前にも書いたような気がするが、高校物理の薄膜の干渉のところで、屈折率が大から小の媒質に反射では位相の変化がなく、屈折率が小から大の媒質では位相が π だけ変化するというのは、説明が難しいなあと思っていた。ところが、 R. P. Feynman の "QED: The Strange Theory of Light and Matter" を読み返していたら、その鮮やかな説明があるのに驚いた。ずっと以前に読んだときには全然気がつかなかった。
光の反射というのは媒質中の電子による光の散乱なのだから、実際にはガラスの前面と背面だけで光が散乱しているわけではない。ファインマンは簡略化のためにガラスを 6 層に分割してその各層で反射したときのダイアグラムを書いて (上の b)、その各層で反射した確率振幅の重ね合せの結果が、上の c の "final arrow" と書かれているベクトルになることを説明している。その "final arrow" を前面の反射と背面の反射の振幅の二つだけで表わすことができるというのが上の d である。確かにこの場合、前面の反射の矢印は 180 度向きを変更しないと駄目であり、これが高校物理の位相が π だけ変わるという説明に対応している。ファインマンの説明のおかげで、なんかものすごくよく分かった気になれた。