ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (201)

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 I\hspace{-.1em}I で, 与えられた交わる  2 円の交点ともう一点, (同一直線上にはない) 別の点を通る円の方程式を求める問題で, 「円束」*1 を使って解くやり方があるが, それがなぜ円の方程式になるかという大変良い質問をされて, 計算する羽目になった. これは, 初等幾何的にいえば, 与えられた 2 円の方べきの比が与えられた比に等しい点の軌跡 *2 は, 一般に与えられた  2 円と共軸 *3 な円になることを示すことと同じである (ただし, 方べきが  0 となる  2 円の交点を除く). ここで方べきといっているのは, (単なる復習であるが) 半径  R の円の中心  O と与えられた点  P について,  OP^2 - R^2 のことで, 点  P が円の内部, 周上, 外部にある場合に, それぞれ負, 零, 正の値をとるものである (なぜ, 方べきがこの定義でよいのかは, 下図をみて少し考えればわかることなので, 省略する).

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方べきを式で書けば,  P(x,y) に対して

 (x - a)^2 + (y - b)^2 - R^2

に他ならない.

それで,  2 円の方べきをそれぞれ

 (x-a_1)^2 + (y-b_1)^2  - r_1^2,
(x-a_2)^2 + (y-b_2)^2  - r_2^2

とし, それが与えられた比  m: n \neq 1:1 に等しいとして泣く泣く計算した. あっている自信はないが,

 n\{(x-a_1)^2 + (y-b_1)^2  - r_1^2\} \\=m\{(x-a_2)^2 + (y-b_2)^2  - r_2^2\}

を整理すると

 \displaystyle{\left(x- \frac{-na_1+ ma_2}{m-n}\right)^2 \\+ \left(y- \frac{-nb_1+ mb_2}{m-n}\right)^2  \\=\frac{1}{(m-n)^2}\{n^2r_1^2+ m^2r_2^2\\+mn(d^2-r_1^2 - r_2^2)\}}

となった. ただし,  d2 つの円の中心間距離で

 d = \sqrt{(a_2-a_1)^2 + (b_2-b_1)^2}

である. それで, 2 円が  2 点で交わっている場合に 2 つ前の式の右辺が常に正であることを証明する必要がある.

 \displaystyle{s = \frac{m}{m-n}}

として, 右辺を  s について整理すると

 d^2s^2 + (r_2^2 - r_1^2 -d^2)s + r_1^2

となった. 判別式をとると

 D \\
= (r_2^2-r_1^2 -d^2)^2 -4d^2r_1^2\\
= (r_2^2-r_1^2 -d^2+ 2dr_1) \times \\(r_2^2-r_1^2 -d^2- 2dr_1)\\
= (r_2-r_1+d)(r_2+r_1-d) \times \\
(r_2-r_1-d)(r_2+ r_1 + d)\\
= (r_1-r_2-d)(r_1-r_2+d) \times \\
(r_1+r_2-d)(r_1+ r_2 + d)

となる.  2 つの円の位置関係は, 三角不等式から

 |r_1 - r_2| \lt d \lt r_1 + r_2

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を満たすので,  D < 0 である. したがって右辺は常に正である*4.本当に良い質問だなあ.//

※ よく考えると, 下の図から

 d^2 = r_1^2 + r_2^2 - 2r_1r_2\cos \alpha

なので,

 \displaystyle{\left(x- \frac{-na_1+ ma_2}{m-n}\right)^2 \\+ \left(y- \frac{-nb_1+ mb_2}{m-n}\right)^2  \\=\frac{n^2r_1^2+ m^2r_2^2 -2mnr_1r_2\cos \alpha} {(m-n)^2}}

から, すぐにわかるのだった.//

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*1:「共軸円系」とか「円群」とかと呼ばれることもある

*2:ある条件  X を満足する点の軌跡とは, その条件を満たす点全部の集合のことをいう. 軌跡が図形  f であることをいうには, 次の 2 つの証明をする. 1) 条件  X に適する点は, 図形  f 上にある. 2) 図形  f 上の点は条件  X を満足する.

*3:交わる  2 円の交点を通る直線は「根軸」と呼ばれる.「根軸」は後の説明から容易に推定できるように, 同心円でない  2 円の方べきが等しい (交点を除いて方べきの比が  1:1 となる) 点の軌跡のことであり, 2 円が異なる 2 点で交わる場合には, 根軸はその交点を通る直線と一致する. くれぐれも交わらない 2 円の交点を通る直線を求めないように! 2 つの円が外にある場合の根軸を下図の赤色の線で示しておく. 根軸は方べきが等しくなる共通接線の中点を通る直線である. なお, 2 つの円に直交するすべての円が通過する 2 つの共通点 (2 つの円の中心を結ぶ線上にある) は, 「限点」と呼ばれる. f:id:noriharu-katakura:20210626100840j:plain

*4: 2 円が内接または外接している場合には,  D= 0 となり、 1 つの円が他の円の内部または外部にある場合は  D > 0 となる. したがって, 右辺が  0 になって軌跡が 1 点になる場合, または右辺が負になって軌跡が存在しない (虚円となる) 場合が存在する. 円が外接している場合に, 軌跡が  1 点になる条件は半径の比に内分する場合で, 軌跡は  2 つの円の接点である. 円が内接している場合に, 軌跡が  1 点になる条件は半径の比に外分する場合で, 軌跡は  2 つの円の接点である.