ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (263)

1995 年京大文系の問題. そんなに難しい問題ではない.

【問】
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【解】
(1)
 7 で考える.  n \equiv 0 のときは明らか.  n \not\equiv 0 のときは,  n7 は互いに素なので, フェルマーの小定理により, n^7 \equiv n がいえる.

(2)
(1) の結果から  n =1, 2, \cdots, 6 の範囲で考えればよい. 再び法 7 で考えれば,  7^n \equiv 0 に注意して,

 \displaystyle{
\sum_{k=1}^{7}k^n \equiv 1 + 2^n + 3^n + 4^n + 5^n + 6^n
}

である.

 3^6 \equiv 1 から, 3 は法 7 のもとでの原始根であり,

3^2 \equiv 2
3^1  \equiv 3
3^4 \equiv 4
3^5 \equiv 5
3^3 \equiv 6

と表わすことができる. すると,  3^n \not\equiv 1 のとき, つまり,  n \neq 6 のとき,

\displaystyle{ 1 + 2^n + \cdots + 6^n
\\ \equiv 1 + 3^n +(3^n)^2 + \cdots + (3^n)^5
\\ \equiv \frac{1-(3^n)^6}{1-3^n}
\\ \equiv \frac{1-(3^6)^n}{1-3^n}
\\ \equiv \frac{1-1^n}{1-3^n}
\\ \equiv 0}

となる.  n = 6 のときは, 再びフェルマーの小定理から (または 3^6 \equiv 1 から),

 1 + 2^n + \cdots + 6^n
\\ \equiv 1 + 1 + \cdots + 1
\\ \equiv 6

したがって, この問におけるわたくしの好きな自然数は  6 で,  g(6) = 18 である.//


※ 記事 (250) で以下を証明しておいた. フェルマーの小定理はこれからすぐにでる.

 p が素数のとき,

  (a + b)^p \equiv a^p + b^p \pmod {p}

これから, 帰納法を使って,

  (x_1 + \cdots  +x_n)^p \equiv x_1^p  + \cdots + x_n^p \pmod {p}

を示すのは容易である.  x_i = 1 として,

 (1+ \cdots +1)^p \equiv 1^p+\cdots +1^p \pmod{p}

から, フェルマーの小定理が得られる. すなわち,

 a^p \equiv a \pmod{p}

また,  a \not \equiv 0 \pmod{p} であれば,

 a^{p-1} \equiv 1 \pmod{p}

と表わすこともできる.*1//

※ 法 p ( p は素数) のもとで p-1 乗したときに「初めて」1 \pmod{p} となる (つまり位数が p-1 となる) 整数 g を法 p のもとでの原始根という. ここでは, 原始根の性質については証明がいるような使い方はしていないし, 容易なので省略する. *2 原始根は法 7 の場合,  \phi(7-1) = \phi(6)=2*3 存在し, 3 の他に 5 がある. 原始根の存在定理の証明はガウスによって初めてなされた. 素数  p を法とする剰余系 (環) は標数 p の素体 (体の要素数が, 素数 p 個である有限体. なお有限体は可換である) だが, その体の乗法群は位数 p -1 の巡回群であり, 原始根はその巡回群 = 乗法群の生成元になっているということである.//

*1:フェルマーの小定理は  p-1 乗したときに「初めて」1 \pmod{p} になるといっているわけではないことに注意する.

*2:  g^i \equiv g^j \pmod{p} であるような 0 \leq i < j \leq p-1 が存在したとすると, 位数が  p-1 であることに矛盾することをいえばよい.

*3:\phi は, オイラーのトーシェント関数である.