ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (197)

【問】
絵具を使って正四面体の各面に色を塗る方法について, 次の問に答えよ. ただし, 正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす. また, すべての面に同じ色を塗る方法を含める.

1) 2 色の絵具のセットから絵具を選んで色を塗る方法は何通りあるか.

2) 3 色の絵具のセットから絵具を選んで色を塗る方法は何通りあるか.

3) 4 色の絵具のセットから絵具を選んで色を塗る方法は何通りあるか.

4) 10 色の絵具のセットから絵具を選んで色を塗る方法は何通りあるか.

【解】

面倒臭い問題なのでまとめて面倒みる.

 k 色のどれかの色を一つ使って各面を塗るとする. 回転により立体を不変にする変換を, 正四面体の頂点を  1, 2, 3, 4 として, 回転による頂点の置換として表せば,

 e (恒等置換), つまりなにも回転しない場合の面の塗り方の総数は  k^4,

正四面体の重心と頂点を通る直線 ( 4 本ある) を回転軸とした回転を考えたとき, 正四面体を不変とする  120^\circ, 240^\circ の回転に相当する頂点の置換を巡回置換で書けば.

 (1)(2,3,4), (1)(2,4,3),
(2)(1,3,4), (2)(1,4,3),
(3)(1,4,2), (3)(1,2,4),
(4)(1,2,3), (4)(1,3,2)

であり, これらの変換で不変な面の塗り方の総数は,  8k^2 である.

正四面体の重心と辺の中点を通る直線 ( 3 本ある) を軸とした回転を考えたとき, 正四面体を不変とする  180^\circ の回転 (下図参照) に相当する頂点の置換を巡回置換 (互換) で書けば,

 (1,2)(3,4), (1,3)(2,4), (1,4)(3,2)

であり, これらの変換で不変な面の塗り方の総数は,  3k^2 である. (なお、正四面体の場合については, 重心と面の重心を通る直線は, 重心と頂点を通る直線に一致するので, 回転軸として別に考えなくてもよい. 一般の正多面体では、正多面体を不変にする回転で, 正多面体の重心の位置も不変なので, 回転軸は必ず正多面体の重心を通る. 回転軸が立体と交わるのはその頂点か, 辺か, 面のいずれかである. 辺の場合は辺の中点, 面の場合は面の重心でないと回転でそれらの位置が動いてしまう. したがって, 回転軸が, 立体の重心と頂点, 辺の中点, 面の重心をそれぞれ通る場合について順に考察すればよい.)

置換の総数 (正四面体群の位数) は  12 である. バーンサイドの補題より, 塗り方の総数  n(k) は,

 \displaystyle{n(k) = \frac{k^4 + 11k^2}{12} =  \frac{k^2(k^2+ 11)}{12} }

1)  n(2) = 5
2)  n(3) = 15
3)  n(4) = 36
4)  n(10) = 925
//

※ 正四面体群の位数がいくつであるかは簡単な問題である. 正四面体  ABCD の頂点  A を考えると, その行き先は  A, B, C, D 4 通りある.  A の行き先が決まってしまうと,  A に隣接する頂点  B の行き先は  3 通りしかない.  A, B が決まると, 他の頂点はみな決まってしまう. したがって正四面体群の位数は  4 \times 3 = 12 である. 同様にして, 正六面体群の位数は,  8 \times 3 = 24 , 正八面体は  6\times 4 = 24, 正 12 面体は頂点が  20 個あるので  20 \times 3= 60, 正  20 面体は頂点が  12 個あるので  12 \times 5 = 60 である.//

※ 同じ  k 色を使って面を塗る問題を正六面体でやってみる. 正六面体面体の頂点を  1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 として, 回転により立体を不変にする場合の頂点の置換を考えると,

 e (恒等置換) で不変となる面の塗り方の総数は  k^6,

正六面体の重心と頂点を通る直線 ( 4 本ある) を回転軸とした回転を考えたとき, 正六面体を不変とする  120^\circ,  240^\circ の回転に相当する頂点の置換を巡回置換で書けば,

 (1)(7)(2,4,5)(3,6,8),
 (1)(7)(2,5,4)(3,8,6),
(2)(8)(1,6,3)(4,5,7),
(2)(8)(1,3,6)(4,7,5),
(3)(5)(1,8,6)(2,4,7),
(3)(5)(1,6,8)(2,7,4),
(4)(6)(1,3,8)(2,7,5),
(4)(6)(1,8,3)(2,5,7)

であり, これらの変換で不変な面の塗り方の総数は,  8k^2 である.

正六面体の重心と辺の中点を通る直線 ( 6 本ある) を軸とした  180^\circ の回転を考えたとき, 正六面体を不変とする  180^\circ に相当する頂点の置換を巡回置換 (互換) で書けば,

 (1,7)(2,3)(4,6)(5,8),
(1,7)(2,8)(3,4)(5,6),
(1,2)(3,5)(4,6)(7,8),
(1,4)(2,8)(3,5)(6,7),
(1,7)(3,5)(4,8)(2,6),
(1,5)(2,8)(3,7)(4,6)

であり, これらの変換で不変な面の塗り方の総数は、 6k^3 である.

向かい合う面の中心を通る軸 ( 3 本ある) の周りの回転は,  90^\circ,  270^\circ

 (1,2,3,4)(5,6,7,8),
(3,7,8,4)(2,6,5,1),
(1,4,8,5)(2,3,7,6),
(1,4,3,2)(5,8,7,6),
(3,4,8,7)(2,1,5,6),
(1,5,8,4)(2,6,7,3)

 6k^3 通りと,  180^\circ

 (1,3)(2,4)(5,7)(6,8),
(3,8)(7,4)(2,5)(6,1),
(1,8)(4,5)(2,7)(3,6)

 3k^4 通りである.

バーンサイドの補題より, 塗り方の総数  n(k) は,

 \displaystyle{\begin{align}n(k) &= \frac{k^6 + 3k^4+12k^3+8k^2}{24} \\
&=  \frac{k^2(k+1)(k^3-k^2+4k+8)}{24} \end{align}}

となる.//

※ 面に番号をつけて, 面の置換で回転対称変換がすらすら書けるようになれば, しめたものである.

正四面体の場合は, まず,恒等変換は

 (1)(2)(3)(4) だから  k^4 通り(輪構造式は x_1^4, 以下括弧内は輪構造式を表わす).

重心と頂点を結ぶ軸の周りの回転について,

 (1)(2,3,4), (1)(2,4,3),
(2)(1,3,4), (2)(1,4,3),
(3)(1,2,4), (3)(1,4,2),
(4)(1,2,3), (4)(1,3,2)

だから  8k^2 通り( 8x_1x_3).

重心と辺の中点を結ぶ軸の周りの回転について,

 (1,2)(3,4), (1,3)(2,4), (1,4)(2,3)

だから  3k^2 通り( 3x_2^2).

バーンサイドの補題より, 塗り方の総数  n(k)

 \displaystyle{n(k) = \frac{k^4 + 11k^2}{12} =  \frac{k^2(k^2+ 11)}{12} }

となる (ポリアの定理で,  x_1=x_2=x_3 =k としたものに相当する).

正六面体の場合には, 恒等変換は,

 (1)(2)(3)(4)(5)(6) だから,  k^6 通り( x_1^6).

重心と頂点を通る軸の周りの回転について,

 (1,2,3)(4,5,6), (1,3,2)(4,6,5), (1,2,5)(3,6,4), (1,5,2)(3,4,6), (1,3,4)(2,6,5), (1,4,3)(2,5,6), (1,4,5)(2,3,6), (1,5,4)(2,6,3)

 8k^2 通り( 8x_3^2).

重心と辺の中点を通る軸の周りの回転について,

 (1,2)(3,5)(4,6),
(1,3)(2,4)(5,6),
(1,4)(3,5)(2,6),
(1,5)(2,4)(3,6),
(1,6)(2,3)(4,5),
(1,6)(2,5)(3,4)

 6k^3 通り( 6x_2^3).

重心と面の重心を通る軸の周りの回転について、

 (1)(6)(2,3,4,5),
(1)(6)(2,4)(3,5),
(1)(6)(2,5,4,3),
(2)(4)(1,5,6,3),
(2)(4)(1,6)(3,5),
(2)(4)(1,3,6,5),
(3)(5)(1,4,6,2),
(3)(5)(1,6)(2,4),
(3)(5)(1,2,6,4)

だから  3k^4+6k^3 通り( 3x_1^2 x_2^2+ 6x_1^2x_4).

バーンサイドの補題より, 塗り方の総数  n(k) は,

 \displaystyle{\begin{align}n(k) &= \frac{k^6 + 3k^4+12k^3+8k^2}{24} \\
&=  \frac{k^2(k+1)(k^3-k^2+4k+8)}{24} \end{align}}

となる (ポリアの定理で,  x_1=x_2=x_3 =x_4=k としたものに相当する).//

※ 類題.

【問】立方体の各面に, 隣あった面の色は異なるように, 色を塗りたい. ただし, 立方体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす.
(1) 異なる  6 色をすべて使って塗る方法は何通りあるか.
(2) 異なる  5 色をすべて使って塗る方法は何通りあるか.
【解】
(1) 異なる  6 色すべて使って不変にできるのは, 恒等変換の場合だけである. 塗り方の総数は  6! なので, バーンサイドの補題より

 \displaystyle{\frac{6!}{24} = 30} 通り.

(2) 異なる  5 色すべて使って不変にできるのは, 恒等変換の場合だけである. 隣あった面は異なる色なので, 同色は向かい合う面 ( 3 組ある) に配置する必要がある. したがって,

 \displaystyle{\frac{5 \times 3 \times 4!}{24} = 15} 通り.
//

【問】
正四面体の各面に色を塗りたい. ただし, 正四面体を回転させて一致する塗り方は同じとみなす.
(1) 異なる  4 色すべてを使って塗る方法は何通りあるか.
(2) 異なる  3 色すべてを使って塗る方法は何通りあるか. また,  3 色のうち使わない色があってもよいとすると, 塗り方は何通りあるか.

【解】
(1) 異なる  4 色すべて使って不変にできるのは, 恒等変換の場合だけである. 塗り方の総数は  4! なので, バーンサイドの補題より,

 \displaystyle{\frac{4!}{12} = 2} 通り.

(2) 異なる  3 色すべて使って不変にできるのは, 恒等変換の場合だけである. 重複する色の選択は  3 通りなので, 塗り方の総数は,

 \displaystyle{\frac{3\times 4!}{2!}=36}

通りである. バーンサイドの補題より

 \displaystyle{\frac{36}{12} = 3}

通り. 使わない色があってよい場合は, この記事の最初の問から  15 通り.//

補足: ポリアの定理にしたがって, 正四面体群の輪指標

 \displaystyle{\frac{1}{12}(x_1^4+8x_1x_3+3x_2^2)}

を使って,  3 色で塗る場合には,

 x_1 = r+g+b\\
x_2 = r^2 +g^2 + b^2\\
x_3 = r^3 +g^3+ b^3

とおいて, 以下のような数え上げの母関数となる多項式を作る.

 \displaystyle{P(r, g, b) \\
= \frac{1}{12} \{(r+g+b)^4 \\+8(r+g+b)(r^3+g^3+b^3)\\+ 3 (r^2+g^2+b^2)^2 \}}

この多項式の項  r^2gb, rg ^2b,  rgb^2 の前の係数を確認すると, それぞれ

 \displaystyle{\frac{4!}{12\times2!}=1}

なので, 異なる  3 色すべてを使って正四面体の面を塗る方法は, 計 3 通りである.//