記事 の問題 ( 年東大) の問題を前回の二項定理を使った方法で解き直す. 前のよりはだいぶすっきりしたなあ.
念のため, 基本定理の証明を最初にしておく.
【基本定理】
標数 の素体 *1 の任意の要素 , について,
が成立する。
【証明】
左辺を二項定理で展開したときの 以外の各項は, となるが,
で, が素数であることから,
である. したがって,
体の単位元を とすれば, なので,
となる. //
【系】
上の定理で, を自然数とすると,
が成立する.
【証明】
のとき, 上の定理そのものなので成立する. で成立すると仮定すると,
となって成立する.
//
次からが, 入試問題.
【問】
を自然数とする. を とおくとき, をみたすすべての整数 について, 二項係数 は偶数であることを示せ.
以下の条件をみたす自然数 をすべて求めよ.
条件: をみたすすべての整数 について二項係数 は奇数である.
【解】
題意が成り立つことは, 法 の剰余整数を係数とする多項式を考えたとき,
であることをいうのと同じである.
のとき, 上の定理の系からこれは成立する.
※ であれば, の奇数を使って と書けるので,
だが, なので, である.
したがって, であることは, 二項係数 がすべての で偶数であるための必要十分条件であることがいえた.
パスカルの三角形を法 で作ると,
両端にしか がなく, 中間がすべて になるのは, のときに限ることを で証明した. パスカルの三角形を作る二項係数の漸化式,
から考えて, すべて が並べば, 次は両端だけが で中間はすべて になるから, 題意をみたすのは, のときである.
//
※ () は奇数であることを示せという類題もあるが, この場合だったら,
から, 法 の剰余整数を係数とする多項式を
と展開して, 各項の係数がすべて であることから, すべて奇数であることを示すこともできる.
//
*1:素数 を法にした整数の剰余類を係数とする多項式を考えれば, ここでの議論は充分できる.