ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (113)

塾へ行く道すがらにソヨゴの木があって、いつも赤い実と葉のバランスに見惚れている。

入試が控えているので塾が忙しい。今日は普段やらない高校入試国語の「文学的文章」という奇妙な名称のもので、仕様がないので問題集の中から独断と偏見で幸田文の『木』だとか向田邦子の『父の詫び状』とかその他、堀辰雄とか芥川龍之介とか尾崎一雄とか自分が読んだことのある作品を選んできてやった。尾崎一雄の『トラの話』なんかは小学生のときに、子供向けの文学全集におさめられていたものを読んだものでとても懐かしく、最近読み直した『末っ子物語』にもほとんど同じ文章が使われていた。

自分が国語で教えられることとしては、蓮實ゼミ式の「その愛はどこに (表現として) 書かれていましたか?」スタイルで、問で聞かれている内容がたとえ心理であっても、それが問題文のどこに具体的な表現として書かれているかを見つけ出し、その具体表現に即して解答するという「魂の唯物論的擁護」にもとづくやり方だけである。概要を説明するとちゃんと該当する箇所の文章を見つけて、鉛筆で線をひっぱって解答してくれていたので、清水義範の『国語入試問題必勝法』(1987) よりはましなやり方なんではないかと思っている。

高校入試の理科もやったので、イカの胃がどこについているのか、肝臓がどこなのかもわかったし、植物の葉っぱの導管は茎からの連続性を考えて葉の表側にあることも知った。マツの雌花はどちらなのかや、マツとして書かれている花の図がクロマツであることはすぐにわかった。ゼニゴケはいうに及ばず、苔 (こけ) 自体を知らない子がいることも知った。本当に見たことがないのか、それとも名前を知らないだけなんだろうか。若い子に保守傾向があるとかよくいうが、苔を知らないのなら国歌もよく理解していないということであって、それこそ『見るレッスン』ではないが反日的ではないだろうか。あとは地震計 (上下動測定用) でなぜ、バネについている錘は地震があっても静止したままなのか聞かれて、中学生にもわかるように説明するにはどうしたらいいのか考えこんでしまった。結局自分は強制振動の応答についても、固有振動数についても、微分方程式の特解、一般解 (自由振動に相当する) として得られることを知っているだけのことにすぎず、本当の物理はよく理解していないんだなあと気付きもした。慣性抵抗 (慣性力というとまたややこしいことになるので使わないことにしている) だけの説明も充分ではないと思う。