ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (208)

せっかくの機会なので, 前の記事の松山市伊佐爾波神社へ, 明治 6 (酉) 年、当時 11 歳だった高阪金次郎が奉納した算額を計算してみることにする. 作図のために, 途中までの計算はやったので, 後はなんとかなるだろう.

解答の中で  \tan 15^\circ の値が必要になるので先に求めておく.
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上の図で, 三角形の内角の 2 等分線は、対辺を他の  2 辺の比に内分するから,

 AB = \sqrt{3}, BC=1,  AC = 2

とすれば,

 \displaystyle{BD = \frac{\sqrt{3}}{2+\sqrt{3}}}

なので,

 \begin{eqnarray}
\tan 15^\circ &=& \frac{1}{2+\sqrt{3}}\\
                       &=& 2 - \sqrt{3}
\end{eqnarray}

である.

さて, 問題は, 図のような中心角 120^\circ の扇形で, 下側の  2 番目に小さい  2 つの円の半径が与えられたとき, 上側の一番小さい  2 つの円の半径を求めよというものである.

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つまり, 円  S の半径  r_S を使って 円  N の半径  r_N を表せ, という問題である.  OA = R とおくことにする. 注意として円  W は直線  AP に接しているのであって, 円  S には接していない.

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まず,

 \displaystyle{AF= \frac{r_S}{\tan 15^\circ} =(2+\sqrt{3}) r_S}

を使って, 直角三角形  OSC で,

 \begin{align}
OS &= \frac{1}{2}R + r_S \\
OC &= \frac{1}{2}R - r_S \\
SC &= AP - AF = \frac{\sqrt{3}}{2}R-(2+\sqrt{3})r_S
\end{align}

から, ピタゴラスの定理により,

 OS^2 = OC^2+ SC^2

である. 代入して, 式を整理すると,

 \displaystyle{4(7+4\sqrt{3})r_S^2-4(5+2\sqrt{3})Rr_S+3R^2= 0}

となり, これを解くと,

 \begin{eqnarray}
r_S &=& \frac{5+2\sqrt{3}\pm2\sqrt{4+2\sqrt{3}}}{2(7+4\sqrt{3})}R\\
&=& \frac{5+2\sqrt{3}\pm2(\sqrt{3}+1)}{2(7+4\sqrt{3})}R
\end{eqnarray}

であるが, 解として適するのは,

 \begin{eqnarray} 
r_S &=& \frac{3}{2(7+4\sqrt{3})}R\\
&=& \frac{3}{2}(7 -4\sqrt{3})R
\end{eqnarray}

である.

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 E の半径  \displaystyle{r_E = \frac{1}{4}R} はすぐにわかる. 円  W の半径  r_W は,  \triangle WOE に注目して, やはりピタゴラスの定理から,

 EW^2 -BE^2 = OW^2 - BO^2

で,

 \begin{align}
EW &=r_E+r_W \\
BE &= r_E- r_W\\
OW &= R - r_W = 4r_E-r_W\\
BO &=PO + r_W = 2r_E + r_W
\end{align}

を代入, 和と差の公式を使って,

 \displaystyle{r_W = \frac{3}{4}r_E = \frac{3}{16}R}

となる. 作図で欲しかったのは,  BW の長さで,

  \begin{eqnarray}
BW^2 &=& (EW+BE)(EW-BE)\\
            &=& 4r_Er_W\\
            &=& 3r_E^2
\end{eqnarray}

から,

 \displaystyle{BW =\sqrt{3}r_E=  \frac{\sqrt{3}}{4}R}

となり, 円  W AP と接する位置は,  AP の中点である. これがわかれば, 円  W はたとえば以下のように簡単に作図できる. (作図のときの計算は円  W を描くときの予想を確認するためだけのもので, これ以上の計算はしなかった.)

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 N の半径を  r_N とする.  NG,  GE もわからないので,  NG = a,  GE = b とおく. すると  3 つ関係式がいる. 1 つ目は, \triangle  NOG から,

 \begin{align}
NO &= R -r_N = 4r_E -r_N\\
NG &=a\\
OG &= b +3r_E
\end{align}

で, ピタゴラスの定理から,

 r_N ^2 -8r_Er_N+ 7r_E^2 -6br_E-a^2-b^2 = 0

となる. 2 つ目は、 \triangle GEN から,

 (r_N+ r_E)^2 = a^2+b^2

となり, この 2 式から,

 \begin{align}
b &= r_E - \frac{5}{3}r_N\\
a &= \frac{4}{3}\sqrt{3r_Er_N - r_N^2}
\end {align}

がわかる. 最後に  \triangle DWN について,

 \begin{align}
DN &= DG -NG =  \sqrt{3}r_E-a\\
DW &= BE+EG =  \frac{1}{4}r_E+b\\
WN &= r_N+r_w=  r_N+\frac{3}{4}r_E
\end{align}

であるが,

 \displaystyle{DW =  \frac{5}{4}r_E-\frac{5}{3}r_N}

 b を消去しておいて, ピタゴラスの定理を使って, 式を整理していくと,

 16r_N^2-51r_Er_N+36r_E^2-18\sqrt{3}ar_E+9a^2\\=0

となり, これから, (計算力がないので)
まず  a^2 を消すと,

 12r_E-r_N-6\sqrt{3}a=0

となる. 続けて  a を消すと,

 8\sqrt{3(3r_Er_N -r_N^2)}=12r_E-r_N

となる. この両辺を 2 乗して整理すると,

 193r_N^2 -600r_Er_N + 144r_E^2 =0

が得られる. 後は, これを解いて, 適する方の解 (もう一つの解は,  r_N > r_E,  b < 0,  DW < 0 などとなって不適) をとると,

 \begin{eqnarray} r_N &=&
\frac{300-\sqrt{62208}}{193}r_E \\ 
&=& \frac{300-144\sqrt{3}}{193}r_E \\
&=& \frac{75-36\sqrt{3}}{193}R \end{eqnarray}

である. よって, 最初に求めた  r_S の結果,

 \displaystyle{r_S = \frac{3}{2(7+4\sqrt{3})}R}

を使って,

 \begin{eqnarray}
\frac{r_N}{r_S} &=& \frac{2(25-12\sqrt{3})(7+4\sqrt{3})}{193} \\ 
&=& \frac{62+32\sqrt{3}}{193} \end{eqnarray}

となる.//

※ 算額にある答は,

 \displaystyle{\frac{\sqrt{3072}+62}{193}}

と読めるが, 上の解答と同じである.


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