ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

千早振る

先代の柳家小さんの落語『千早振る』は何度聞いても可笑しい。

柳家小さん(五代目)千早振る(ちはやふる) - YouTube

『伊勢物語』にも出てくるこの和歌は、小学校四年の国語に出てくるので、自分も小学生に暗記してもらったことがある。

落語を聞いてもらえばわかるが、この噺の中では「水くゝるとは」ではなく「水くゞるとは」といっている。「水くゝるとは」と最初に読んだのは賀茂真淵らしく、江戸中期のことである。それまでの、平安後期から江戸中期までは「水くゞるとは」と普通に読まれていた。この古典落語の原話ができたのも江戸中期とされているが、それは、この歌の読み方が大きく転換する時期に相当していることになる。

現在では多くの場合、「水をくゝる」と読まれているが、それが決定的に正しいという理由などどこにもないし、「水がくゞる」と読むのが決定的に正しいという理由もまた、どこにもないように思える。「水をくゝる」と読む場合の解釈は省略するが、「水がくゞる」と読んだ場合には、主語は「水」で明らかだが、「水がくゞる」ことがなぜ「神代もきかず」なのかよくわからないので、「くゞる」とは水が「潜る」意味ではなく「岩間をすり抜けて流れる」方の意味であり「(紅葉が落ちて) 深い赤になった水が (岩間をすり抜けて) 流れるとは」と解釈することになるのだろう。