ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (232)

気分を変えて, 過去の大学入試問題から.

【問】
a, m は自然数で a は定数とする. xy 平面上の点 (a, m) を頂点とし, 原点と点  (2a, 0) を通る放物線を考える. この放物線と x 軸で囲まれる領域の面積を S_m, この領域の内部および境界線上にある格子点の数を  L_m とする. このとき極限値

\displaystyle{\lim_{m \to \infty}  \frac{L_m}{S_m}}

を求めよ. ただし xy 平面上の格子点とは, その点の x 座標と y 座標がともに整数となる点のことである.

【解】
都合により, ガウス記号を  \lfloor x \rfloor のように書くことにする.

題意を満たす放物線を

 y = px(x - 2a)  (p \neq 0)

とおくと,

 m = pa(a - 2a)

から,  p = -m/a^2 となって, 放物線は,

 \displaystyle{y = - \frac{m}{a^2}x(x - 2a)}

として定まる. これから,

 \begin{align}
S_m &=  \frac{m}{6a^2}(2a)^3 \\
&= \frac{4}{3}ma
\end{align}

となる.

 x = k ( 0 \leq k \leq 2a, k は整数) 上の領域内または境界線上の格子点の数を  n_k とし,

 \displaystyle{s_k  =  - \frac{m}{a^2}k(k - 2a)}

とおけば、

 \displaystyle{n_k = \lfloor  s_k \rfloor + 1}

であり,

 \displaystyle{L_m = \sum_{k= 0}^{2a} n_k}

と表せる.

 \begin{align}
\sum_{k = 0}^{2a} s_k
&= \sum_{k = 1}^{2a} s_k \\
&= - \frac{m}{a^2} \sum_{k = 1}^{2a} k(k - 2a)
\end{align}

途中の計算は省略して,

 \displaystyle{
\sum_{k = 0}^{2a} s_k
= \frac{m}{3}\left(4a - \frac{1}{a}\right)}

となる.

 s_k < n_k \leq s_{k}+ 1

だから,

 \displaystyle{\sum_{k = 0}^{2a} s_k < L_m \leq \sum_{k = 0}^{2a} (s_{k}+ 1)}

したがって,

 \displaystyle{\frac{m}{3}\left(4a - \frac{1}{a}\right) < L_m \leq \frac{m}{3}\left(4a - \frac{1}{a}\right) \\+ 2a +1}

これから,

 \displaystyle{1 - \frac{1}{4a^2}< \frac{L_m}{S_m} \leq  1 - \frac{1}{4a^2} + \frac{3(2a+1)}{4am}}

となる.

 \displaystyle{\lim_{m \to \infty} \frac{3(2a+1)}{4am} = 0}

だから,

 \displaystyle{\lim_{m \to \infty} \frac{L_m}{S_m} = 1-\frac{1}{(2a)^2}}

となる.
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※ 自分も高校生だった頃, 考えたことがあるのを覚えているが, 極限概念が曖昧だと, 上のはさみうちの式で, 不等号についた等号のあるなしが気になるものである. 似たような例として,

 \lfloor 0.999\cdots \rfloor = 1

が正しいというのがある.
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※ 「はさみうち」などによく使われる便利な不等式を証明しておく.

実数  h > 0, 任意の自然数  n に対して

 (1 + h)^n \geq 1 + nh

[証明]
 n = 1 のときには, 明らか.
n = k のとき真であると仮定すれば,

 \begin{align}
(1 + h)^{k+1}  &= (1 + h)^k(1 + h)\\
 &\geq (1 + kh)(1 + h)\\
&= 1 + (k + 1)h + kh^2\\
&> 1 + (k + 1)h
\end{align}

よって,

 (1 + h)^{k+1}  \geq 1 + (k + 1)h
//

これを使った例として,

 a_n  = 0.99\cdots 9 (9n 個,  n は自然数)

とおく. そうすると,

 \displaystyle{1  - a_n = \frac{1}{10^n}}

である.

 \begin{align}
10 ^ n &= (1 + 9)^n  \\
&\geq 1 + 9n \\
&> n
\end{align}

つまり,

 \displaystyle{0 < \frac{1}{10^n} < \frac{1}{n}}

 \displaystyle{\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} = 0}

したがって,

 \displaystyle{\lim_{n \to \infty} (1 - a_n) = 0}
 \displaystyle{\lim_{n \to \infty} a_n = 1}

が証明された. //