
うたひ或はしやうかをしあるひはうそをふ
きあふきをならしなとするにおきな出て
いはくかたしけなくきたなけなるところ
に年月をへてものし給ふ事ありかたく
かしこまると申おきなのいのちけふあすと
もしらぬをかくの給ふ君達にもよくおもひ
さためてつかうまつれと申も
ことはり
なり