ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (222)

最近, 長々と数  	\mathrm{I}\hspace{-.1em}\mathrm{I}\hspace{-.1em}\mathrm{I} の積分計算のやり方を教えていたのだが, せいぜい  5 つぐらい計算すれば, 高校数学範囲内で必要な積分の計算の仕方が全部説明できるような例題セットはないのかなあと感じた.

そう思っていたら, ネット動画に次の積分を紹介している人がいて, これは, その例題セットの  1 題に入れてもよいと思った. 後は,  3 角関数の次数下げや置換積分と, 無理関数, 部分積分のよい例題がいくつかあれば, それで充分な気がする.

 \begin{eqnarray}
I &=& \int_{0}^{1} \frac{1}{x^3+1} dx
\end{eqnarray}

まず,  x^3 + 1 = (x+1)(x^2 -x +1) と因数分解して, 部分分数の係数を求める.

 \begin{eqnarray}
\frac{1}{(x+1)(x^2-x+1)}
\\ = \frac{A}{x+1} + \frac{Bx + C}{x^2-x +1}
\end{eqnarray}

ここで,  A, B, C は実数である. 両辺に  x+1 をかけて  x = -1 を代入して, まず

 \displaystyle{A = \frac{1}{3}}

を得る. 次に  x = 0 を代入して,

 \displaystyle{C = \frac{2}{3}}

を得る. 最後に  x = 1 を代入して,

 \displaystyle{B= -\frac{1}{3}}

となる. したがって,

 \displaystyle{
I \\= \frac{1}{3}\int_{0}^{1} \frac{1}{x+1} dx - \frac{1}{3}\int_{0}^{1} \frac{x-2}{x^2-x+1} dx }

となる. 最初の項は,

 \begin{eqnarray}
\frac{1}{3}\int_{0}^{1} \frac{1}{x+1} dx &=& \frac{1}{3}\left[\log{(x+1)}\right]_{0}^{1} \\
&=& \frac{\log{2}}{3}
\end{eqnarray}

である. 次の項は,

 \displaystyle{- \frac{1}{3}\int_{0}^{1} \frac{x-2}{x^2-x+1} dx 
\\ = - \frac{1}{6}\int_{0}^{1} \frac{2x-4}{x^2-x+1} dx \\
= - \frac{1}{6}\int_{0}^{1} \frac{(2x-1)-3}{x^2-x+1} dx }

と変形して,

 \displaystyle{- \frac{1}{3}\int_{0}^{1} \frac{x-2}{x^2-x+1} dx \\
=- \frac{1}{6}\int_{0}^{1} \frac{(x^2-x+1)^{'}}{x^2-x+1} dx \\\quad + \frac{1}{2}\int_{0}^{1} \frac{1}{x^2-x+1} dx}

となるが, 最初の項は,

 \displaystyle{\left[\log{(x^2-x+1)}\right]_{0}^{1} = 0}

なので,

 \displaystyle{ I = \frac{\log{2}}{3} +\frac{1}{2}\int_{0}^{1} \frac{1}{x^2-x+1} dx}

となる.

 \begin{eqnarray} 
J &=& \int_{0}^{1} \frac{1}{x^2-x+1} dx \\
&=& \int_{0}^{1} \frac{1}{(x-1/2)^2 +3/4} dx \end{eqnarray}

だが,

 \displaystyle{ x - \frac{1}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2} \tan \theta}   \displaystyle{\left(-\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{\pi}{2}\right)}

とおくと,  x = 0 のとき,  \theta =   -\pi/6,  x = 1 のとき,  \theta = \pi/6 となって,  \tan \theta はこの間で単調増加である. また,

 \displaystyle{dx = \frac{\sqrt{3}}{2}\cdot\frac{1}{\cos^2{ \theta}}d\theta}

で,

 \begin{eqnarray}
\left(x-\frac{1}{2} \right)^2 + \frac{3}{4} &=& \frac{3}{4}(\tan^2{\theta}+1) \\ &=& \frac{3}{4}\cdot\frac{1}{\cos^2 \theta}
\end{eqnarray}

だから,

 \begin{eqnarray}
J &=& \frac{2\sqrt{3}}{3}\int_{-\pi/6}^{\pi/6}d\theta \\
&=& \frac{2\sqrt{3}}{9}\pi
\end{eqnarray}

となり,

 \displaystyle{I =  \frac{\log{2}}{3} + \frac{\sqrt{3}}{9}\pi}

である. //