ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (234)

 1996 年の京大理系の問題.

【問】
与えられた自然数 k に対し, 数列 \{a_n\}

 a_1 = 0,  \displaystyle{a_n = \left\lfloor \frac{a_{n-1} + k}{3}\right\rfloor}  (n \geq 2)

によって定める. ただし実数 t に対し,  \lfloor t \rfloor t を超えない最大の整数を表す.

(1) k = 8 および k = 9 のとき, 数列  \{a_n\} を求めよ.

(2) すべての自然数 n に対し, 次の 2 つの不等式

 \displaystyle{a_n \leq \frac{k - 1}{2}},  a_n \leq a_{n + 1}

が成り立つことを示せ.

(3)  a_n = a_{n + 1} ならば, n 以上のすべての整数 m に対し,  a_n = a_m であることを示し, このときの  a_n の値を求めよ.

【解】
 (1)
 k = 8 のとき:

 a_1= 0,
 \displaystyle{a_2 = \left\lfloor \frac{8}{3}\right\rfloor = 2},
 \displaystyle{a_3 = \left\lfloor \frac{10}{3}\right\rfloor = 3},
 \displaystyle{a_4 = \left\lfloor \frac{11}{3}\right\rfloor = 3}

 n \geq 3 のとき,  a_n = 3

 k = 9 のとき:

 a_1= 0,
 \displaystyle{a_2 = \left\lfloor \frac{9}{3}\right\rfloor = 3},
 \displaystyle{a_3 = \left\lfloor \frac{12}{3}\right\rfloor = 4},
 \displaystyle{a_4 = \left\lfloor \frac{13}{3}\right\rfloor = 4}

 n \geq 3 のとき,  a_n = 4

 (2)
まず,  a_n \leq a_{n+1} が成立することを数学的帰納法で示す. なお,  f(x) = \lfloor x \rfloor は, 単調増加関数である. (なぜなら,  x_2 > x_1 であれば,

 \begin{align} \lfloor x_2\rfloor &> x_2-1\\&> x_1-1 \\&\geq \lfloor x_1 \rfloor -1\end{align}

から,  \lfloor x_2\rfloor + 1 > \lfloor x_1 \rfloor となり,  \lfloor x_1\rfloor,  \lfloor x_2\rfloor は整数なので,  \lfloor x_2\rfloor \geq \lfloor x_1 \rfloor となるからである.)

 k は自然数だから,

 \displaystyle{0 < \frac{k}{3}}

で, したがって,

 \displaystyle{0 \leq \left\lfloor \frac{k}{3} \right\rfloor}

となる. つまり,  a_1 \leq a_2 が成立する.

 a_k \leq a_{k+1} と仮定すると,

\displaystyle{\frac{a_k + k}{3} \leq \frac{a_{k+1} + k}{3}}

から,

\displaystyle{ \left\lfloor\frac{a_k + k}{3} \right\rfloor  \leq  \left\lfloor \frac{a_{k+1} + k}{3} \right\rfloor}

となる. したがって,  a_{k + 1} \leq a_{k + 2} が成立する.

以上から,  a_n \leq a_{n+1} が成立する.

次に,

\displaystyle{a_n > \frac{k - 1}{2}} ( k は自然数)

となる自然数  n がある  k で存在したと仮定し, その最小のものを  n' ( > 1) とする. 先ほどの結論から,

 \displaystyle{a_{n'} \leq a_{n'+1} = \left\lfloor \frac{a_{n'} + k}{3} \right\rfloor}

であるが,

 \begin{align}
 \left\lfloor \frac{a_{n'} + k}{3} \right\rfloor \leq \frac{1}{3}(a_{n'} + k)
\end{align}

から,

 \begin{align}
a_{n'} \leq \frac{1}{3}(a_{n'} + k)
\end{align}

となり, これと仮定から,

 k-1 < 2a_{n'} \leq k

となる.  2a_{n'} は整数だから,

 2a_{n'} = k

とわかる ( k は偶数である).

ところが,

 \begin{align}
a_{n'} &= \left\lfloor
\frac{a_{n'-1} + k}{3}\right\rfloor\\
&\leq \frac{1}{3}(a_{n' -1} + k)
\end{align}

から,

 \begin{align}
\frac{k}{2} \leq \frac{1}{3}(a_{n' -1} + k)
\end{align}

で,

 \displaystyle{a_{n'-1} \geq  \frac{k}{2} > \frac{k - 1}{2}}

となり,  n' は, a_n > (k - 1)/2 となる自然数の最小値であったことに矛盾する. したがって, 任意の自然数 n に対して,  a_n \leq (k - 1)/2 となる.

 (3)
 i を自然数とし,  m = n + i とおく.

 i = 1 のとき, 問の条件から,  a_{n +1} = a_{n} が成立.

 i = j a_{n + j}  = a_n と仮定すると,

 \begin{align}
a_{n + j + 1} &= \left\lfloor \frac{a_{n+ j} + k}{3} \right\rfloor\\
&= \left\lfloor \frac{a_n + k}{3} \right\rfloor\\
&= a_{n +1} \\
&= a_{n}
\end{align}

となって,  i = j + 1 でも成立. したがって, すべての自然数  i で,  a_{n + i} = a_{n} となり, このことから, n 以上のすべての整数 m に対し,  a_{m} = a_{n} であることがいえた.

このとき  a_n = p とおくと,  a_n = a_{n+1} から,

 \displaystyle{p = \left\lfloor \frac{p + k}{3} \right\rfloor}

となるが,

 \displaystyle{ \frac{p + k} {3} - 1 <
  \left\lfloor \frac{p + k}{3} \right\rfloor \leq \frac{p + k} {3}}

から,

 \displaystyle{ \frac{p + k} {3} - 1 <
  p \leq \frac{p + k} {3}}

となって,

 k -3 < 2p \leq k

となる. また問 (2) で証明した命題から,

 \displaystyle{p \leq  \frac{k - 1}{2}}

なので,

 2p \leq  k - 1

である.  2 つの不等式の共通部分から,

 k -3 < 2p \leq k - 1

となる.  2p,  k は整数なので,  2p = k-1 または  2p = k - 2 である.

 p = a_n より,

k が偶数のとき:

 \displaystyle{a_n = \frac{k - 2}{2}}

 k が奇数のとき:

 \displaystyle{a_n = \frac{k - 1}{2}}

となる.//