年の横浜国大の相加・相乗平均の不等式の証明についての問題だが, ここで使われている数学的帰納法の型が面白い *1. まず問 と問 によって, ( は自然数) で正しいことを示し, さらに問 で, その前の自然数でも正しいことを示すことで, 命題を証明している. 相加・相乗平均の不等式は, ピタゴラスの定理とまではいかなくても, 数多くの異なる証明が与えられている. 個人的には方べきの定理を使った証明と再配列不等式を使ったものが好きである.
【問】
「 個の任意の正の数 について,
が成り立つ」という命題を とする. 次の問に答えよ.
が正しいことを証明せよ.
が正しいとき, も正しいことを証明せよ.
が正しいとき, も正しいことを証明せよ.
【解】
により成立する.
だから, 帰納法の仮定を使うと,
となって, で成立する.
個の正の数 に対し, とすると, 仮定から,
これから,
つまり,
となって成立する.
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相加相乗平均の不等式を使った例題.
【問】
, , を を満たす正数とする. このとき,
を証明せよ.
【解】
相加相乗平均から,
等号は, のときに成り立ち, をみたす. したがって,
となる.
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【問】
は正の整数で, , を正の実数とするとき, 次の不等式を証明せよ.
【解】
等号成立は, のとき.
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【問】
, , を を満たす正数とする. このとき,
を証明せよ.
【解】
相加相乗平均不等式から,
各辺を足して,
したがって,
(等号は, で成立.)
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【問】
, , を
を満たす正数とする. このとき,
を証明せよ.
【解】
相加相乗平均不等式から,
また,
したがって,
各辺をかけて,
を得る.
(等号は, で成立.)
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*1:この型は, “Forward-Backward induction”, あるいは “Cauchy induction” と呼ばれることがある