ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (228)

双曲線関数  \cosh x,  \sinh x は, オイラーの公式と似ている,

 \begin{align}
e^x &= \cosh x + \sinh x\\
e^{-x} &= \cosh x - \sinh x
\end{align}

で定義された関数である.  \tanh x は,

 \displaystyle{\tanh x = \frac {\sinh x}{\cosh x}}

で定義される.

  \displaystyle{
\cosh^2 x - \sinh^2  x\\= (\cosh x + \sinh x)(\cosh x - \sinh x) \\ = e^xe^{-x} \\ = 1
}

である. これから,

  \displaystyle{
1 - \tanh ^2  x = \frac{1}{\cosh^2 x}
}

もすぐにわかる. 後は双曲線関数の加法定理,

\displaystyle { \sinh(\alpha \pm \beta) \\= \sinh \alpha \cosh \beta \pm \cosh \alpha \sinh \beta}

\displaystyle { \cosh(\alpha \pm \beta) \\= \cosh \alpha \cosh \beta \pm \sinh \alpha \sinh \beta}

で,  \cosh(\alpha + \beta) の符号が三角関数と違うことだけ覚えておけばよい. その他の公式は, 三角関数同様, すべてこれらから導ける.

微分は実際に計算すれば,

 \begin{align}
(\cosh x)' &= \sinh x \\
(\sinh x)' &= \cosh x\\
(\tanh x)' &= \frac{1}{\cosh^2 x}
\end{align}

となる, 双曲線関数が全単射となるよう,

 \sinh(x) : \mathrm{R} \rightarrow \mathrm R
 \cosh(x) : [0, \infty) \rightarrow [1,\infty)
 \tanh(x): \mathrm{R} \rightarrow(-1,1)

とすれば, 逆関数  \mathrm{arsinh }(y),  \mathrm{arcosh}(y),  \mathrm{artanh} (y) を定めることができる.

逆関数  x = \mathrm{arsinh}\ y の微分を求めておくと,  y = \sinh x として,  \cosh x > 0 に注意して,

\begin{align}
 \frac{dx}{dy}&= \frac{1}{\cosh x} \\
&= \frac{1}{\sqrt{1 + \sinh^2 x}}\\
&= \frac{1}{\sqrt{1+y^2}}
\end{align}

したがって,

 \displaystyle{ \int \frac{1}{\sqrt{1+t^2}}dt = \mathrm{arsinh}\ t + C}

となる.

 \displaystyle{y = \frac{1}{2}( e^x - e^{-x})}

から,

 (e^x)^2 - 2ye^x -1 = 0

となり,  e^x > 0 から,

 e^x = y + \sqrt{1+y^2}

となる. したがって,

  x = \mathrm{arsinh}\ y = \log \left(y +  \sqrt{1+ y^2}\right)

なので,

 \displaystyle{ \int \frac{1}{\sqrt{1+t^2}}dt = \log \left(t + \sqrt{1+t^2}\right) + C}

という, 自然に憶えてしまう積分結果となる. さらに,

 \displaystyle{
\left(t\sqrt{1+t^2} + C\right)' \\=
\sqrt{1+ t^2} + \frac{t^2}{\sqrt{1+t^2}}
\\= \sqrt{1+ t^2} + \frac{1+t^2}{\sqrt{1+t^2}}-\frac{1}{\sqrt{1+t^2}}
\\= 2\sqrt{1+t^2} -\frac{1}{\sqrt{1+t^2}}
}

から,

 \displaystyle{
\sqrt{1+t^2} \\=
\left \{\frac{1}{2} \left(t\sqrt{1+ t^2} + \mathrm{arsinh}\ t \right) + C\right \}'}

なので,

 \displaystyle{
\int \sqrt{1+t^2} dt\\=
\frac{1}{2}\left( t\sqrt{1+ t^2} + \log\left(t + \sqrt{1+t^2}\right)  \right) \\\quad+ C}

となる.

次に, 逆関数  x = \mathrm{arcosh}\ y の微分を求めておくと,  y = \cosh x の定義域において, 導関数の定義域は開区間で考えることから*1,  x >  0 のとき,  \sinh x > 0 であることに注意すると,

\begin{align}
 \frac{dx}{dy}&= \frac{1}{\sinh x} \\
&= \frac{1}{\sqrt{ \cosh^2 x -1 }}\\
&= \frac{1}{\sqrt{y^2 - 1}}
\end{align}

したがって,

 \displaystyle{ \int \frac{1}{\sqrt{t^2 - 1}}dt = \mathrm{arcosh}\ t + C}

となる.

 \displaystyle{y = \frac{1}{2}( e^x + e^{-x})}

から,

 (e^x)^2 - 2ye^x + 1 = 0

となり,  x \geq 0 から,

 e^x = y + \sqrt{y^2 -1}

となる. したがって,

  x = \mathrm{arcosh}\ y = \log \left(y +  \sqrt{y^2 - 1}\right)

なので,

 \displaystyle{ \int \frac{1}{\sqrt{t^2 - 1}}dt = \log \left(t + \sqrt{t^2 - 1}\right) + C}

( t \geq 1)

という, 結果となる.

*1:微分係数  f'(x) は, 左微分係数と右微分係数の両方の微分係数が存在して, かつ一致する場合, つまり  f'(x+ 0) = f'(x -0) の場合のみ存在する. したがって,  f (x) の定義域が 閉区間の場合,その端点で  f(x) は微分可能ではない. 一方, 閉区間  [a,b] の関数  f(x) の連続は, 端点  a,  b については,  \displaystyle{\lim_{x \to a + 0} f(x)= f(a)} (右連続),  \displaystyle{\lim_{x \to b - 0} f(x)= f(b)} (左連続) を充せばよい. 高校数学ではこういう扱いになっている.