ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (254)

難問揃いで知られる  1990 年の東大理科の問題のひとつ. 眠いし, かなり難易度高いので, まず問 (1) だけやった.  (1) も普通に解こうとするとすごいことになりそうなので, 記事 (248) の平均変化率の方法を活用して解くことを考えた.

※ 問  (2) もその後, 解いたので, この記事に追記する. 対称性を利用することをなかなか思いつかなかった.

【問】

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【解】
(1)
まず,  (\mathrm{i}) の条件を使って,

 h(x) = (x-1)(x+1)(px+q) +x

とおく. 微分すると,

 h'(x) = (x+1)(px+q)+(x-1)(px+q)
\\ \quad + p(x+1)(x-1) + 1

 x = \alpha で極大,  x= \beta で極小をとるとすると,

 h(\alpha) = 1 ,  h(\beta) = -1 から,

 (\alpha +1)(p\alpha +q) +1 = 0 \quad (\mathrm{A})
 (\beta-1)(p\beta +q) +1 = 0 \quad (\mathrm{B})

 h'(\alpha) = 0 ,  h'(\beta) = 0 と上の式を使って,

 p\alpha +q+p(\alpha+1) = 0
 p\beta +q+p(\beta -1) = 0

となり, 両式の各辺をそれぞれ足して,  p \neq 0 より,

\displaystyle{ \alpha + \beta = - \frac{q}{p}}

また, 両式の各辺をそれぞれ引いて,

 \alpha - \beta = - 1

となる.

 (\mathrm{A})-(\mathrm{B}) から,

 p\{(\alpha + \beta)(\alpha-\beta) + \alpha + \beta\}
\\ \quad+ q(\alpha-\beta) =0

なので,  q = 0 となり, これから,  \alpha = -1/2,  \beta = 1/2 で, (A) 式から,  p = 4 となる. 以上より,

 h(x) = 4x^3 -3x

(2)
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 h(x) h(-1) = -1,  h(-1/2) = 1,  h(1/2) = -1,  h(1) = 1 をとる連続な関数だから, 問の条件を満たす  f(x) は,  -1 \leq x < -1/2,  -1/2 < x < 1/2,  1/2 < x \leq 1 でそれぞれ少なくとも  1 回,  h(x) と交るが, 交点の総数は  3 を超えることはないから, 結局,  |x| \leq 1 で,  f(x) は,  h(x) とちょうど  3 回交わる. したがって,  |x| >  1 で,  f(x) は,  h(x) と交点を持つことはない.

まったく, 同様の議論を, 今度は  -h(x) について考察すると,  |x| \leq 1 で,  f(x) は,  -h(x) とちょうど  3 回交わる. したがって,  |x| >  1 で,  f(x) は,  -h(x) と交点を持つことはない.

そうすると,  |x| > 1 f(x) は,  -|h(x)| < f(x) < |h(x)| を常にみたす. つまり,  |f(x)| < |h(x)| をみたす.

※ ややこしく書くとこうなる.

中間値の定理を使うために, 実数全体で連続な  g(x) = h(x) - f(x) を定義すると,  g(-1/2) > 0,  g(1/2) <  0 である. したがって, 中間値の定理から,  h(x)= 0 となる  -1/2 < x < 1/2 が少なくともひとつ存在する.

さらに,  g(-1) <0 または  g(1) >  0 であれば, 中間値の定理から,  g(x) = 0 となる  x が,  -1 < x < -1/2,  1/2 < x < 1 にそれぞれ少なくともひとつ存在する. また,  g(-1) = 0 または  g(1) = 0 であれば, その点が交点である. なお,  g(-1) > 0,  g(1) < 0 f(x) が連続であることに矛盾する.

3 次多項式の交点の総数は  3 を超えることはないから, 結局,  |x| \leq 1 で,  f(x) は,  h(x) とちょうど  3 回交わる.

上のことから,  x < -1 で,  h(x) f(x) は交点をもたない. したがって,  g(x) = 0 とならず, 中間値の定理 (の対偶) により,  g(-1) < 0 ( g(-1) = 0 のときは,  g(-1 -0) < 0 ) と異符号にもならないので,

 g(x) = h(x) -f(x) = -|h(x)| -f(x) < 0

である.

同様に,  x > 1 では,  g(x) = 0 とならず,  g(1) > 0 ( g(1) = 0 のときは,  g(1 + 0) > 0 ) と異符号にもならないので,

 g(x) = h(x) -f(x) = |h(x)| - f(x) > 0

である.

同じ議論を  g'(x) = -h(x) - f(x) ですれば,  x < -1 では,

 g'(x) = -h(x) - f(x) = |h(x)| - f(x) > 0,

 x > 1 では,

 g'(x) = -h(x) -f(x) = -|h(x)| - f(x) < 0

である.

以上併せて,  x < -1 で,

 -|h(x)| < f(x) < |h(x)|

が成立し,  x > 1 でも,

 -|h(x)| < f(x) < |h(x)|

が成立する. つまり,  |x| > 1 で,  |f(x)| < |h(x)| がいえた.
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※ 問 (1) の別解.

まず,  (\mathrm{i}) の条件を使って,

 h(x) = (x-1)(x+1)(px+q) +x

とするところまでは同じ.  y = 1 は,  h(x) と極大値 ( x = \alpha) のところで接点を持つので,

 (x-1)(x+1)(px+q) +x-1
\\= (x-1)\{(x+1)(px+q) + 1\}
\\= (x-1)\{px^2 + (p+q)x + q+1\}
\\= 0

としたとき,

 px^2 + (p+q)x + q+1 = 0

は, 重解をもつ. したがって,

 (p+ q)^2 -4p(q+1) = 0 \quad (\mathrm{C})

なお, 解と係数の関係から,  2\alpha +1= -q であることもわかる.

同様に  y = -1 は,  h(x) と極小値 ( x = \beta) のところで接点を持つので,

 (x-1)(x+1)(px+q) +x+1
\\= (x+1)\{(x-1)(px+q) + 1\}
\\= (x+1)\{px^2 + (-p+q)x -q+1\}
\\= 0

としたとき,

 px^2 + (-p+q)x -q+1 = 0

は, 重解をもつ. したがって,

 (p+ q)^2 -4p(-q+1) = 0 \quad (\mathrm{D})

なお, 解と係数の関係から,  2\beta -1= -q であることもわかる.

 (\mathrm{C})-(\mathrm{D}) から,  q = 0,  p = 4 が出て,  h(x) = 4x^3 -3x と求まる. また,  \alpha = -1/2,  \beta = 1/2 である.
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 3 次関数のグラフの対称性を利用すると, 問 (1) は更に簡単に解ける.

まず, グラフの対称性 (いわゆる, "2:1 ルール") から, 極大, 極小の点がそれぞれ,  x = -1/2,  x = 1/2 であることがわかる.

 f(1) =  (q+s) +(p+r) = 1
 f(-1) = (q+s) -(p+r) = -1

から,

 q + s = 0
 p+r =1

 f'(x) = 3px^2 + qx+ r = 0

で, 解と係数の関係から,

 q = 0, したがって,  s = 0 となる. また,  3p = -4r なので,  r = -3,  p =4 である.
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