ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (246)

 2013 年東大理科. 容易に設問の意図がつかめず, 誘導であるはずの  (1) の不等式をどう使うのか, あれこれ悩まされる問題となっている. まず, この問題をやる前に, 次のことを理解するとよいかもしれない (余計わからなくなるかもしれないが……).

たとえば,  7 + 8 = 15,  7 \times 8 = 56 の計算を同時にやるには次のようにやればよい.

 1007 \times 1008 = 1015056

中間に和の 15 が末尾に積の56 が出ているのが確認できると思う. これが,

 107 \times 108 = 11556

だとぎりぎり大丈夫である.

 17 \times 18 = 306

こうなると全然駄目である. 次に 111 を考えると,  111 3 の倍数で,

 111 \div 3 = 37

という素数になり, もちろん,

 36 + 37 + 38 = 111

となる. また,

 36 \times 37 \times 38 = 50616

であるが, 先程と同じようにこの 3 つの数字をかけて, その答えの中に和である  111 が現れるようにするには, (大きい数字は嫌なので, 小数を使うことにすると) たとえば,

 1.00036 \times 1.00037 \times 1.00038
\\=1.001110410650616

とすれば良いことがわかる. このとき,

 1.00111\\
< 1.001110410650616\\
< 1.00112

である.

【問】

次の命題を証明したい.

命題 P 次の条件  (a), (b) をともに満たす自然数 (1 以上の整数)  A が存在する.

 (a) A は連続する 3 つの自然数の積である.

(b) A10 進法で表したとき, 1 が連続して 99 回以上現れるところがある.

以下の問いに答えよ.

 (1)  y を自然数とする. このとき不等式

 x^3 + 3yx^2  < (x + y - 1)(x + y)(x + y + 1) 
\\ \quad < x^3 + (3y + 1)x^2

が成り立つような正の実数 x の範囲を求めよ.

(2) 命題 P を証明せよ.


【解】

(1)
 (x + y - 1)(x + y)(x + y + 1) 
\\ = (x+y)^3 - (x+y)

 (x+y)^3 -(x+y)- x^3 - 3yx^2 > 0

から,

 (3y^2 -1) x + y^3 -y >0

となるが,  y は自然数なので, この不等式は,  x > 0 に対して常に成立する.

次に,

 x^3 + (3y+1)x^2- (x+y)^3 +(x+y) > 0

から,

 x^2 + (1- 3y^2) x +y- y^3>0

となるが,

 f(x) = x^2 + (1- 3y^2) x +y- y^3

とおくと,  y は自然数なので,  f(0) < 0 となり,  f(x)= 0 は 異なる実解をもつ. また  2 次関数の軸は,  x> 0 にあるので,  x>0 f(x) >0 となるのは,

 \displaystyle{x  > \frac{3y^2 -1 + \sqrt{(3y^2 -1 )^2 - 4y +4y^3}}{2} 
\\ = \frac{3y^2 -1 + 
\sqrt{9y^4 +4y^3-6y^2-4y+1}}{2} }

のときである.


 (2)
 \displaystyle{3y = \overbrace{111 \cdots \cdots 111}^{99\text{個}}} とする. ここで右辺は,  3 で割り切れるので,  y は自然数である. また,

 \displaystyle{3y = \frac{10^{99}-1}{9}}

と表わすことができる. *1

ここで, 問  (1) で求めた  x の範囲を満たすように, 自然数  p をとって  x = 10 ^p とすると,

 10^{3p} + 3y\cdot 10^{2p}  
\\< (10^p + y - 1)(10^p + y)(10^p + y + 1) 
\\ < 10^{3p} + (3y + 1)10^{2p}

をみたす.

 \displaystyle{3y\cdot 10^{2p} = \frac{10^{99}-1}{9}\cdot 10^{2p}}

だから, さらに

 3p >  99 + 2p

つまり,

 p > 99

も条件に加えて  x = 10^p を充分大きくとることとすれば,  2 つの不等式にはさまれた自然数は,  1 を連続して  99 個含んでいることになるから, 命題  P は証明された. //

*1: R_{99} = 1 + 10 + \cdots + 10^{98} に等比数列の和の公式を当てはめればよい. なお  R_n は単位 (1) が繰り返されるという意味で, レプユニット数と呼ばれることがある.