ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (174)

ハクウンボク。
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コゴメウツギ。
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スイカズラ。
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反転 について.

ひとつの定点  O と定線  K 上の任意の点  P を結ぶ直線  OP 上に  OP \cdot OP' = r^2 ( r は正の定数) を満足するように  P' をとったとき, 点  P' の軌跡  K' を点  O を中心とする  K の反形という. また点  O について  P' と点対称である点  P'' の軌跡を逆反形と呼ぶ. このように  K から  K' を求めることを「反転」という.

まず,  K として定直線  XY をとってみる. 中心  O XY 上にあれば, 反転によって  XY 上の任意の点  P \neq O は, また  XY 上の点  P' に移るのは明らかなので, 中心  O は直線  XY に含まれない点とする.

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 O から  XY に垂線  OH を下ろし,  OH 上に  OH \cdot OH' = r^2 となるよう定点  H' をとる. XY に任意の点  P をとる. 反転した点  P' OP \cdot OP' = r^2 をみたすので, 方べきの定理の逆から  H, H', P,  P' は同一円周上にある. そうすると  \angle OP'H' = 90^\circ なので,  P' OH' を直径の両端とする定円上にある. 逆はこの円周上の任意の点  P' をとり, 直線  OP' と直線  XY の交点を  P とすれば, 同様に成立する.//

次に  K が円周で,  O がこの円周上にある場合を考える.

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 O を通る円  K の直径  OA またはその延長上に  OA \cdot OA' = r^2 となるよう定点  A' をとる.  K 円周上に任意の点  P \neq O をとる. 点  P' OP \cdot OP' = r^2 をみたすので, 方べきの定理の逆から  A, A', P,  P' は同一円周上にある. そうすると点  P' は直線  OA と 直交する直線  XY 上にある. 逆も同様である.//

次に中心  O K 円上にない場合を考える.

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 O と円  K の中心を通る直線と円  K の交点を  A,  B とする. 直線  OA 上に  OA \cdot OA' = r^2 となるよう定点  A' を,  OB \cdot OB' = r^2 となるよう定点  B' をそれぞれとる.  K 円周上に任意の点  P をとる. 点  P' OP \cdot OP' = r^2 をみたすので, 方べきの定理の逆から  A, A', P, P' および  B, B', P,  P' は同一円周上にある. そうすると  \angle OP'A' = \angle OAP かつ  \angle OP'B' = \angle OBP なので  \angle A'P'B' = 90^\circ である. したがって,  P' A'B' を直径の両端とする定円上にある. 逆も同様に証明できる.
//

下の図で  PA PB は点  P から円  O への接線である. 直角三角形  OPA は, 直角三角形  OAQ と相似なので   OP: OA = OA: OQ から  OP \cdot OQ = OA^2 で,  OA = r とすれば, 点  P と 点  Q は中心  O について反形である. これを (半径  r の) 円  O についての反転ということがある.  AB を極線といい, 点  P を極点と呼ぶこともあるが, 円の方程式が  x^2 + y^2=r^2 P の座標を  (x_1, y_1) とすれば, 極線の方程式は接線の方程式同様に  x_1x+y_1y = r^2 となることは, 高校数学で学ぶべき内容のひとつである. 実は  P 点と  Q 点の位置を入れ替えたときに  Q を通り  OQ に直交する直線も極線と呼ぶように定義を拡張すれば, 極線の方程式はやはり  x_1x+y_1y = r^2 のままであり美しい結果である.
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 P,  Q が円  C について反転の関係にあれば,  OP \cdot OQ = OR^2 なので,  \triangle ROP \triangle QOR は相似になる. したがって  \angle \alpha = \angle \beta である.
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反転の関係にある 2 P,  Q を通る任意の円  O' を考えると, 下図で  OP \cdot OQ = OR^2 なので方べきの定理の逆により, 直線  OR は円  O' の接線であり, したがって, 直線  O'R は円  O の接線である. 2 つの接線は直交する (2 つの円は直交する). 逆に円  O と直交する円  O' を与えたときに, 円  O の中心を通り円  O' 2 点で交わる直線を引けば, その二つの交点は方べきの定理により, 反転の関係になり, 円  O' は, 反転により自分自身に移ることもすぐにわかる.

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反形の場合,  OA \cdot OA' = r^2 =OB \cdot OB' なので  \triangle OAB \triangle OB'A' は相似である. したがって高さ  h h' の比もその相似比に等しい.

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円に内接する四角形  ABCD についてトレミーの定理が成立することを反転を使って示す.
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まず,

 A'B'\cdot C'D' + B'C' \cdot A'D' \\
=  A'B'\cdot C'D' + B'C' (A'C' + C'D')\\
= A'C'\cdot B'C' + (A'B' +B'C')C'D'\\
= A'C' (B'C' + C'D')\\
= A'C' \cdot B'D'

であることを確認しておく. 先程の相似の関係から,

 \begin{align}
A'B' &= \frac{h}{h_1}AB\\
B'C' &= \frac{h}{h_2}BC\\
C'D' &= \frac{h}{h_3}CD\\
A'D' &= \frac{h}{h_4}AD\\
A'C' &= \frac{h}{h_5}AC\\
B'D' &= \frac{h}{h_6}BD
\end{align}

 h_5,  h_6 の図示は省略した.

ここで,  \triangle OEF \triangle OHG は相似である. なぜなら, 四角形 BFOE と四角形  OHDG はそれぞれ同一円周上にあるので,

 \angle EFO = \angle ABO
= \angle ADO = \angle OGH

から  \angle EFO = \angle OGH であり, 同様にして

 \angle OEF = \angle OBC = \angle ODG = \angle OHG

から,  \angle OEF = \angle OHG だからである. そうすると、 h_1h_3= h_2h_4 がいえる. 同様の証明を繰り返せば  h_1h_3 = h_2h_4 = h_5h_6 がいえる (下図参照).

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以上から,

 \displaystyle{A'B'\cdot C'D' + B'C' \cdot A'D' \\
= \frac{h^2}{h_1h_3}AB\cdot CD + \frac{h^2}{h_2h_4}BC \cdot AD}
 \displaystyle{A'C' \cdot B'D' = \frac{h^2}{h_5h_6}AC\cdot BD}

であるので, トレミーの定理,

 AB\cdot CD + BC \cdot AD=AC\cdot BD

を示せた.//