ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (214)

フォイエルバッハの定理の反転法による証明. この証明を理解するための必要な準備は, いままでの記事で終わっている. 反転の説明は, 記事  (174) でしておいた. また, 以下の証明では, 記事  (175) でやった反転と調和点列の関係を使うので, もう一度あげておく.

 A, P, B,  Q を調和点列とし,  M AB の中点とするとき,

 MA^2 = MB^2 = MP\cdot MQ

が成立する.
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フォイエルバッハの定理は, 以下のようなものである.

三角形の九点円は, 内接円と (3 つの) 傍接円に接する.

反転法を使うと, 九点円が, 内接円と傍接円に接することが一度に証明できる.

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三角形の傍心は, 三角形のひとつの内角の 2 等分線と  2 つの外角の  2 等分線の共点なので, 上図で,  A,  I (内心),  I_1 (傍心) は同一直線上にある.

上図で緑色の円は九点円であり, 九点円は三角形の頂点  A から辺  BC (またはその延長) に下ろした垂線の足  D, 辺  BC の中点  L, 辺  AC の中点  M を通る.

直線  AB,  BC,  CA は, 内接円  I と 傍接円  I_1 の共通接線である. もう 1 本の共通内接線  EF を引くと,  A,  K2 つの円の相似の中心であり, 記事  (211) で見たように,  A, I, K,  I_1 は調和点列である.

内心  I から  BC に下ろした垂線の足を  X, 傍心  I_1 から  BC に下ろした垂線の足を  X_1 とする. 三角形の相似から,

AI: IK =  DX:XK ,  AI_1: I_1 K = DX_1:X_1K

なので,  D,  X,  K,  X_1 も調和点列をなす.

記事  (189) でみたように,  BC = a,  AC  =b,  AB = c とおき,  s = (a+b+c)/2 とすれば,

 BX = s - b,  CX_1 = s-b

なので,  BX = CX_1 である. したがって,  BC の中点  L は,  XX_1 の中点でもある. これから, 最初に確認したように,

 LX^2 = LX_1^2 = LD \cdot LK

となる.

 L を中心とし, 半径  LX = LX_1 の反転円による反転を考えると, 内接円  I は, 方べきの定理により, 自分自身に反転されることがわかる (内接円と反転円は直交). また, 同じように傍接円も方べきの定理から自分自身に反転されることがわかる (傍接円と反転円も直交). 九点円は, 円周が反転の中心  L を通るので, 直線に変換される.  LD \cdot LK = k^2 であったから, その直線は,  K を通り, 九点円の  L における接線と平行な直線である.

九点円の  L における接線  TLS において, 中点連結定理により,  ML \parallel AB だから,

 \angle TSA = \angle TLM

接弦定理から,

 \angle TLM =  \angle LDM

 M は直角三角形  CAD の斜辺の中点だから,  MD = MC なので,

 \angle LDM = \angle ACD

直線  BC と直線  EF は, 直線  AII_1 に関して線対称, 直線  AC と直線  AF も線対称であるから,

 \angle ACD = \angle EFA

以上から,

 \angle TSA = \angle EFA

であり,  TS \parallel EF であることがいえた. したがって, 直線  EKF が九点円の反形である直線である. この直線は, 円  I, 円  I_1 の双方に接するから, 九点円も, 内接円  I, 傍接円  I_1 に接する.

同様にして, 九点円は,  \angle B,  \angle C 内の傍接円に接することがいえる. //