年大阪教育大学の問題. 最近の記事のちょっとした練習問題. 直前の記事の最後の方につけたのは, 基本的にはカルダノの解法であるが最後は三角関数で解を表している. カルダノ解法のような有限回の純粋な代数手続きにおいて, 次方程式が有理数で既約で, すべて相異なる実数解をもつ場合は (つまり, すべて有理数でない つの相異なる実数解をもつときは), 虚数 乗根の和の形でしか解がえられないことが知られており,「還元不能の場合 *1」と呼ばれている. 「還元不能の場合」を実のべき根だけで解こうとすることは, 久しく数学者の頭を悩ませた歴史的不可能問題のひとつであり, ガロア理論により不可能であることが証明されている. 年の東北大, 年の上智大, 年の和歌山大にもこの問題と同様の出題があった. 年の信州大の問題では, つとも有理数解の場合は「還元不能の場合」とはならないことを背景にもつ問題が出題されている. この問題, 最後にオチがあるのがよい.
【問】
【解】
とすると, であるので,
である.
したがって, となり, は 次方程式 の解のひとつである.
問 の 次方程式は, 有理数係数の範囲で,
と分解する.
の判別式 は,
で, 実数解を持たない. は実数なので, である.
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次は, 年のお茶の水女子大学の問題. 直前の記事の後半で示したように, を複素数の範囲で 次式にまで分解したものから, 次方程式のカルダノの解法と同じものが得られる.
【問】
を展開せよ.
関係式 , を満たす実数の組 をすべて求めよ.
方程式 の解をすべて求めよ. 必要ならば , を利用せよ.
【解】
( の係数に素数 , が存在しないので, 因数分解はすぐにできる.)
から, ,
問 , から, ひとつの解として,
があるので, 組立除法を使って,
を解くと,
以上より, 求める解は,
,
//
*1:“Casus Irreducibilis” の訳. 実累乗根で解くことが不可能である証明は, たとえば, ファン・デル・ヴェルデン (銀林浩訳)「現代代数学 」p. 参照.